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派閥解消に伴う候補者乱立で未曾有の混戦が続く自民党総裁選で、全国の党員・党友の支持を一段と広げているのが石破茂氏だ。

他陣営が派閥裏金問題や憲法、安全保障といったテーマで論陣を張る中、石破氏はユニークな「プロ野球の球団拡張による経済活性策」を強調している。

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自民党が、政府に「プロ野球16球団への拡大構想」を提言したのが、ちょうど10年前の2014年。第2次安倍政権のアベノミクス(経済政策)の一環で、地域経済の活性化が狙いだった。

当時、これを担当したのが地方創生担当大臣だった石破氏。2016年の衆院予算委員会では、自民党の後藤田正純氏(現徳島県知事)の質問に、こう答弁していた。

「球団を増やせば、地方創生、若い人たちの夢、地域貢献につながる。政府として検討する」

以来、石破氏は「球団エクスパンション(拡張)の象徴」となり、注目が集まったのである。

「当時の自民党案をざっくり言えば、プロ野球空白地の静岡、北信越、四国、沖縄にプロ野球球団を新設し、地域経済の起爆剤にするという内容でした」(全国紙の政治部記者)

候補地は静岡市、新潟市、松山市、那覇市だった。

「とりわけ力を入れたのが、愛媛の松山。同県には地元を代表する大企業・大王製紙があり、元会長の井川意高氏は安倍首相の理解者で支援者でしたからね。忖度が透けた」(同)

しかし、16年8月に石破氏が安倍首相と袂を分かち、地方創生担当大臣を退任。さらに、安倍氏と関係が深い「加計学園グループ」の岡山理科大学獣医学部新設計画(愛媛・今治市)をめぐる疑惑が国会で追及され、16球団拡大構想、松山への球団誘致の動きも立ち消えた。

球団新設は地元企業も潤う

それでも、安倍氏の遺志は粛々と引き継がれている。

今季から二軍限定ながらも静岡に「くふうハヤテベンチャーズ静岡」、新潟に「オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」がNPBに新規参加しており、球団拡大の動きが復活しているのだ。

これに反応したのが5度目の総裁選出馬を決めた石破氏で、「私が総理になれば、裏金議員は公認しない」としてきた看板公約を封印。地方遊説を積極的にこなし、「プロ野球の24球団拡大による地域経済活性化」をアピールする方針だという。

「積み残し状態の松山、沖縄のほかにも宇都宮、金沢、長野、京都、岡山、高松、北九州、熊本、鹿児島、札幌、岩手などが新規球団の誘致を熱望している。どこの地域も大歓迎で、石破支持の声が広がりそうです」(スポーツ紙記者)

我々がつかんだ「24球団構想」は、現在の12球団を2倍増の24球団に増やし、東西南北4つの地区リーグに振り分けるというもの。交流戦を交えて地区優勝を決め、プレーオフで日本一を争う方式だ。

10年前の16球団拡大提言でも、東西南北の4リーグ改編が検討された。那覇に新球団が誕生すると、沖縄と北海道の移動が経費も時間もかさみ、セ・パ2リーグ維持が困難だからだ。

一方、4リーグなら経費は抑えられるが、各リーグが4球団ずつでは同じカードが増え、ファン離れも予想される。

「そこで、現状の1リーグ6球団×4プランが浮上した。地方に新球団が続々誕生すれば、スタジアムの新設や大規模改築が必要となり、飲食店やメディアも潤う。実現まで何年かかろうとも、たとえ途中でポシャろうが、球団エクスパンションは言った者勝ち。地方の党員票は確実に増える」(選挙アナリスト)

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16球団ではダメな理由

「球団過多」を危惧する声もあるが、米大リーグ(MLB)は、1993年から1998年にかけて実施したエクスパンションで16球団から現在の30球団に増加。ファン層も拡大し、年間売り上げも1500億円規模から1兆5000億円に爆上がりした。

石破氏が「4リーグ24球団プラン」に転回したのは、自身の都合もある。

実は「16球団拡大」の発案者は石破氏ではない。当時、アベノミクスを進めていた甘利明経済再生担当大臣がタクトを振り、自民党政調会長だった高市早苗氏が本部長を務める日本経済再生本部がまとめた構想なのだ。

先の政治部記者が、こう補足する。

「甘利氏は総裁選に河野太郎デジタル相を擁立した麻生派の重鎮で、自身は“コバホーク”こと小林鷹之前経済安全保障担当相の『後ろ盾』。高市氏は総裁選を戦うライバルですからね。彼らの“手柄”を横取りしたと言われかねない」

そこで石破氏は、10年前の16球団拡大構想に大きく手直しを加え、別物に変える必要があった。4リーグ24球団構想なら、胸を張って自分のアイデアだと提唱できるというわけだ。

こうした石破氏に接近しているのが、ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏。自身のYouTubeチャンネルなどで、「世論調査で総裁にふさわしい人ナンバーワンになる理由が分かる」などと、しきりに持ち上げているのである。

ライバル陣営の国会議員秘書は、こう勘繰る。

「堀江氏は北九州下関フェニックスのオーナー。将来のNPB参加を狙っており、“石破首相”に恩を売っているのではないか」

候補者乱立で国会議員票は割れ、党員票を多く取るとみられる小泉進次郎氏と石破氏の決選投票になることが確実視されている。

「万が一、小泉氏が1回目の投票で取りこぼせば、決選投票で石破氏に支持が集まる」(同)

石破政権の誕生でプロ野球球団が増えるかどうかは、9月27日(自民党総裁選投票日)に決まると言っても過言ではなさそうだ。