世界反ドーピング機関に提訴されたシナーにアルカラスが同情「この状況がすぐに終わり、テニスに集中できることを願っている」<SMASH>

 現在開催中の男子テニスツアー「中国オープン」(9月26日~10月2日/中国・北京/ハードコート/ATP500)でベスト8に進出している世界ランク3位のカルロス・アルカラス(スペイン)。2回戦勝利後の記者会見では、世界反ドーピング機関(以下WADA)から提訴された世界王者のヤニック・シナー(イタリア/23歳)に対して、同情の声を寄せた。

 テニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」によると、シナーは今年3月に出場した「BNPパリバ・オープン」のドーピング検査で禁止薬物が2度検出。暫定的な出場停止処分が科されたが、異議申立てが認められすぐさま処分は解除された。その後の調査でも、違反が故意ではなく過失もなかったと判定され、シナーの資格は停止されずに決着したとされていた。

 ところがWADAはシナーを無実と裁定したITIAに対し、「過失がないという判断は適用規則と照合した上で正しいものではない」として、28日に不服申し立てを決行。「1年から2年の資格停止を求める」としつつ、「この問題は現在CASで審議中であるため、現時点ではこれ以上のコメントを出すことはできない」との声明を発表した。なお既報の通りシナーは「非常にがっかりしている」とWADAの提訴に不満をにじませている。

 現地29日(日)に実施された中国オープン2回戦でタロン・フリークスポール(オランダ/39位)に6-1、6-2で快勝して8強入りを決めたアルカラスは、試合後の会見でシナーのドーピング問題が再燃したことに「驚いた」とコメント。ある種の違和感も禁じ得ないとして次のように話した。
 「ヤニック(シナー)にとってもテニス界全体にとっても、これは本当にデリケートな問題だ。シンシナティの前に全てが決まった後、ITIAはヤニックは何も悪いことをしていないと言っていたのに、ここにきてまたオープンな話題になっている。今回の件はテニス界全体にとって良い兆候ではないと思う」

 その上でアルカラスは、騒動が収束していなかった中で全米オープン優勝という離れ業をやってのけた自身の宿命のライバルに同情の意を示す。

「非常に難しい話だというのはわかっている。彼にとっても難しい問題だ。みんながその件について話しているのを知っているし、ニュースでも取り上げられている。全米の前に彼自身が言ったように、おそらく人々は彼を違った目で見るようになったのだろう。どうしてそうなるのかはわからない。

 それでも、確かに僕は彼の立場を理解しているし、彼の気持ちがわかる。彼が今までに経験してきたこと全てを踏まえると、彼がプレーしている舞台やレベルは信じられない。コートに立って全てのことを差し置いて良いテニスができるというのも信じられないことだ。 

 この状況がすぐに終わり、彼が大好きなテニスに集中し続けられることを願っている。僕が言えるのは、彼の周りの人々や親しい人たち、そして彼が今後数カ月間、つらい思いをしないことを願っているということだ」

 様々な意味で今季最大のハイライトとなるであろうシナーのドーピング問題。果たして一連の騒動はどのような結末を迎えるのだろうか。

文●中村光佑

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