「みずいろの雨」「パープルタウン」「ポーラー・スター」などをヒットさせたシンガーソングライターの八神純子(66)。〝シティポップの女王〟として、世代を越えても愛される数々の名曲を歌い上げるコツとは?

──今、シティポップが世界で評価されていますが?

 欧米でも私の曲が知られるようになって驚いています。最近で言うと、ユーチューブでティーンエイジャーの男の子が私のアルバムを持って、「やっと日本から届いたぜ」って紹介していて。思わず、うれしくなったから「ありがとう」ってコメントをしたらすぐに返事が来て。驚いたんでしょうね(笑)。あと、昨日はロシアのDJから私のボーカル音源の一部を使っていいかと問い合わせがあったりして、面白い時代になったんだなって思います。

──では、音域が広い八神さんの楽曲で初心者でも歌いやすいのは?

 たくさんの方に知っていただいている「パープルタウン」でしょうね。サビは、歌いやすいメロディーですし、音程も激しく上下していませんし。でも、他の曲もコツさえつかめば、気持ちよく歌えると思うんですよ。例えば、「ポーラー・スター」みたいにテンポが速い曲でも、息継ぎを意識すれば、サビの最後の「私の未来〜」のロングトーンも気持ちよく歌えるんですよ。ポイントは、溜め込んでいる息を全部吐き切ること。肺の中の息がゼロになるから、自然と深い息継ぎができて、力強い伸びやかな声を出せるんですよ。私もサビ前で、少しでも息が残っていると、意識してフッと吹き切ります。

──八神さんの歌は、声のパワフルさも大事ですね。

 伸びやかな声を出すことにも通じるんですけど、声量を増やすためには、やっぱり腹式呼吸をマスターすることをオススメします。お腹の筋肉も必要になりますから、意識して鍛えることも必要です。私も30年ほどずっとジョギングをしていますよ。腹筋が鍛えられたら、音域も広がって幅広い曲を歌えるようになります。それに、1曲数分といっても動きながら思い切り歌うと息切れしますよね? あれがなくなり最後までパワフルに歌えるんです。だから、カラオケ屋さんにはジョギングで行くようにしたら効率がいいかも(笑)。

──男性の場合、高い音程は裏声で乗り切る?

 そういう方法もありますけど、高い声を出す方法っていうのがあるんです。声を響かせる位置を変えるために、口角をキュッと上げて笑顔を作るんです。声の印象も変わって、明るくなるんですよ。だから、私もレコーディングをしている時に、今日は少し音程がフラットしていると思ったら口角をキュッと上げる。すると声がシャープめ(高め)に出るようになるんです。

──そういう鍛錬があるから、約4時間ものコンサートが乗り切れるのですね。

 10月に開催される「ヤガ祭り」というコンサートは、今年で6回目になります。「歌いたい歌を、歌いたいだけ歌う」ことがコンセプトなので、だいたい4時間ぐらいは歌い続けています(笑)。今年の1日目には、ゲストに岩崎宏美さんをお迎えして一緒に歌えるのが今から楽しみなんです。宏美さんと今回改めて話した時に、「お互いに歌うことを大切にしていこうね」って誓い合って、色々な人生を経て、またこうして一緒に歌えることがとってもうれしくて。

──ライブで楽しむことも歌唱力アップに?

 それは、絶対にあると思いますね。ライブで歌う私を見て楽しんでいただければ、気持ちが高揚します。ライブの後、「これからカラオケに行って歌ってきます!」という方がたくさんいらっしゃいますが、きっとパフォーマンスは上がっているはずですよ!

八神純子:58年愛知生まれ。78年、シンガーソングライターとしてデビュー。「みずいろの雨」「パープルタウン」などがヒット。最新アルバムは「TERRA〜here we will stay」。24年10月には、昭和女子大人見記念講堂で毎年恒例のコンサート「ヤガ祭り」を開催予定。

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