大宮U18で“中3”の大型CB熊田佳斗が存在感。憧れは市原吏音「一番参考にしていますし、超えていきたい」

 高円宮杯プレミアリーグEAST第14節の大宮アルディージャU18対市立船橋で、中学3年生のCBが初スタメンでフル出場した。

 大宮のトップチームのホームであるNACK5スタジアムで行なわれたこの一戦で、大宮のジュニアユースに所属し、中3ながら183センチのサイズを誇るCB熊田佳斗は4バックの右CBでピッチに立った。

 デビューは前節の柏レイソルU-18戦で、これがクラブ史上初の中学生でのプレミアリーグ出場だった。その試合では86分からの投入だったが、スタメンで出場した市立船橋戦で、熊田はラインコントロールやカバーリング、対人の強さを発揮するなど臆することなく堂々とプレー。試合は1-2で敗れたが、90分を通して安定感と高いポテンシャルを示した。

「先週水曜日の立教大学さんとの練習試合に帯同して、スタメンで出場させてもらったので『これはスタメンあるかも』と思っていました。実際に今日告げられました」

 試合後、ハキハキと受け答えする姿はプレー同様に中3とは思えないほどの落ち着きだった。同時に熊田の心の中に宿る向上心と負けん気の強さも感じ取ることができた。

「今日の出来は正直60、70点くらいです。初スタメンにしてはやれた部分はありますが、まだ遠慮している部分がありますし、100%自分の良さを出せたとは思いません。特に今日は2失点もして負けています。チームの失点ですが、僕も関わったと受け止めています」
 
 1失点目は30分に市立船橋のCB岡部タリクカナイ颯斗のロングキックに対し、裏に抜け出そうとした相手FWに対応しようとしたが、ペナルティエリア外に飛び出してきたGK清水飛来の動きを見て動きを止めた。しかし、クリアボールがミートせず、中央のスペースにこぼれると、前向きに走り込んできたMF髙山大世がダイレクトでロングループシュートを沈めた。このシーンで、熊田は自分の対応のまずさに言及した。

「僕がもっと良い状態で相手のロングフィードに対して対応することができていれば、あのゴールは防げた。僕の初速の出し方がもっと良ければ、相手をブロックしたり、ヘッドなどでフィードを跳ね返したりしてラインを押し上げることができた。背後の対応は課題だらけだと思っているので、そこはきちんと受け止めたい」

 2失点目は後半アディショナルタイム2分に右ロングスローの崩れから、クロスを上げられて最後は相手のエースストライカーの久保原心優にヘッドで合わせられた。このシーンで熊田はニアにいて久保原のヘッドを見つめることしかできなかったが、「2失点目は絶対に与えてはいけない失点だった」とCBとしての責任を口にした。

 彼の言葉の節々には、飛び級だろうが初スタメンだろうが、大宮U18の一員としてピッチに立っている以上、一切の甘えは許されず、守備者としての責任感と自覚がにじみ出ていた。それと共に負けず嫌いが顔を出したのは、この発言だった。

「正直、僕はもっと早く(プレミアに)出るべきだと思っていて、同い年の選手は他のチームで4人(FW高木瑛人/鹿島アントラーズユース、MF長南開史/柏レイソルU-18、MF北原槙/FC東京U-18、MF里見汰福/ヴィッセル神戸U-18)も出ていて、そのうち2人(高木、長南)は点を決めています。そういう部分では置いていかれたと思っています」

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 確かにこれまでのプレミアの歴史を見てきても、久保建英や松木玖生のように中学生でプレミアの試合に出ることは、今や珍しいことではない。だが、それらは前述の選手を含めて、大半が中盤から前の選手。後ろにサポートをしてくれる選手が複数いるため、「ミスしてもいいから思い切って自分を出せ」と背中を押してもらい、自分の良さを出すことに集中しながら、思い切ってプレーすることができる。

 しかし、GKやCBはそうはいかない。この2つのポジションは経験が必要で、かつ失点の重みがのしかかる。中3のCBのプレミアデビューは非常に稀なケースと言っていい。それを伝えると、彼は中学生らしい笑顔を見せてくれた。

「確かに、後ろの選手でこの時期にデビューしている選手はあまり見ないので、そう言ってくださると素直に嬉しいです。すごく名誉なことですし、丹野(友輔)監督だからこそできることだと思います。僕もこの1か月半でしっかりとアピールができたので、このピッチに立つ権利を得たと思う。そこは成長だと思います」

 しっかりと地に足をつけながら、あどけなさと大人っぽさを併せ持つ熊田には明確な目標がある。

「今、トップチームで市原吏音選手(19歳)が後ろの選手なのにあんなに目立っていますし、明日(9月17日)からU-20アジアカップ中国大会予選を戦いに行って、チームでもリーダー的立場だと思います。そういう部分でも憧れですし、僕とタイプも似ていると思うので、一番参考にしていますし、超えていきたい選手です」
 
 昨年は高3ながらチームの主軸CBとなり、年代別日本代表でも中心的存在となっている市原という大きな存在が自分より先を走っている限り、熊田には驕りという言葉は存在しない。

「次は国体でいないのですが、後期の2試合目で使ってもらえたのは、残りの9試合程度も出場の可能性はあるということ。チームのプレミア残留に貢献したいし、来年プリンスで戦うのは嫌なので、きちんとプレミアで戦えるように、3年生を笑顔で送り出せるように残りわずかですけど、自分の力を出していきたいと思います」

 大宮と日本の将来を明るく照らす光は、未来へ真っ直ぐに目を向けている。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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