1年でJ1復帰。シーズンが佳境を迎えつつあるなか、横浜FCが着実な歩みを見せている。
28節終了時点で勝点60、自動昇格圏内の2位につける。3位のV・ファーレン長崎とは勝点8差。1ポイント差で追う首位の清水エスパルスと“2強体制”となってきたと思ったが、このタイミングで取材したFW伊藤翔の言葉にハッとさせられた。
「でも、あと10試合あるから。マックスで勝点30は動くし、いくらでもひっくり返る。まだ先は長い」
36歳のアタッカーは表情をグッと引き締めた。上位をキープしているが、少しの油断もない。ただ、現状に確かな手応えがあるのも、また事実だろう。
「今年のチームはそんなに崩れる感じがしないですよね。メンタル的にも成熟してきているし、“上がれるチーム”になってきていると思う」
総失点16はリーグ最少の数字。堅牢な守備をベースに、手堅い戦い方で勝点を積み上げている。ここまで一度も連敗がないのも、揺るぎない地力がある証拠だろう。福森晃斗が言う「“いくらでもいいよ、攻めてきてください、自分たちは守れるから”みたいな」という強気なスタンスも頼もしい。
四方田修平監督はチーム作りで「継続と成長」を強調する。「守備も、前から行く時間帯もあれば、しっかり固めて点を与えないことも含めて、両方やれないと上で通用しない」と、J1復帰後も見据えつつ、地道にチームを底上げしている。
相手を圧倒し、派手に打ち勝つような試合は少ない。だが、簡単に負けたりはしない。2点を先行されながらも粘り強く追いついて、2-2のドローに持ち込んだ24節・水戸ホーリーホック戦が象徴的だろう。
その試合で追撃弾をマークした伊藤も、「今、心配ごとはそんなにない」と話す。「ちゃんとピッチでみんな集中してやれば大丈夫」と確信する。
シーズンの序盤はやや不安定な戦いが続いたが、5月に清水を2-0でくだしてから怒涛の8連勝を飾るなど、盤石な強さで昇格争いをリードしている。試合を重ねるごとに選手たちも自信を深め、やるべきことに迷いがないように映る。
日々のトレーニングでも、良い意味で余裕が感じられる。慢心ではなく、何があっても動じない雰囲気が漂う。指揮官も「今までやってきたことのなかで、いろんなことに対応していけると思っています」と胸を張る。
チームとして目ざすのは、J2の“頂点”だ。
「みんなで言っていたのは、もちろん昇格は義務としてやらなければいけないけど、やっぱり優勝したいよねっていう。そういう気持ちでやっている」
そう明かす伊藤は、「何にせよ、勝ち続けるだけ。集中して。みんなその準備はしている」と言葉に力をこめた。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)