バルタン星人、ジャミラ、メフィラス星人、ゼットン……。『ウルトラマン』が誇る数多くの人気怪獣は、本編での活躍を観たことがない世代にも広く認知されています。では、第1話に登場したベムラーは?



劇中では「宇宙の平和を乱す悪魔のような怪獣」と語られるベムラー(著者撮影)

【画像】怖い?それとも可愛い? こちらが凶悪さと愛嬌を兼ね備えた怪獣「ベムラー」です(5枚)

栄えある第1号怪獣……のはずが?

 宇宙忍者バルタン星人、どくろ怪獣レッドキング、棲星怪獣ジャミラ、古代怪獣ゴモラ、三面怪人ダダ、悪質宇宙人メフィラス星人、宇宙恐竜ゼットン……。1966年に放映された『ウルトラマン』には、数多くの人気怪獣が登場します。彼らはバラエティ番組やCMなどにも頻繁に姿を見せており、本編での活躍を観たことがない世代にも広く認知されているのではないでしょうか。

 しかし、筆者を含めた怪獣ファンにとっては忘れじの君であり、押しも押されもせぬシリーズの大立役者であるにもかかわらず、一般的な知名度はいまひとつ……という怪獣も少なからず存在します。「宇宙怪獣ベムラー」は、その代表格といえるかもしれません。

 ベムラーは、『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第一号」に登場する怪獣です。つまり初代ウルトラマンが、劇中で最初に戦った怪獣ということになります。もちろん、初代マンは歴戦の勇士なので、地球に来る前からさまざまな怪獣を倒しているはずですが、とにもかくにも宇宙の墓場に護送中だったベムラーが、地球まで逃げてきたことがすべての始まりでした。

 ベムラーを追ってきたM78星雲の名もなき宇宙人は、科学特捜隊のハヤタ隊員を誤って死に至らしめてしまい、その責任を取るべく「ウルトラマン」として地球に留まることを決意します。つまり、そもそもベムラーがいなければ、ウルトラマンという稀代のヒーローは誕生しなかったわけですね。「ウルトラマンシリーズ」の歴史全体から見ても、極めて重要なキャラクターといえるでしょう。

 ただ、これまであまり顧みられる機会に恵まれなかった怪獣であることも事実です。最初に挙げた怪獣は、いずれもそれほど間を置くことなく再登場を果たしているのですが、ベムラーにはなかなかそのチャンスがやってきませんでした。

 特に決定的だったのが、『ウルトラマン』の実質的リメイクである『ウルトラマンパワード』です。このとき、上記のもの以外にも多数の「初マン怪獣」が新たな姿を与えられて復活したにもかかわらず、ベムラーは選から漏れてしまいます。パワードが戦った最初の相手は、バルタン星人でした。

 ちなみに『ウルトラマンティガ』のヤナカーギー、『ULTRAMAN』のビースト・ザ・ワンは、どちらもベムラーをモチーフにした怪獣として知られていますが、もう少しこういったリスペクト怪獣が多くてもいい気はします。『仮面ライダー』の1話怪人だった蜘蛛男なんて、ことあるごとにスポットが当てられており、特に原点回帰を謳(うた)うようなタイトルでは、必ずといっていいほど蜘蛛モチーフの怪人が、最初期の敵として採用されているくらいですから。



『Ultraman X the Avengers』 第1巻(Marvel)

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ベムラー再評価の兆し! ここから巻き返しなるか?

 では、ベムラーそのものに魅力がないのかといえば、決してそんなことはありません。デザイナーの成田亨さんは「典型的な二本足怪獣を作ろう」と考えたと語っていますが、獅子をモチーフにしたという凶悪さと愛嬌を兼ね備えた面構えは、従来の怪獣にはなかった個性的なものでした。

 さらにティラノサウルスのごとき小さな前肢も、怪獣の中には人間が入ってると分かっていればこそ目を引く特徴です。黒を貴重としたカラーリングや背中を覆う無数のトゲなど、子供好きする要素も盛り込まれており、スター怪獣になる素質は充分に備えていたはずです。

 しかし、いかんせん同期のライバルが強過ぎました。ベムラーとレッドキング、どちらを新作に出すかということになれば、やはりレッドキングになってしまうのではないでしょうか。これがバルタン星人やゼットンでも同様です。

 また、1話怪獣といえば番組を象徴するキャラクターでもあるので、逆に他のシリーズには登場させづらかったという事情もあったかもしれません。いずれにせよ本格的なベムラーの復活は、2009年公開の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』まで待たなくてはならなかったのです。

 もっとも一度でも復活すればしめたもの。近年の「ウルトラマンシリーズ」では、予算との兼ね合いもあって、新怪獣(≒新規造形の着ぐるみ)は減少傾向にあり――ここ2年ほどは「新怪獣ぞくぞく登場路線」に舵を戻しているのですが――既存の着ぐるみを再利用することができる旧作怪獣の登板が増えてきています。

 当然、ベムラーも度々お呼びがかかることに。さすがに1体で1話丸々を背負うような大役は稀で、他の怪獣と一緒に暴れたり、ほんのチョイ役だったりすることのほうが多いのですが、『ウルトラマンオーブ』では大きなツノを備えた強化形態まで登場しており、新世代の特撮ファンや怪獣キッズたちにその存在感をアピールしていました。

 また、こちらも冒頭のチョイ役とはいえ、先日配信開始された日米合作アニメ『Ultraman: Rising』に登場! さらにこの夏発売のコミック『ULTRAMAN X THE AVENGERS』のバリアントカバーまで飾っており、ベムラーってば最近、ちょっとキテるのかもしれません。