イングランド2部はなぜ日本人を獲得するのか。英国人記者が見解「新しいビジネスモデルがある」【現地発】

 今シーズンのプレミアリーグでは、過去に例を見ないほど多くの日本人選手がプレーしている。アーセナルの冨安健洋やリバプールの遠藤航、ブライトンの三笘薫をはじめ、鎌田大地がクリスタル・パレス、菅原由勢がサウサンプトンに移籍した。

 彼らは単にクラブに所属しているというだけでなく、各チームの有力な選手として活躍しているのだ。そして日本人選手の流入はプレミアリーグに限ったことではなく、イングランドの2部にあたるEFLチャンピオンシップにも及んでいる。

 今夏には大橋祐紀(ブラックバーン)、平河悠(ブリストル・シティ)、斉藤光毅(QPR)が新たに参戦。坂元達裕(コベントリー)、橋岡大樹(ルートン)、角田涼太朗(カーディフ)を含めると、計6選手が在籍している。

 なぜ、このような日本人選手の新しい波が起こり、EFLのクラブが彼らを欲しがるのだろうか。

 それは昔のように、クラブが日本人選手を買えば、日本でユニホームが売れるからではなく、新しいビジネスモデルがある。EFLには、現実的にお金を稼ぎたいクラブが多く、オーナーにとっては投資である。チャンピオンズリーグやプレミアリーグで優勝できるようなビッグクラブではないので、選手を投資対象として見ているのだ。

 たとえばプレミアリーグのクラブから自分たちの選手に獲得のオファーが来た場合、2つの理由からそれを断わらないだろう。1つはその選手がプレミアリーグでプレーすることを目標としており、ステップアップしたいと考えている。そしてもう1つは、その選手を引き留めるだけの資金を持っていないのだ。

 しかし、日本から直接選手を購入するのはそれほど高くはない。そしてその選手たちがプレミアのクラブなどからオファーを受ければ、移籍金がかなり跳ね上がる。EFLのクラブのオーナーたちは、このビジネスモデルを気に入っているのだ。
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 以前は、日本がFIFAランキングの上位にいなかったため、日本人選手たちは就労ビザの取得に苦労していたが、近年の日本代表の成績や2022年のカタール・ワールドカップでの躍進で、日本のランクは急激に上昇したため、ビザの問題は少なくなった。

 また、EFLのドレッシングルームは、以前よりも国際色豊かになっている。少し前までは、ほとんどがイギリス人だったので、日本人が単身でやってきても、異なる文化に溶け込むのが難しかったが、今はおそらくイギリス人の方が少数派だろう。

 EFLのどのチームにとっても、日本人選手は魅力的な戦力だ。彼らの技術、エネルギー、気質は、ますます需要が高くなっている。一昔前には、日本人選手がイングランドでプレーするには力不足だった。しかし今はそのようなことはなく、どのようなサッカースタイルでも非常に快適にプレーできる。

 EFLのクラブ、経営陣、オーナーが、日本人選手がクラブにもたらしてくれるものに気づき始めており、今後、日本人の増加傾向はさらに強まるだろう。

文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

著者プロフィール
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーター。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で出版した。

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