「やっぱりショートは内野の要なんで」難病と向き合いながら現役を全うしたオリックスの名手・安達了一が後継者に熱いエール【オリ熱コラム2024】

 今シーズン限りでの現役引退を表明していたオリックス13年目のベテラン安達了一が24日の西武戦で6回に代打で途中出場し、そのまま愛着のあるショートの守備についた。打席でも8回にショート内野安打を記録。安達らしいラストゲームだった。

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 盟友のT-岡田とともに行われた引退セレモニーでは「プロ13年間、本当に周りの人に恵まれました。2014年の10月2日、福岡ソフトバンクホークスとの優勝がかかったあの試合、忘れられません。あの試合があり、あの悔しさがあったからこそ三連覇もでき、日本一にもなれました。2016年、病気になり、一時は野球を辞めようと考えました。でも、家族の支え、監督、コーチ、選手、裏方さん、球団関係者、そしてファンの方の声援で続けることができました。あの復帰した試合の歓声は一生忘れません」と伝説の10.2決戦から闘病からの復帰、リーグ優勝、日本一と自身のプロ野球生活を振り返った。

 今年から兼任コーチに就任したが、いろいろと感じるところがあったようで「兼任コーチになったことで、中嶋(聡)監督の凄さを知りました。兼任コーチで9年(やった監督が)、考えられません。正直、兼任コーチになった時、中嶋さんを越す10年はやろうと思っていました。1年で無理でした。偉大な方だなと心から思いました」と日本ハム時代に兼任コーチを9年続けてきた中嶋監督の凄さを痛感したという。

 そんな安達だが「これからのオリックスは、楽しみな選手がいっぱいいます。どんどん強くなります。昨日、目の前で見た胴上げの悔しさを来年にぶつけましょう」とチームにエールを贈ると「そして紅林(弘太郎)にだけ一言。いつまでも先輩に頼っていないで、自分がチームを引っ張ってくれ!」と若きショートの後継者を叱咤。兼任コーチとしてのラストメッセージを厳しい口調で贈るのを忘れなかった。これは「咄嗟に出た」そうで、用意していた紙には書かれていないアドリブだったというのだから驚きだ。

「やっぱりショートは内野の要なんで。しっかりリーダーシップを発揮していってほしいなっていうのを込めて言いました。全然言うつもりなかったんですけど、急に(頭に)出てきて。言ったろうと思って。あいつ結構CSとか日本シリーズとか活躍するじゃないですか。 それなのにシーズンでは……。普通に、調子悪い時もどっしりっていうか、周りを見てやってほしいっていうのはあります。守備範囲はそこまで広くないですけど、肩強いんで、そこは魅力ですけどね。あとは、やっぱり周りを見るっていうことをしっかりやってほしいんですけど。ピッチャーが調子悪かったらすぐに声かけに行くとか、流れを見てそういうことをやってほしい」
  安達はまた、同じタイミングで引退することになったT-岡田への思いも語った。「こうやって切磋琢磨してきたT(-岡田)と引退するとは思っていなかったんですけど、こういうのもなかなかないのでいいのかな。Tがいなかったらここまでできてなかったし、俺がやらかした時に、常に声をかけてご飯に誘ってくれたね。本当に助かった。ありがとう。これからまだどうなるか分からないですが、またTとオリックス・バファローズを強くしたいです」

 そして、ファンへ向けても「最後になりますが、今シーズンで背番号3番のユニフォームを脱ぎます。大した成績を残してない自分を13年間応援していただき、ありがとうございました。本当に最高のプロ野球人生でした。本日はどうもありがとうございました」と、メッセージ。途中、言葉に詰まる場面もあったが、しっかりと最後の挨拶を終えた。

 16年に国の指定難病である潰瘍性大腸炎と診断された安達。病気になる前となった後で、野球に対する価値観が変わったという。

「病気になってからはやる時はやる、休む時はしっかり休むっていうことを学びましたし。 逆に病気になってなかったら、ここまでできてなかったのかもしれないっていうのは自分でも思いますかね。ファンの声援っていうのもすごい力になったんで。 病気になって良かったっていうのはおかしいですけど、いい方向には行ったと思います」

 現役を退いても「野球ができること」に感謝をしながら、安達は野球の楽しさを私たちに伝えて続けてくれるだろう。

文●THE DIGEST取材班
写真●野口航志