5位には石油取引の失敗で破綻した総合商社の実話を元に作られた山﨑努主演の「ザ・商社」が貫禄を見せた。

 十三代目片岡仁左衛門が扮する江坂産業の社主・江坂要造に寵愛されるピアニスト・松山真紀を演じたのは夏目雅子。お色気シーンがふんだんに用意されていた。マグナム北斗氏が昨日のごとく述懐する。

「夏目の“ポッチ”の肌着姿や社主所有のクルーズ船上では舐めるような水着のサービスカットもあった。最終回にはツンと上を向いたバストを見せてたし。演出の和田勉に相当鍛えられたんじゃないの? この2年後に『鬼龍院花子の生涯』に主演するわけで。お嬢さん女優から演技派女優への転換期だったよね。逆に夏目の恋敵役として水沢アキ(69)が出てたけど、一切脱がない。夏目を上へ上へ持ち上げたかったんでしょう。令和ならインティマシーコーディネーターがいてアウトでしょうけど。当時は、女優さんの中にも〝一皮剝けて〟大きくなれると勝負しにいった人も当然いた」

 松山真紀のモデルは世界的なピアニストの中村紘子と言われている。

「しかし、このドラマで江坂アメリカ社長を演じた山﨑努はこんな悪うてええのかというぐらい悪そうだったね。こんな赤裸々に商社が崩壊する様子を描かれたら民放だったらスポンサー付きませんよ。商社と石油の話なんてのは触れてほしくないわけで。今、ネットフリックスで話題の『地面師たち』も最初は地上波に持っていったらしいけど、全部断られたとか。積水ハウスの事件がベースやからね」(マグナム氏)

 6位はフランキー堺主演の「あ・うん」がランクイン。亀和田武氏は語る。

「男同士の堅い友情。純情さ、一徹さ。実業家・門倉(杉浦直樹)は戦友であるフランキー演じる水田の妻(吉村実子)のことが好きになってしまう。でもそれを言えない。水田も妻もそれを知っていながら浮き足だつことなく、友情を貫く様子をじっくり掘り下げていくという、向田邦子ならではの作品ですよ。そしてフランキーがうまい。フランキーと言えば社会派ドラマですよね。BC級戦犯の悲劇を描いた『私は貝になりたい』に始まり、人情派検事の奮闘を描いた『赤かぶ検事奮戦記』シリーズも長いことやってましたよね」

 7位は若山富三郎が人情味あふれる元エリート裁判官の弁護士・菊地大三郎を熱演した「事件」。

「この菊地弁護士役は、映画版では丹波哲郎、WOWOW版では椎名桔平(60)でリメイクされてるけど、若山さんが一番重厚でよかった。それまでヤクザ映画が多かったから、こんな役もできるんだなと。勝新さんではできなかっただろうね」(マグナム氏)

 8位以下には、名優が並び立った。山田太一の脚本「冬構え」の主演には、笠智衆。

「どうやって人生を終えるかということを考えさせられるわけなんだけど、当時は〝終活〟なんていう概念もなかったから、かなり先取りしていた」(59歳 造園業)

 9位は緒形拳主演の「破獄」。

「囚人と看守の関係を描いた力作。緒形拳は4度も脱獄した無期懲役犯を演じるわけだが、看守役の津川雅彦との息もピッタリ。主演の器というものを感じずにはいられない」(70歳 タクシー運転手)

 10位は世界の三船敏郎の「勇者は語らず」でとどめを刺す。

「日本の自動車会社のアメリカ工場進出という、日本が絶好調だった頃の話。要は〝ジャパンバッシング〟の前夜ですが、懐かしいと同時に、今の日本の窮状を考えると、もう二度とこんなことは起きないのかとちょっとブルーな気持ちになる。それでも世界の三船は絵になる漢(おとこ)です」(62歳 そば店経営)

 日本最大にして最古の〝課金テレビ〟NHKの社会派ドラマの数々。どっしり腰を据えて見たいものだ。

NHK社会派ドラマBEST11~20】

11「シャツの店(86年)鶴田浩二:202票
12「炎熱商人」(84年)緒形拳:193票
13「価格破壊」(81年)山﨑努:178票
14「翼をください」(88年)片岡鶴太郎:164票
15「定年後」(77年)長門裕之:151票
16「暁は寒かった」(80年)桃井かおり:139票
17「蛇蝎のごとく」(81年)小林桂樹:135票
18「タクシー・サンバ」(81年)緒形拳:124票
19「ある少女の死」(81年) 小林桂樹110
20「ひこばえの歌」(82年)林隆三97

(アンケートは全国50~75歳男性による。複数回答あり)

*週刊アサヒ芸能9月5日号掲載

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