躍進を狙うスパーズの“秘密兵器”が新シーズンへ意欲!名将ポポビッチからの期待、ウェンバンヤマとの絆も<DUNKSHOOT>

 サンアントニオ・スパーズと再契約を結んだジョージア代表のビッグマン、サンドロ・マムケラシュビリが、新シーズンに向けて意欲を燃やしている。

 ニューヨーク生まれの25歳は、2021年のドラフトでインディアナ・ペイサーズから54位で指名を受け、トレード先のミルウォーキー・バックスと2WAY契約を結んでNBAキャリアをスタートさせた。しかし昨年の3月にバックスから解雇され、直後にスパーズと契約。オフに契約更新を勝ち取っていた。

 2023-24シーズンは46試合に出場したが、平均出場時間は9.8分とコートに立つ機会は多くなかった。それだけに、この契約更新にはマムケラシュビリ本人も安堵していることだろう。

 出場機会に恵まれないなかでも、昨季終盤戦の活躍ぶりは見事だった。デビン・ヴァッセルとジェレミー・ソーハンの2人がともに足のケガのため4月の全休を余儀なくされると、グレッグ・ポポビッチHC(ヘッドコーチ)はマムケラシュビリを重用。ラスト8戦で5試合に先発出場し、平均26.0分間コートに立って11.4点、9.9リバウンド、2.1アシストと期待に応えてみせた。
  可能性を秘めたビッグマンについて、指揮官は「私が好きなタイプの選手」と語り、次のように評価している。

「ボールを持っていない時でも動き回り、カットしたり、ルーズボールに食らいついていく。彼のプレーは見ていて楽しい。とにかく、彼はひたすら動き続けているからね」

 マムケラシュビリは身長206cmのパワーフォワード兼センターだが、ボールハンドリングも巧みで、コートビジョンにも優れた汎用性の高いタイプの選手だ。指揮官のコメントを聞いて、「また(スパーズで)プレーできるというサインだといいなと思っていた」と、サンアントニオのテレビ局『KSAT 12』に語っていたが、実際にローテーションプレーヤーに値する素質を持っていると言える。

 その『KSAT 12』とのインタビューでは、スパーズのコーチングスタッフが、ベンチプレーヤーをいかに大切に扱っているかを強調していた。

「プレーしていない選手にはまったく注意を払わないというチームは少なくない。でもスパーズは違う。コーチたちはいつもそうした選手たちのコンディションや精神状態を気にかけてくれていて、ベンチ組だけで5対5をしたり、トレーニング後に居残り練習してくれたり、親身にケアしてくれるんだ」 昨シーズンはスーパールーキー、ヴィクター・ウェンバンヤマとも固い絆を築いたという。

 お互いにヨーロッパ人選手ということで打ち解け合うのに時間はかからなかったようだが、2人には「ボードゲーム」という共通の趣味もあった。互いに負けず嫌いゆえ、コート外ではよく真剣勝負に興じているそうだ。さらにウェンバンヤマが、マムケラシュビリの生まれ故郷ニューヨークにあるジョージア料理のレストランに同行したことで、2人の仲はさらに縮まった。

「ジョージアのカルチャーを知りたいという彼の姿勢そのものも嬉しかったし、彼は食にも興味があって、ジョージアの料理も堪能してくれたんだ」

 他文化への好奇心旺盛なウェンビーらしいエピソードだが、自分のふるさとの食を楽しんでくれるというのは、誰にとっても嬉しいものだ。2人の仲がグッと縮まったレストランでの和気藹々とした光景が目に浮かぶ。
  インタビューではオフに加入した大ベテラン、クリス・ポールについても語っている。彼はとにかくチームメイトたちに積極的に話しかけるそうで、「若い選手が多いスパーズにうってつけのリーダー」だとマムケラシュビリは開幕後の共闘に期待を膨らませている。

 早くもチームメイトを集めてレストランに食事に行ったとのことで、そこでも、自分のこれまでの経験や、スランプや苦境に陥った時にどうやって乗り越えたかといった体験談を熱く語ってくれたそうだ。

 この夏はジョージア代表としてオリンピック予選にも参加し、2試合で平均20.0点とチーム最多得点をマークしたマムケラシュビリは、これから大きく成長する可能性を秘めた逸材だ。名将ポポビッチの「お気に入り」プレーヤーの看板とともに、新シーズンの飛躍を楽しみに待ちたい。

文●小川由紀子