錦織圭、ジャパンオープン初戦の相手チリッチを警戒!「ミスもあるがプレーの早さやボールの速さもある」<SMASH>

 男子テニスツアー「木下グループジャパンオープン2024」開幕前の公開ドローで、錦織圭の名が引かれたとき、集まった観衆から、どよめきの声が上がった。1回戦の対戦相手が、マリン・チリッチ(クロアチア)に決まったからだ。

 錦織とチリッチといって、誰もが真っ先に思い出すのは10年前、全米オープン決勝戦での対戦だろう。当時、錦織は24歳で、チリッチは誕生日を数週間後に控えた25歳。両者ともにこの時、初のグランドスラム決勝の大舞台だった。

 この対戦を迎えた時点で、錦織は対戦戦績で5勝2敗とリード。「勝てる」の思いが硬さとなり、緊張の糸が錦織の全身を縛った。3-6、3-6、3-6の敗戦という結果以上に、「大舞台で、良いプレーができなかった」ことへの悔いが、深く残る。

「人生で一番悔いが残っている試合と言われれば、多分、あの試合を選ぶと思います」

 それが錦織の、あの決勝戦への評価だ。

 その後も両者は毎年のように対戦を重ね、現時点での対戦戦績は9勝6敗で錦織がリード。ただ最後の対戦となると、2018年の全米オープンまで遡る。対戦のなかった6年の時間は、似た順路を辿ってきた二人の足跡が、乖離したことを物語る。
  錦織は2019年秋にヒジにメスを入れたのを皮切りに、以降もコロナ禍やケガでトップレベルからは遠ざかった。

 一方のチリッチも、昨年上旬にヒザにメスを入れ、長期戦線離脱を経験する。今年5月にも再び手術を決行し、先月復帰を果たしたばかりだった。

 10日ほど前の時点で、チリッチのランキングは777位。ところが先週出場した中国杭州のATP250大会「杭州オープン」(9月18日~24日)にワイルドカードで出場すると、西岡良仁や内山靖崇を立て続けに破り、驚がくのツアー優勝を成し遂げた。

 対する錦織も、8月にモントリオール開催のATPマスターズ1000で、ベスト8へと大躍進したばかり。かつて世界の3位(チリッチ)と4位(錦織)だった二人のランキングは、現在212位と200位。両者ともに急速にランキングを駆けあがるその最中で、二つの足跡は6年ぶりに交錯することになった。
  チリッチが杭州オープンの決勝に進出を決めた時点で、錦織はかつてのライバルの復調を、「戻してくるのが早いなと思った」という。

「うっちー(内山)との試合も少し見ていたし、西岡選手との試合を見ても、けっこうプレーの質が高い。ミスもあるが、プレーの早さやボールの速さもあり、もちろんサーブも健在」と警戒心を深めた。

 同時に自身の現在地に関しては、200位のランキングが、実力とマッチしていないと感じているとも言った。今年3月に8カ月ぶりにツアー復帰した錦織は、ここまで11位(対戦当時)のステファノス・チチパス(ギリシャ)を筆頭に、3人のトップ100選手に勝利。敗れた選手の中で最もランキングが低いのは、対戦時84位のハウメ・ムナール(スペイン)だった。
  それらの戦いを経て「100位内には、多分入れる」との自信を深め、同時に「総合的に見ると、トップ10には到底勝てない」との現状にもまっすぐに目を向けた。

 ただそれは、「大事なポイントでのプレーの仕方」に課題を残すからであり、時間が解決してくれるだろうとの見通しもある。その時が満ちれば、「トップ10にも、ワンチャン、勝てる」というのが、彼の客観的かつ肉感を伴う分析だ。

 その日がいつ訪れるかは、「まだわからない」。ただ「明日にでもなるかもしれないので、その希望を失わずにやりたいな」と、彼はふわりと言った。

 いつか訪れると信じる、欠けたピースがカチリと噛み合う日。もしかしたらそれは、「人生で一番悔いが残る試合」の相手と、再び戦う明日かもしれない。

取材・文●内田暁

【画像】錦織圭がデビスカップでコロンビアを下した試合

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