「良かったよね」中村俊輔が福森晃斗のニアを狙った直接FKに感慨。GKに止められたが...「ファーに行って入るより、価値のある外し方」

 福森晃斗の左足が炸裂…とは惜しくもならなかった。

 8月24日に行なわれたJ2第28節で、横浜FCは徳島ヴォルティスとホームで対戦。ユーリ・ララとジョアン・パウロの得点で2-0の勝利を収めた。

 終了間際にはペナルティアーク右でFKを得る。ゴールまで17メートルほどか。3点目の絶好のチャンスで、キッカーの福森はニアのゴール右上を狙う。だが、目の前の壁を越えて枠を捉えたボールは、相手GKに両手で弾かれた。

 決めることはできなかったが、可能性を感じさせたFKについて試合翌日に中村俊輔コーチに訊けば、自身も現役時代に何度も直接FKを沈めた名手は「ファーに蹴るかなと思った」という。

「(福森のFKは)横回転が強いから、(近い距離で)ふわっと蹴るのは苦手というわけじゃないけど、でも普段からちょっとずつ練習もしていて。昨日のシーンでは、ちょっとこすりあげて上に、と。そのイメージはすごく良かったと思う」

 至近距離のFKは、ゴールに近いとはいえ、俊輔でさえも「難しい」と話す。壁を越えて枠に。スピードとボールの回転の絶妙なバランスが求められる。

「落とすためにこするってことは、強くスイングする。そうすると超えていっちゃう。でも弱めに蹴ったら落とせない。ふわっとなる。あれだけ近いと、その間が難しい」
【動画】至近距離のFK、福森晃斗はニアを狙う
 その難易度の高いFKに福森がチャレンジしたことを、俊輔も喜ぶ。

「ファーに蹴らないで、ニアで挑戦してくれた。しかも枠にいった。入らなかったけど、フクの経験値としても大事だと思う。良かったよね。あれが基準になって、キーパーに両手で弾かれたってことは、もうちょっと早いボールで、しかも落とさなきゃいけないスイングに工夫しないといけないけど、また練習すればいいし」

 自分の価値観や考えを押しつけるようなことはしないが、日々の練習などで様々なことを選手に助言する俊輔は、この徳島戦のFKの場面で福森に何かを指示したわけではない。だからこそ、思うところがあったのだろう。

「ニアに蹴って、挑戦してくれた。そうやって苦手なことをやって、次に活かそうというか、トライしてくれたのが良かった。反省できるし、感覚も映像も残る。いくら練習でやってもなかなか、ね。本番の雰囲気と違うから」

 今回はネットを揺らせなかった。だが、俊輔はむしろ評価する。「あれがファーに行って入るより、価値のある外し方」と言い切った。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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