9月29日、秋のGⅠシーズン開幕を告げるスプリンターズS(中山・芝1200m)が開催する。
昨年の覇者ママコチャ(牝5歳/栗東・池江泰寿厩舎)、今春の高松宮記念(GⅠ、中京・芝1200m)を制したマッドクール(牡5歳/栗東・池添学厩舎)が顔を揃え、上がり馬のサトノレーヴ(牡5歳/美浦・堀宣行厩舎)、スプリント王国の香港から2騎が参戦するGⅠらしい好メンバーが参集した。
ただし、天気予報によると良馬場での施行は望めない雲行きで、降雨量が多ければ「重」、少なくても「稍重」程度には悪化することを想定して、予想のファクターに加えねばならないだろう。
力量上位は4頭。枠が内の馬からナムラクレア(牝5歳/栗東・長谷川浩大厩舎)、ママコチャ、マッドクール、サトノレーヴだと見るが、主軸として取り上げたいのはマッドクールだ。
昨年はCBC賞(GⅢ、中京・芝1200m)を9着とし、3か月の休養を挟んで臨んだスプリンターズステークスでママコチャとはハナ差の2着に惜敗。その後、香港スプリント(GⅠ、シャティン・芝1200m)を8着に敗れたあと、3か月の休養を経て出走した今春の高松宮記念でナムラクレアをアタマ差抑えてGⅠウィナーの仲間入りを果たした。
マッドクールその後、4月のチェアマンズスプリント(GⅠ、シャティン・芝1200m)ではまたも11着に大敗。今回はそれ以来、5か月ぶりのぶっつけ参戦となる。
大敗したあとで5か月の休養明けとなるマッドクールをなぜ推すのか。それは、ひとえに過去データの優秀さによる。
CBC賞(9着)→スプリンターズステークス(2着)→香港スプリント(8着)→高松宮記念(1着)と、GⅠでの連対は2度とも大敗からの巻き返し。その両方が休養明けで、レース間隔が空くことはまったく問題ない。
また、重馬場成績は高松宮記念を含めて〔2・0・0・0〕で、道悪は得意なタイプ。中山のコース実績も〔1・1・0・0〕と100%連対と、データ的にはマイナス要素が探しづらいとさえ言える非凡さを示している。流れに左右されず先行できるのも有利な材料で、ここは迷わず主軸に推したい。 その他の力量馬3頭であえて序列をつけるならば、ナムラクレア、サトノレーヴ、ママコチャの順になるだろう。
ナムラクレアはご存知の通りスプリントGⅠを2、3、2着としている。勝てないながらも、常に上位争いを繰り広げる安定感は随一だ。注目点は道悪の上手さで、重馬場成績は〔2・2・0・0〕であり、このなかには昨年のキーンランドカップ(GⅢ、札幌・芝1200m)の勝利も含まれている。そして、不良馬場となった昨春の高松宮記念で1馬身差の2着に食い込んでいるのだから、彼女の道悪適性は半端ではない。天候というファクターを重視して対抗の1番手としたい。
連覇を狙うママコチャは、逆に道悪が不安材料。2歳時の未勝利戦では不良馬場で3着としているが、以後は稍重の阪神牝馬ステークス(GⅡ、阪神・芝1600m)で9着、重馬場だった今春の高松宮記念で8着と、2度大敗を喫している。この点を割り引いて対抗の3番手に評価を落とした。
土曜までの前売りオッズで断トツの単勝1番人気に推されているサトノレーヴは函館スプリントステークス(GⅢ、函館・芝1200m)、キーンランドカップと重賞を圧倒的な強さで連勝中。芝1200mの実績は〔6・1・0・0〕、中山のコース実績も〔3・0・0・0〕と、データ面からも凄さが分かる遅咲きのスターホースだ。
同馬の父はロードカナロア、母の父サクラバクシンオーという日本競馬を代表するスプリンターの配合という血統面の魅力も十分。GⅠ初挑戦でありながら抜けた1番人気と過大評価のきらいがあることから、本稿でもややランクを下げたが、前走のキーンランドカップで手綱をとったダミアン・レーン騎手を確保し、連続騎乗できるのも好材料。あっさりのシーンがあっても不思議ではない。
その他でマークしておきたいのは、以下の4頭だ。
ウインマーベル(牡5歳/美浦・深山雅史厩舎)は1400mがベストながら、短距離重賞を4勝。前走のセントウルステークス(GⅡ、芝1200m)を鮮やかな差し切りで制し、4つ目の重賞タイトルを手にしたトウシンマカオ(牡5歳/美浦・高柳瑞樹厩舎)。最内枠に入って追い込み一手の脚質が気がかりではあるが、直線の短い札幌のキーンランドカップで3着に食い込んだオオバンブルマイ(牡4歳/栗東・吉村圭司厩舎)。今年1月のセンテナリースプリントカップ(GⅠ、シャティン・芝1200m)を勝ち、高松宮記念で3着に入った実績を持つ香港のビクターザウィナー(セン6歳/チャップシン・シャム厩舎)は”マジックマン”こと、ジョアン・モレイラ騎手が手綱を握り、非常に心強い。
この中で配当的な妙味を考慮するならば、ビクターザウィナーか。今から14年前、単勝10番人気で逃げ切り、日本のファンをあっと言わせたのが香港から参戦したウルトラファンタジーだった。他馬との兼ね合いにはなるが、ハナを切る可能性が高いビクターザウィナーは、その“刺客”のように最後まで先頭で駆け抜けるシーンはあるのか。気になる存在である。
文●三好達彦
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