吉田修一さんの同名小説を、江口のりこさん、小泉孝太郎さんを迎え、『さんかく窓の外側は夜』などの森ガキ侑大監督が映画化した『愛に乱暴』が公開中です。
徐々に平穏を失っていく“妻”を怪演する江口さん、家庭生活を送りながらも心は常にどこか違う場所にある“夫”役の小泉さんに話を聞きました。
■公式サイト：https://www.ainiranbou.com/ [リンク]
●映像化が難しいとも言われていた本作ですが、出演が決まった時の心境はいかがでしたか。
江口：わたしは森ガキ監督とは何度かお仕事をしたことがありましたが、今回は映画でご一緒出来るということで、うれしいなと思いましたし、吉田修一さんの面白いあの小説の映画化ということで、これはきっと楽しい仕事になるだろうなっていう喜びもありました。
小泉：最初に江口さんの夫役とうかがい、江口さんとの夫婦役ってどういう風になるだろうと、それはぜひやらせていただきたいと思いましたが、タイトルが『愛に乱暴』だったから、最初台本を読むのがちょっと怖かったですね。暴力的な内容だったら嫌だなと思って。もちろんね、いただいた脚本を手にしたら違いましたけれど（笑）。
●おふたりが演じられた役柄について、改めて教えていただいてもよいでしょうか。
江口：桃子について、脚本にはキャラクターがしっかり書かれてあって、頭で理解した上で現場に入るんですけど、いざ芝居するとなると、自分の体を通したときに、本当にこれでいいのかな？と不安になることもあるんです。でも、孝太郎さんとの夫婦のシーンなどは、テストを何回もして本番に向かうことが出来ましたし、わたしたちは決して心が通い合った夫婦ではないんですけれども、一緒に芝居するには、どこかで心を通わせなきゃいけない。お互い控室で芝居の相談だったり、こうしようっていう話、作業は一切ないんですよ。ないけれども、やりながらふたりの空気というか、どうすればいいかなということを探っていきながらやっていたような気がします。
小泉：とても心地良かったですね。僕の妻としての桃子、義理のお母さんがいる時の桃子、いろいろなその時々の妻の顔ってあるわけじゃないですか。僕はもちろん結婚したことはないですし、女性から見たらなんだこの男って思われるような真守なんですけど、僕としてはいくつかの顔を持ってる自分の妻の、その時々のシーンっていうのは、とても心地良かったことを覚えています。もちろんそれは、江口さんにリードしてもらったっていうこともあると思いますが。
●ご覧になる夫婦の数だけさまざまな感想が出そうな作品でしたが、完成した作品をご覧になった感想はいかがでしたか。
江口：感想については、やっぱり自分が出ているからそんなに冷静には観られない部分はあるんですけれども、森ガキ監督の愛情をすごく感じましたね。監督の存在というものが、すごく映画から見えてきて、わたしはそれがすごくうれしかったですね。
小泉：いろいろな江口さんを感じられましたが、僕はふたりが一緒に住んでいた家、あの家と桃子という存在が、今回強烈に記憶に残りましたよ。おそらくあの家は将来なくなっていくとは思うけれど、でも忘れられないあの家の形だったり、家の匂いだったり、今回そういうものを強く感じましたね。
●今日はありがとうございました！
■『愛に乱暴』ストーリー
～ヒリヒリとした情動に焼かれ、私もこの愛も乱れていく～
夫の実家の敷地内に建つ“はなれ”で暮らす桃子は、結婚して8年になる。
義母から受ける微量のストレスや夫の無関心を振り払うように、センスのある装い、手の込んだ献立などいわゆる「丁寧な暮らし」に勤しみ毎日を充実させていた。
そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。近隣のゴミ捨て場で相次ぐ不審火、愛猫の失踪、不気味な不倫アカウント…。平穏だったはずの日常は少しずつ乱れ始め、やがて追い詰められた桃子は、いつしか床下への異常な執着を募らせていく……。
公開中
Ⓒ2013 吉田修一／新潮社 Ⓒ2024「愛に乱暴」製作委員会
(執筆者: ときたたかし)
