アニメの制作では過密なスケジュールのせいで、十分な時間をさけなかったことなどが原因で、いわゆる「作画崩壊」してしまう場合もあります。実際に一定の水準を満たしていない状態で、放送されてしまった作品もあり、視聴者の間で物議を醸すこともありました。



『ドラゴンボール』ほどの大作でも「作画崩壊」が発生? 画像は「ドラゴンボール超 TVシリーズ コンプリートBOX」(東映)

【画像】え、どんどんムッキムキになってくな… こちらが『ドラゴンボール』キャラの変化です(6枚)

過去作に比べて、落ちてしまった作画クオリティーにブーイング殺到?

 アニメ作品において話題になるポイントといえば、脚本はもちろん、作画の良し悪しも挙げられるでしょう。最近では、TVアニメであっても劇場版に匹敵するほどの迫力があるバトルシーンや細部までこだわった作画がされた作品が話題にのぼります。一方で、いわゆる「作画崩壊」によって悪い意味での注目を集めてしまったアニメもありました。

『ドラゴンボール超』

 鳥山明先生の代表作のひとつであるマンガ『ドラゴンボール』のTVアニメは、同名タイトルのいわゆる「無印」から始まり、『ドラゴンボールZ』『ドラゴンボールGT』といった続編や、数々の劇場版も公開されました。『GT』の後に放送された『ドラゴンボール超』が、「作画崩壊」で話題になった作品です。

 2015年から2018年までフジテレビ系列で放送された同作は、主人公「孫悟空」が「破壊神ビルス」や、その付き人「ウイス」と出会い、そこから復活した宇宙の帝王「フリーザ」や、宇宙の強敵たちと戦う様子が描かれました。

 作画崩壊が顕著に現れていたのは、主に「破壊神ビルス編」「フリーザ復活編」辺りです。例えば、悟空が超サイヤ人になってビルスと戦った際の様子は、『Z』の時代とは比べものにならないほどカクカクした作画で、かつて強敵として登場したフリーザも長年のファンであれば、ひと目で違和感を覚えるほどのクオリティーでした。

『Z』時代から観ていた人からすると、及第点をはるかに下回る作画に感じたようで、ネット上には「自分が知っている悟空じゃない……」「バトルアクションの迫力が物足りない」など不満の声があがっていました。

 とはいうものの物語が進むにつれて作画崩壊というほどの回はなくなり、クライマックスの「宇宙サバイバル編」の放送が終わると、「ラストが神展開すぎた」といった絶賛の声が相次ぎました。

 ちなみに2024年の秋からフジテレビ系列で、完全新作アニメシリーズ『ドラゴンボールDAIMA(ダイマ)』の放送が決定しています。どのような作画の悟空たちが見られるのか、期待して待ちましょう。

『七つの大罪』

 人気作の作画崩壊といえば、第4期までのTVアニメシリーズや番外編、劇場版を展開している『七つの大罪』もよく名前が挙がる作品です。

 2012年から2020年まで「週刊少年マガジン」(講談社)にて連載されたマンガ(作:鈴木央)が原作の本作は、主人公で伝説の騎士団「七つの大罪」の一員である「メリオダス」が王女の「エリザベス」と一緒に、『七つの大罪』のメンバーを探しながら旅をするという冒険ファンタジーです。

 TVアニメの第1期は2014年から放送が始まり、そこから2018年『戒めの復活』、2019年『神々の逆鱗』、2021年『憤怒の審判』の順で、計4期まで放送されています。

 このなかで、作画崩壊と指摘されているのは、第3期にあたる『神々の逆鱗』です。第2期までの制作会社は「A-1 Pictures」でしたが、第3期からは「スタジオディーン」に変更になったため、作画のタッチが変わってしまったことが原因のひとつといわれています。

 やはり第1期、2期と3期を比較する人は多く、問題の3期に対して「エスカノールとメリオダスの戦闘シーンがひどすぎた。まるで迫力がない」「エスタロッサの描き方に絶望した」などの声があがっていました。しかし、第4期の制作もスタジオディーンだったものの、3期のように「作画崩壊」とはいわれていないことから、作画が改善されたといっていいでしょう。

 2023年には『七つの大罪』の続編である『七つの大罪 黙示録の四騎士』がTBS系列で放送され、その第2期が2024年10月から同系列での放送が予定されています。『黙示録の四騎士』の制作は第1期、第2期ともに「テレコム・アニメーションフィルム」なので、引き続きどのような作画を見せてくれるのか目が離せません。



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全12話中、1話だけが作画崩壊の例

『ウィザード・バリスターズ~弁魔士セシル』

 TVアニメ作品として全12話のうち、第11話だけが「作画崩壊」したことで物議を醸したのが『ウィザード・バリスターズ~弁魔士セシル』です。

 2014年にTOKYO MX、BS11ほかにて放送された同作は、人間と魔術使いが共存する世界が舞台で、魔術使いの被告を弁護する弁魔士の主人公「須藤セシル」を取り巻く仲間たちの物語が描かれています。

 原案、監督、キャラクターデザインは『ガリレイドンナ』などで知られる梅津泰臣氏が担当しており、アニメオリジナル作品として注目を集め、放送当初は迫力のあるバトルシーンなどが好評だったものの、終盤の11話で発生した作画崩壊に視聴者は騒然となりました。

 問題の11話では、ワンカットで同じキャラだけを映し続ける「止め絵」が多用されたほか、コマの使い回しや、ところどころでの作画の乱れなどが目立ち、明らかにこれまでのクオリティーとはレベルが違う仕上がりになっていました。

 実際に11話を視聴した人からは、「1話は最高だったけど、回を増すごとに微妙になっていき、ラスト手前の11話は本当にひどかった」「放送前から期待していただけに、悪い意味で裏切られた感が否めない。特に11話でダメ押しとなった」といった声があがっていました。

 この失敗を補うかのように、2014年5月、同作の公式サイトでは「Blu-ray&DVD第3巻から第6巻につきまして、お客様により良いクオリティーの商品をお届けするため、発売日を延期させて頂く事になりました」とコメントを発表しています。また、Blu-ray&DVD版の11話は上述した問題点が修正されたうえに、バトルシーンも迫力があるものに改善されていました。