『ゲッターロボ』の設定の中でも話題になることの多い「ゲッター線」、実はシリーズの途中から超常的な能力が語られるようになりました。そして、その「奇跡」は作品の枠を飛び越えることもあったのです。



マンガ版よりは全体にややマイルド。『ゲッターロボ VOL.1』DVD (東映ビデオ)

【マジでやってくれた】こちらがゲッター3形態への完全変形を実現したアイテムです(6枚)

ゲッター線が進化したポイントとは…

『ゲッターロボ』をはじめとする「ゲッターロボサーガ」で、重要な物語のキーとなっているのが「ゲッター線」です。しかし、現在ではおなじみとなった超常的な能力を持つという設定は、後から追加されたものでした。

 シリーズ第1作『ゲッターロボ』では、ゲッター線は「ゲッターロボ」のエネルギーとなる宇宙線の一種と設定されています。アニメ版では、人間にとっては無公害エネルギーですが、爬虫類にとっては有害な物質とされていました。

 原作マンガ版などでは過去に宇宙から地球へ降り注いだ際に、恐竜を絶滅させ、代わりに猿を人へと進化させたとされています。こういった因縁から第1作『ゲッターロボ』では、「恐竜帝国」がふたたび大地に君臨するために、ゲッターロボが最大の障害でした。

 そのため当初の設定だけでは、簡単にいうと「トカゲ退化サル進化光線」といったものだと、筆者の知人がいったことがあります。つまり、それ以上でも以下でもない架空のエネルギーでしかありません。ところがゲッターロボサーガが形成されるに至って、ゲッター線は飛躍的な進化を遂げました。

 それは原作者である石川賢先生自らが描いた『ゲッターロボ號』の中盤以降のことです。前半でアニメ版の敵役だった「プロフェッサー・ランドウ」を倒し、その背後にいた恐竜帝国との戦いが始まった時のことでした。

 この恐竜帝国との戦いで必要となったのが、廃墟となった早乙女研究所にある「本当のゲッターロボ」、後に「真ゲッターロボ」と名付けられたゲッターロボです。この真ゲッターの登場により、ゲッター線の設定が大きく変わりました。

 それが「生命体の進化を促す、神のような『意思を持つ』エネルギー」という設定です。作中では、人間や機械に至るまでが融合し、死んだ生命すら使役するかのような動きを見せました。「意思を持つ」といいましたが、正確な目的は不明で、その意図も理解できない存在だといえるでしょう。

 つまり「よくわからないけど意志を持ったスゴいエネルギー」とでもいえるかもしれません。おそらく正確に把握して、明確な答えを出せる人はいないでしょう。

 それゆえにこれ以降のゲッターロボサーガでは、ゲッター線を中心に物語が進んでいくことになります。もっとも原作者である石川先生が鬼籍に入られたことで、作品としては完結しているものの、ゲッター線が何であるのかは永遠の謎となりました。

 そしてゲッター線はゲッターロボサーガから飛び出して、さまざまな作品に影響を与える存在となります。もっともその影響を与えられた世界が、ゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズでした。



原作のマンガ版はシリーズを重ねどんどんスゴいことに。『オリジナル版 ゲッターロボ 1』 原作:永井豪、石川賢/作画:石川賢 (小学館)

(広告の後にも続きます)

ゲッター線が起こした奇跡の数々とは

「スパロボ」では原典以上に活躍していたゲッター線、それはなぜでしょうか。

 ゲッター線が最初にスパロボでクローズアップされたのが、『第4次スーパーロボット大戦』です。この時、初めて真ゲッターロボが登場しました。その際に原作マンガ版では登場しなかった真ゲッター2の下半身と、真ゲッター3を、石川先生が新たにデザインしています。

 この時の真ゲッターロボの設定は、最初のゲッターロボが高出力のゲッター線を浴びることで変異した姿とされていました。つまり、偶然に生まれたゲッターロボというわけです。そしてゲッター線も計り知れない力を持つものの、普通のエネルギーとして扱われていました。

 ゲッター線を浴びてパワーアップするという展開はまだあります。『第4次』の移植作となる『スーパーロボット大戦F完結編』では、「マジンガーZ」がこれを浴び、「マジンカイザー」へと強化されました。マジンカイザーはこの『F完結編』で初めて世に出たロボットで、このゲームのために原作者である永井豪先生がデザインしています。

 もともと原作者が同じということで、マジンガーとゲッターは近しい存在でした。それゆえにマジンガーへのゲッター線の流用は、それほど違和感がありません。また、この2機の登場が、後にマジンガーとゲッターの新作コンテンツが作られるきっかけとなりました。

 もちろん、まったく違う作品に影響を与えたこともあります。そのなかでもファンには有名なのが、『スーパーロボット大戦R』での超展開でしょうか。ここでゲッター線の影響を受けるのが、『機動武闘伝Gガンダム』に登場する「東方不敗マスター・アジア」です。

 本作においてマスター・アジアは、一度死んで、「DG細胞」により強制的に復活させられた状態で登場しました。そのDG細胞を復活させた原因がゲッター線だったことから、ゲッター線が意志を持ってマスター・アジア復活に協力するという流れです。このことから、マスター・アジアを「ゲッター線に詫びを入れさせた男」と評する人もいます。

 筆者的に一番印象的だったのが、『スーパーロボット大戦DD』での『デビルマン』関係のイベントでしょうか。この時に再現されたのが、原作マンガでも最大級のトラウマといわれるデーモン族「ジンメン」のイベントでした。

 ジンメンは人間を食し、食べた人間の顔が甲羅に浮かぶという能力を持っています。しかも、この顔は生前と同じように意識があり、これを人質のように使う戦い方を得意としていました。この能力を使い「デビルマン/不動明」を慕う少女「サッちゃん」を取り込むという悪逆非道なことをしています。

 原典のマンガでは、自分はもう死んでいるというサッちゃんの訴えに応じ、取り込まれた人間ごとジンメンを倒すというストーリーでした。この悲劇をスパロボで回避したわけです。そして、これを可能とした要素のひとつがゲッター線でした。

 この、知る人にとってはトラウマ級の悲劇を回避したことについて、「スパロボ史上、最大の補正」とまでいうファンもいます。筆者も同様でした。何しろジンメンの登場が決まった時点で、多くの人がプレイすることを躊躇したほどだったからです。しかし予想外のハッピーエンドに、「ゲッター線はスゴい」となったといいます。

 ゲッターロボサーガにとどまらず、他の世界にまで影響を及ぼすゲッター線、今年で登場から半世紀を迎えましたが、その偉業はこれからも見ることになるかもしれません。