画像はAIで生成したイメージ

かつては芸能界における悪しき慣習とされていた「枕営業」。韓国芸能界では「性上納」などと呼ぶらしいが、見返りと引き換えに身体を差し出すという点に変わりはない。

世間一般のイメージとしては、野心家の女性タレントが大物プロデューサーと一夜を共にして仕事をもらうとか、事務所から生贄として差し出されるようなイメージだが、これが一般社会でも行われているのをご存じだろうか?

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「会社や業種がバレてしまうので詳しいことは言えませんが…」と前置きをした上で重い口を開いたのは、関東の某地方都市で働く野上結衣さん(仮名・26歳)。話は、2年ほど前に結衣さんが社運をかけた一大プロジェクトのメンバーに突然抜擢されたことから始まる。

「プロジェクトの目的はA社という海外企業との業務提携でした。確かに私は英語が話せますが、専門用語に関しては不勉強なことが多いですし、周りには私以上に流暢に英語をあやつる先輩がたくさんいるのに何で私なの? と不思議で仕方なかったのです」

不思議なことは他にもあった。

メンバーと言いながら、結衣さんはプロジェクトの詳しい内容を知らされず、会議に呼ばれることもなかった。

「そのため、結局私は何だったの? って毎日思ってました(笑)」

ある日、そんな結衣さんに業務命令が言い渡される。それは「A社のCEO(最高経営責任者)が来日するので、アテンドをするように」というものだった。

「簡単に言えば、東京を案内しろと言うことです。私は大学が東京でしたので観光地の案内くらいはできますし、会話も不自由ないでしょうけど、そんな大物をアテンドして何か失礼があったらどうするの? って思いましたね。あと『和服を着ろ』というのにも抵抗がありました。コンパニオン扱いかよって…」

不安も不満もあったが、業務命令とあれば仕方がない。

「このプロジェクトが成功するかどうかはキミの肩にかかっているからな。くれぐれもよろしく頼んだよ!」

やたらとプレッシャーをかけてくる社長に送り出されて、結衣さんはCEOとの東京巡りに出発したという。

「CEOのリクエストで浅草とか原宿とか秋葉原に行きました。私たちの業務とはまったく関係のない場所でしたが、CEOは無邪気に喜んでましたね」

日が暮れて、夕飯時になった。

社長からは「夕飯はCEOが用意してくれてるそうだから、指示に従うように」と聞いていたため、「では行きましょうか」と促されて車に乗ると、向かった先はCEOが宿泊している高級ホテルだった。

「犯罪ではないよ。これは取引だ」

「周りを気にせずにゆっくり食事がしたいから、ルームサービスを頼んだ」と言われ、高層ビル街の夜景を眺めながらCEOと二人きりで食事をした結衣さん。

「1日一緒にいて、だいぶ打ち解けた感じになっていたので食事自体は楽しかったのですが、デザートが終わって珈琲を飲んでいたら突然、彼が『お楽しみはこれからだ』と言って私を抱き締めて来たんです」

必死に抵抗した結衣さんだったが、大柄で格闘技の経験もあるというCEOの力にはかなわない。

「CEOは私をベッドに押し倒すと、荒々しい手つきで着物を開いて、のしかかってきました」

「やめてください! これは犯罪ですよ!」

結衣さんがそう叫ぶとCEOは「犯罪ではないよ。これはビジネスだ。取引なんだよ」と平然と答えたという。

「そういうことか、と思いました。今日1日で彼が黒髪のロングヘア、黒い瞳、小柄、色白という、いわゆるヤマトナデシコが好みだということが分かっていましたので、私は“枕営業要員”だったんだなって…」

すべてを察したところで、こうなってはあとの祭り…。コトが終わり、すっかり満足したCEOはバスルームへと消えて行ったそうだ。

「『素晴らしかった』とか『キミの愛社精神には敬意を表する』みたいなことを言われました。着崩れした和服は一度すべて脱いで着付けをし直さないとならないのですが、私くらいの年代で自分で着付けができる人は滅多にいません。ただ、私は学生時代に着付けを習っていて、特技として入社の際の履歴書にも書いたことを思い出しました。『それもすべて計算済みか…』と思ったら、あまりの用意周到さに呆れてモノが言えませんでしたね」

翌々日、出社した結衣さんは社長に「完璧に任務を遂行してくれて感謝している」と労われ、臨時ボーナスとして100万円が口座に振り込まれた。

「大金ですが、私の身体だけでなく尊厳まで踏みにじられたことを思えば、いくらもらっても足りないくらいです」

その後、プロジェクトが大詰めになり、A社との正式契約が交わされる直前に結衣さんは会社を辞めたという。

「実はCEOからメールがあり『今後もキミが私をアテンドしてくれることが契約の条件に含まれている』と言われたからです。私への好意とユーモアを含んだ言い方でしたが、私にその意思はありませんし、プロジェクトがどうなろうと知ったことではないので…」

結衣さんが退職して間もなく1年になろうとしているが、結衣さんの会社がA社と業務提携をしたという話はいまだに聞こえてこないそうだ。

取材・文/清水芽々