海軍の最強戦力である三大将の一角から海賊へと転身を果たした「クザン」は、これまでとはまったく逆の生き方をして、単に無法の限りを尽くしたいというわけではなさそうです。クザンはいったい何を考えているのでしょうか。
サングラス姿のクザンを立体化した「Portrait.Of.Pirates ワンピース”EDITION-Z” 青雉 クザン」(メガハウス) (C)尾田栄一郎/2012「ワンピース」製作委員会
【画像】想像以上にいかつい! こちらがアイマスク姿のクザンです(3枚)
クザンは海軍を裏切ったのか?
海軍大将から海賊へと身を投じた「青キジ」こと「クザン」は、現在、よりもよって「黒ひげ海賊団」に籍を置いています。彼は、いったい何を考えているのでしょうか?
海軍への失望
クザンが海軍を辞めた、その直接的な理由は元帥の座をかけた「赤犬」こと「サカズキ」との決闘に敗北したことが原因です。しかしそれは最後のひと押しに過ぎなかったのでしょう。本当は海軍の正義に失望したためだと思われます。もともとクザンは盲目的に命令に従うタイプの人物ではありませんでした。
例えばバスターコールで壊滅させられた国「オハラ」では、巨人の海兵「ラウロ」を凍らせたものの、幼いロビンは見逃がしました。また「ロングリングロングランド島」でも「ルフィ」らにとどめを刺さなかったことから、明らかにクザンは海軍の正義とは異なる「自分の正義」を持つ人物だといえるでしょう。
クザンのトレードマークはアイマスクです。「だらけきった正義」を掲げる彼にとって快適に眠るため光を遮るアイマスクはよく似合っています。しかし本当にアイマスクはクザンの「怠惰さのアイコン」としての意味しかないのでしょうか。
「エッグヘッド編」で弟子の「戦桃丸」を倒し、ベガパンクを手に掛けた「黄猿」こと「ボルサリーノ」はサングラスをかけていますし、「藤虎」こと「イッショウ」は「見たくねぇもん」を散々見てきたことで絶望し、自ら盲目になったようです。視線を隠しているという特徴は、本心を隠したり、見たくないものから目をそらす行為のメタファー(比喩)として機能していることは明らかです。
ボルサリーノ、イッショウ、クザンは海軍のあり方に疑問を持ちながらも、なんとか現実と折り合いを付けようともがいている者同士なのです。サカズキが睨みつけるような強い視線で矛盾だらけの世界を制圧しようとしているのとは対照的です。
海軍を辞めた後のクザンはアイマスクではなく、サングラスを身に着けるようになりました。だらけきって見ないふりをするアイマスクから、積極的に内面を隠すサングラスへの変化はそのままクザンの心境が反映されているようです。つまりクザンの行為や発言にはすべて「裏」があり、本心を明かしていないと考えるのが妥当です。
またクザンが「ティーチ」の仲間になったのはティーチの「正義」に同意したのではなく、「利害の一致」によるものです。それが世界政府の転覆なのか、「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」の獲得なのかはまだ明かされていません。
しかし「利害が一致している」うちはクザンがティーチを裏切ることはないでしょう。そしてティーチもまた「俺達は何も仲良し軍団じゃねえ」と言っているようにクザンを信用しているわけではありません。黒ひげ海賊団にはお互いの裏切り行為を前提とした、独特の緊張関係があるようです。
クザンの本心は?
クザンの最終目的は不明です。しかし彼が人情家だという点は明白です。ハチノスに乗り込んできた「ガープ」が「シリュウ」に刺されて負傷した際も、30億ベリーの懸賞金目当てに群がる海賊たちを「どけ雑魚ども!! 両手両足縛ってもお前らじゃガープさんの命は取れねぇよ!!」を蹴散らして、自らガープと戦って凍結しています。凍結されたサウロやルフィが生存していたことから、ガープが生存している可能性は高いでしょう。
嫌々ながらもボルサリーノはエッグヘッドで「身内」を倒す命令に従い、映画『ONE PIECE Film Z』では恩師のゼファーを手に掛けています。しかしクザンはその一線を超えられない人物なのです。おそらくイッショウもクザンと一緒でしょう。
クザンが海賊になったのは、ティーチの海賊行為を内側からコントロールするためなのかもしれません。それどころか内部情報を革命軍に流している可能性もあります。サングラスに隠されたクザンの目的が明らかになるのは、きっと最終局面でしょう。