マンガの人気投票で上位にランクインするも、初登場時には「誰?」と言いたくなるようなビジュアルだったキャラクターも存在します。あらためて最初から読み直してみると、そのギャップに驚くかもしれません。



ブチャラティが表紙の『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』 Vol.8(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

【画像】え…っ? この格好もっと見たかった!こちらがタイトな「黒スーツ姿」でイケメン過ぎるブチャラティです(4枚)

モブ顔から「お色気担当」イケメンに?

 敵集団のひとりや、学園ものでのクラスメイトなど、「その他大勢」として描かれるモブキャラは、大きな特徴がないキャラクターデザインになりがちです。

 しかし、だんだんとメインキャラクター並みの扱いを受け、初登場時と比較すると美形化したケースも少なくありません。

 たとえば、『ONEPIECE(ワンピース)』の初期に登場した「コビー」は、もともと猫背気味で大きな丸眼鏡をかけた冴えない見た目のキャラクターでした。しかし、海兵として軍曹まで出世して再登場した際は、コビーは身長が伸び精悍な顔つきで堂々とした性格のイケメンになっており、読者を大いに驚かせています。

 同じく初登場時とビジュアルが大きく異なるパターンでいえば、悪人面だったものの、いつしか穏やかな顔を見せるイケメンになった……というキャラクターもいました。

『ジョジョの奇妙な冒険』のブチャラティ

『ジョジョの奇妙な冒険』(作:荒木飛呂彦)は、初登場時からビジュアルが大きく変わるキャラクターがたびたび登場します。3部で「空条承太郎」たちの仲間になるボストンテリア犬の「イギー」は、初登場時はよだれを垂らしながら不敵な表情を浮かべており、犬種もブルドッグに近い見た目をしていましたが、だんだんとビジュアルが凛々しい顔つきになりました。そのほか、第7部に登場するラスボスの合衆国大統領「ファニー・ヴァレンタイン」は、ぽっちゃり体型の小柄な男性でしたが、だんだんダイエットしていき、高身長のスマートなイケメンに変貌しています。

 5部に登場する人気キャラクターで、主人公チームのリーダーを務める「ブローノ・ブチャラティ」も、主人公の「ジョルノ・ジョバァーナ」を始末すべく、電車でにこやかに話しかけてきた初登場時はモブキャラ風の見た目で、「誰だこれ」「まだ荒木先生が描き慣れてない感もあってかわいい」と言われてきました。

 たしかに、チームのメンバーからも頼りにされながらも、殺人も辞さない冷酷さを持つ精悍な顔つきのギャングであるブチャラティが、少し高めのテンションでジョルノに笑いかけているのは、読み返すと意外かもしれません。女性的な髪型から、「初登場のブチャラティは女だと思ってた」という声もありました。

 その後、ブチャラティは数コマで突如変貌し、冷酷さも漂わせるキャラクターになっており、短時間で見せたギャップには驚くばかりです。さらに、ジョルノが「ウソをついていないか」確かめるために顔の汗をなめる姿も衝撃的で、イケメン化したあとのブチャラティのビジュアルが気になって作品に触れた人は引いてしまうかもしれません。

『ゴールデンカムイ』の谷垣源次郎

『ゴールデンカムイ』(作:野田サトル)は、強烈なキゃラクターが勢揃いする作品ですが、初登場時はモブらしさが感じられるキャラクターも見られます。

 たとえば、最初は坊主だった人気キャラ「尾形百之助」の、初登場時の「モブっぽさ」は有名です。また、その尾形が主人公「杉元佐一」と戦った際に大けがをした後、犯人を調査するためにやってきた陸軍第七師団の兵士「谷垣源次郎」も、初登場時は「モブ顔」でした。当初は体格もそこまで大きくなく、寡黙な雰囲気を漂わせた軍人です。

 その後、杉元たちの仲間となった谷垣は徐々に肉付きが良くなり、シャツのボタンが弾け飛ぶ、写真館でセクシーショットを撮影されるといった、作中屈指の肉体美を誇るキャラクターになりました。作者の野田サトル先生は公式ファンブックで「連載初期から15kg増量した」とコメントしているほか、単行本化の際には谷垣の胸毛を増やす様子をX(旧:Twitter)で報告するなど、かなりのお気に入りキャラになっていることもうかがえます。

