浦和レッズは8月27日、ペア・マティアス・ヘグモ監督の契約を解除し、昨シーズン率いたポーランド人のマチェイ・スコルジャ氏を再び迎えることをリリースした。今週末に国立で行なわれる町田戦は、池田伸康コーチが暫定監督として指揮を取る。
開幕戦から半年以上、ヘグモ監督のチームを取材してきた筆者の率直な感想を言わせてもらうなら、この時期の解任は驚きだが、来シーズンの指揮を任せるかどうかの基準で言えば、この判断は妥当とも言える。なぜならば、現在の浦和がヘグモ監督の目ざすスタイルから、少しかけ離れたチームになっていたからだ。
ここまでの成績はともかく、ハーフタイムで中止になった川崎戦(28節)の前半を見ても、勝点3を狙えるサッカーになってきたことは明らかだった。2ボランチをベースにした守備、相手のプレスを外しながら、中盤から前の流動性を活かした攻撃。悪天候により、後半を観られなかったことが残念に思えたほどだ。
ただ、冷静に分析すると、沖縄キャンプからヘグモ監督が構築しようとしていたスタイルとは、似ても似つかぬものになっていたことも事実だ。
左右にウイングを置く4-3-3をベースに、各ポジションの立ち位置を明確にしながら「ドミネートする」という言葉通り、高い位置で攻守に相手を押し込んでいくというのが、ヘグモ監督の理想とするサッカーだ。
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もちろん、対戦相手を見ながら多少、ポジションの流動性や可変することはヘグモ監督も許容していたはず。しかし、Jリーグで結果を安定させるために4-2-3-1に変更し、ウイングにもサイドハーフ的なタスクを求めるようになるなど、軌道修正を重ねてきた結果が現在の姿だ。
堀之内聖スポーツダイレクターは「総評としては、やはり始動時に描いた成長曲線に対し、現時点でのチームの完成度は後れを取っていると言わざるを得ません」とコメントしているが、ヘグモ監督が当初から目ざしていたチームから、ここまで変わってしまうと、成長曲線を描きにくいのは確かだ。
ただ、そもそもリカルド・ロドリゲス、スコルジャと引き継いできたサッカーから、ヘグモ監督の思い描くスタイルに大きな違いがあった時点で、招聘したフロントにも責任はあるだろう。
そうした状況で、おそらく代表ウィーク明けからスコルジャ監督が率いることになるが、大きな混乱にはならないと想定できる。4-2-3-1をそのまま引き継ぐことができるうえに、サイドハーフやボランチに求める戦術的な役割も、昨年に近づいているためだ。
戦力を見ると、夏の移籍で酒井宏樹、アレクサンダー・ショルツ、岩尾憲、伊藤敦樹など、昨年の中心的な選手はいなくなったが、代わる戦力はそれなりに揃っている。
昨シーズンの浦和は、ベストイレブンに輝いたGK西川周作、ショルツ、マリウス・ホイブラーテンを中心に、リーグ最少失点のディフェンスを強みとしていたが、逆に得点面は“理不尽”とも言われたFWホセ・カンテのやや遠目からの決定力や、偶発性のあるゴールに頼っていた向きがあるのも確かだ。
そうした傾向から、スコルジャ監督イコール守備的というイメージが強いが、5月に行なわれたACLファイナルで、巨大戦力のアル・ヒラルに勝って、アジアのタイトルを獲ることから逆算したチーム作りでもあった。
浦和の前に率いていた母国のレフ・ポズナンでは“8番タイプ”と呼ばれる攻撃的なボランチを2枚並べて、二列目が積極的にゴールを目ざすサッカーでリーグ優勝を果たしている。コーチングスタッフは現時点で明かされていないが、町田戦で暫定監督を務める池田コーチや分析担当の林舞輝コーチはそのまま残ると見られるだけに、ビルドアップの基本設計やセットプレーなど、構築に多少時間を要する部分はそのまま踏襲されることが予想できる。
残りシーズンで目立った変化があるとすれば、それは選手起用だ。ヘグモ監督のもとである程度、主力選手が固まってきている。そこで主な基準となっていたのが、攻守の1対1の強さとフィジカル的な強度だ。来年のクラブワールドカップを見越して、負荷の高いトレーニングを継続してきたが、前半戦は多い時で10人前後の怪我人が出て、指揮官を悩ませた。
しかしながら、ここのところは長期離脱の選手がおらず、別メニューの選手もほぼいない状態だった。そうしたなかで、ヘグモ監督がチョイスしていたファーストセットから、どう変わってくるのか。
酒井、ショルツ、岩尾といった選手はいないが、スコルジャ監督が戦術的なキーマンとして重宝していたMF小泉佳穂などが、改めて主力候補に乗ってくると見られる。ただ、今年の開幕前や夏の移籍で加入した選手でも、ヘグモ監督とは違った目で、適正ポジションが見極められるはず。
後半からの再開が見込まれる川崎戦を含め、残り12試合という、このタイミングで監督を代えるべきかどうかは賛否両論あるはずだが、この期間にチームを再構築しながら、残すべき戦力と補強が必要なポジションを見極めることができるメリットは大きい。来年の大目標はクラブワールドカップになるが、ここからの終盤戦を含めて実質3年目を考えるならば、リーグ優勝に絡んでいけるチームを作っていくことが期待される。
ただし、浦和というクラブである限り、残り12試合も勝利を目ざすことに変わりはない。帰ってきたスコルジャ監督のもとで、チーム作りや選手起用にも注目しながら、試合の結果に対しては変わらずシビアに見ていきたい。
取材・文●河治良幸
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