攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第43回は、東京ヴェルディのMF森田晃樹だ。
ヴェルディのアカデミー出身で、ジュニアからクラブに在籍。高校3年生の時には天皇杯に出場してトップチームデビューを果たした。
その翌年にプロキャリアをスタートさせて、5年目の2023シーズンからはキャプテンに就任。昨季はヴェルディを16年ぶりのJ1復帰に導いた。そんな24歳の若き主将が、昇格を決めた当時の心境を振り返った。
――◆――◆――
去年のシーズン前のキャンプが終わった時に城福(浩)監督に呼ばれて、キャプテンをやらないかとお話をいただきました。正直に言うと、最初は自信がありませんでした。チームには僕よりも年上の選手も多いですし、みんなを鼓舞して引っ張るようなタイプでもありません。どうやっていけばいいのだろうという不安はありました。
でも、プロのチームで若い選手がキャプテンをできる機会はなかなかないですし、今後のサッカー人生を考えた時に、必ず良い経験になると思いました。そして、僕のようなアカデミー出身の選手がチームを背負うことに意味がある。そのうえで結果を出せるようにという想いを持って引き受けました。「ヴェルディをJ1に上げた男になる」とデカいことを言ったのですが、それが口だけにならなくて良かったです。
昨季の清水エスパルスとの昇格プレーオフ決勝(1-1)は、なんとも言えないドラマティックな展開で、嬉しいというかほっとしたような気持ちでした。
あの試合では引き分け以上で昇格が決まるなか、自分がPKを与えてしまってビハインドを負いました。やってしまったというマイナスの感情はあったのですが、なぜか根拠のない自信というか、同点に追いつける雰囲気を感じていたのを覚えています。結果的に後半アディショナルに染野(唯月)選手が同点弾を決めてくれて、本当に良かったです。
今季からのJ1での戦いは、やはり技術の部分でJ2との差を感じています。走ったところにちゃんとボールが出る、それをしっかり止める、他にもドリブルの上手さや、守備の強度もそうです。あとはチームとして90分を戦う上で、どのように試合を進めていくかというゲームマネジメントのレベルの高さもあります。全員が流れを感じながらプレーをしているような気がします。
そのなかでも、チームとしては開幕前に予想していたより戦えています。もちろん、勝ち切れなかったり、終盤に追いつかれた試合もありました。もっと上の順位にいるべきですが、現時点では10位と悪くない位置にいると思っています。
やはり全体として、崩れていないのが大きいです。試合後に毎回、課題を明確にしてクリアにしていく作業ができている。それがある程度、勝点を積み重ねられている要因です。
個人としても、最近は怪我で欠場が続いていて、得点などの結果を見ても全然満足はしていませんが、それ以外の面で攻撃の組み立てや守備の部分では手応えを感じています。
【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「 J歴代ベスト11」を一挙公開!
技術力に優れた選手を多く輩出するヴェルディのアカデミーで育った森田は、幼少期からいかにして自身のプレーを磨き上げてきたのか。また、これまで過ごしてきたクラブへの想いも述べてくれた。
――◆――◆――
幼い頃はロナウジーニョにかなり影響を受けていました。彼のバルセロナ時代のプレーには釘付けになっていましたね。
もともとJリーグのクラブに興味はなくて、親がヴェルディのセレクションを見つけてきてくれて入ることになりました。ジュニア時代から好きな先輩は、トップチームでも一緒にプレーした河野広貴さんです。
彼がヴェルディを離れる時に、「7番を受け継いでほしい」と言ってくださり、それまで背番号へのこだわりはなかったのですが、今、自分がつけている7番が特別なものになりました。
ヴェルディのアカデミーでは、同い年のチームメイトたちに技術が高い選手が多くて、そんな環境でプレーしていたので自然とテクニックは身についたのかなと思います。
特別なことをしていた記憶はないですが、当時からパスやトラップに関しては、量より質をすごく意識しました。自分自身、体格に恵まれているわけでもないですし、身体能力も高くありません。プロで勝負していくには技術、判断を間違えないところが武器になると思い、トレーニングに励んでいました。
パスやトラップは、やればやるだけ上手くなります。それを普段からどれだけ意識高く取り組めるか。自分だけではなく、周りの選手たちにもこだわってもらえるかが大事だと思います。
このクラブの魅力はやはり、一体感だとすごく感じています。カテゴリーに関係なく一緒にボールを蹴る機会もありますし、読売サッカークラブからのOBの方々やファン・サポーターとの交流も含めて家族のようです。
J1昇格が決まった時には、ジュニアユースやユース、ベレーザの選手たち、スタッフ、OBの方々も含めて、こんなにたくさんの人たちの期待を背負って戦っていたんだなと実感した瞬間でもありました。
ヴェルディをJ1に定着させて、昔のようにじゃないですけど、再び日本サッカー界の先頭に立つようなクラブにしたい想いはあります。歴史あるクラブですし、サッカーに興味がない人でも知っているようなOBの方々もいます。自分もそういう存在になれたら、これ以上ないことです。
※後編に続く。次回は8月31日に公開予定です。
取材・構成●中川翼(サッカーダイジェストWeb編集部)
【PHOTO】ゲームを華やかに彩るJクラブ“チアリーダー”を一挙紹介!
【記事】【バイタルエリアの仕事人】vol.27 宇佐美貴史|7番の主将が引っ張る新生ガンバは「強くなっていっている最中」
【記事】【バイタルエリアの仕事人】vol.23 岩清水梓|パワーのある選手には要注意。いかに味方と連係してパスコースを遮断するか