 ムチムチでセクシーなキャラとして人気を得て、一部では「ヒロイン」とまで言われる谷垣のイメージが強いからこそ、初登場のビジュアルについては「ガリガリで心配になるレベル」「すぐ死ぬモブ顔過ぎる」「これじゃかわいいとは言ってもらえないな」「インカラマッとは付き合えなさそう」と、読者から驚きの声があがっていました。実写版『ゴールデンカムイ』では、濃い顔つきのイケメン俳優、大谷亮平さんが谷垣を演じています。実写版谷垣も、今後どんどん増量して「セクシー担当ヒロイン」になっていくのか、気になるところです。

※ここから先の記事は『鬼滅の刃』のアニメ化されていない範囲の物語のネタバレに触れています。



「セガ 鬼滅の刃 プレミアムちょこのせフィギュア 不死川実弥 柱合会議」(セガ)  (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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初期はモブ顔だったけど、人気投票1位に?

『鬼滅の刃』の不死川実弥

『鬼滅の刃』で鬼殺隊士の最高位に立つ「柱」が初めて集結した「柱合裁判」では、主人公「竈門炭治郎」が「鬼である妹『禰豆子』を連れながら任務を行なっていたこと」が重大な隊律違反として審議されました。当然ながら柱たちからの反応は厳しく、特に「風柱」の「不死川実弥(しなずがわ さねみ)」は禰豆子の入っていた箱の外から刀を刺して傷つけたうえ、自らの腕を切りつけて流した血で挑発するという行動に出ます。

 さらに実弥は顔も身体も傷だらけで、初登場時は目を見開いた表情で凄まじいインパクトを残しており、読者からは「あまりにも悪人面過ぎて鬼側のスパイなんじゃないかと思ってた」「行動も最悪過ぎるし怖いしで嫌いだった」と言われていました。一部のファンからは、カッと見開いた目を「アデリーペンギン」とも称されています。

 しかし、物語が進むにつれ表情が徐々に穏やかになり、終盤では驚くくらいの優しい顔を見せ、禰豆子の頭を撫でていました。それまで鬼に激しい憎悪を抱きながら戦っていた実弥の、憑き物が落ちたような表情は初登場時とのギャップの激しさもあり、好きになった方も多いのではないでしょうか。

『ヒカルの碁』の伊角慎一郎

 平凡な小学生の主人公「進藤ヒカル」が、天才囲碁棋士「藤原佐為(ふじわらのさい)」の霊と出会ったことで囲碁に打ち込んでいく姿を描いた『ヒカルの碁』(原作:ほったゆみ/作画:小畑健)は、小中学生の間で囲碁がブームになるほど大きな影響を与えた作品です。

 ヒカルはプロ棋士を養成する機関に所属する「院生」となり、さまざまなライバルたちと切磋琢磨しながら囲碁の腕を磨いていきます。そんなヒカルと同じ「院生」で優れた成績を持ちながらも、メンタル面での弱さから試験に落ち続けていた苦労人「伊角慎一郎」も、初登場時はモブキャラのような扱いでした。

 しかし、院生での最年長で気配りもできて周りから慕われる性格であるだけでなく、院生でいられる年齢制限が迫る焦りなど人間らしさも描かれていた点が人気につながったのか、徐々にイケメンとして描かれるようになっていきます。そして「週刊少年ジャンプ」本誌で行われた第2回人気投票では、なんと2位だった佐為と倍以上の大差をつけて1位に輝きました。

 人気投票の結果も影響したのか、一時的にヒカルが囲碁から離れた際は、院生を辞めた後に中国でメンタルの弱さを克服する伊角がメインの物語が描かれます。さらに伊角はヒカルが立ち直るきっかけを与えており、「最初のモブキャラ扱いが嘘みたいな大役」「囲碁から離れた気持ちが分かる伊角さんだからこそ」と、読者からも熱い支持を受けています。

※「禰豆子」の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記