今年5月に旗揚げした女子プロレスの新団体マリーゴールドの魅力は“まだ魅力が定まっていないこと”だろう。
【関連記事】ダンプ松本『極悪女王』大ヒットで令和に全女イズ夢 爆発! 感情移入せずにいられない…昭和女子プロレス黄金期の舞台裏が面白い 代表を務めるのは、かつてスターダムを創設したロッシー小川氏。だがスターダムを退団した選手が主力ということでもない。
マリーゴールドには、これまで数々の人気選手を輩出してきたアクトレスガールズからもトップ選手、有望新人が移籍。さらにスターダム、シードリングなどで活躍するフリーのSareeeがジュリアを下して“真紅のベルト”ワールド王座を獲得している。
大会ごとに新鮮なカードが実現し、その結果が新たな光景を生む。ジュリアがアメリカ・WWE入りしたこともあり、絶対的な主役がいないからこそ面白いのが現時点でのマリーゴールドだと言えるだろう。
8月末からスタートした団体初のシングルリーグ戦「DREAM STAR GP」にもさまざまなポイントがあった。ワールド王者のSareeeが充実した闘いぶりを見せるも、9月28日の最終戦でマリーゴールド初黒星。決勝進出を逃すことに。
Sareeeに勝ったのは旗揚げ戦から強烈なインパクトを残し続ける“大怪獣”ボジラ。ドイツ出身で181cm、91kgの体躯から繰り出す攻撃はとにかくパワフルだ。
強豪ひしめく中でブロック突破を果たしたのは桜井麻衣。アクトレスガールズからスターダムに移籍してきた頃は、ジュリア曰く「何もできない」選手だった。そこからジュリアの元で猛練習に励み、マリーゴールドでは初代タッグ王者に。ジュリアの日本ラストシングルマッチの相手を務めてもいる。
リーグ戦ではSareeeに敗れたものの高橋奈七永、ボジラに勝っている桜井。「もっと強くなりたい、上に行きたい」とスターダム退団と新団体参加を決意した、その覚悟が形になった。
そんな桜井の快進撃を止め、優勝を果たしたのが林下詩美だ。天麗皇希とのブロック最終戦、そして桜井との決勝とパワフルでスケールの大きな闘いを見せた。タックルやラリアット一発で観客をどよめかせるファイトが真骨頂。
決勝では桜井の猛攻に苦しんだものの、トーチャーラックボムを豪快に決めて3カウント。終わってみれば“本命”のひとりが優勝したのだと言える。
林下はスターダム時代に最高峰の“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダムのチャンピオンになっている。
それも“アイコン”岩谷麻優に勝っての戴冠だった。1年以上にわたり防衛を重ねると、女子プロレス大賞を受賞。名実ともに女子プロレス界の頂点に立った。
しかしそこからが長かった。2018年のデビュー時点から“ビッグダディの三女”として注目され、さまざまなベルトを巻いてきた。赤いベルト戴冠は2020年。ベルトを失った2021年12月、彼女はまだデビュー3年あまりでしかなかった。
それ以降はユニットを支え、シングルプレイヤーとしては一歩引いたポジションに。とはいえ“老け込む”にはまだまだ早い。
「自分のために闘う」
そんな思いからマリーゴールドへ。しかしリーグ戦開幕前の記者会見で本人が語っていたように、大きな結果を出すことができていなかった。リーグ戦では、お互いが得意とするラリアットの打ち合いでMIRAIに敗れている。“聖地”後楽園ホールのメインイベントでの屈辱だった。
「これはMIRAIが勝ちたかった、100%の林下詩美じゃない」
試合後にはそんな言葉で叱咤されてもいる。それでも踏ん張り、失点を最小限に抑えて決勝へ。桜井との新鮮な顔合わせが林下本来の力を引き出したように見えた。
少し前までなら林下と桜井の間には明確な実力差があった。しかし桜井の成長が白熱の攻防を生み、林下を刺激したのだ。決勝で桜井と闘えてよかったと林下は言う。新たなライバル関係の誕生でもあった。
次々と新たな光景が展開されていくマリーゴールド。そのリーグ戦でいよいよ“本命”林下が中心に躍り出た感がある。しかし林下自身は、この優勝だけでは「完全復活」ではないという。
試合後はSareeeが持つワールド王座に挑戦表明。
「私には狙わなきゃいけないものがある。Sareeeに勝って完全復活を叫ばせてください」
頂点のベルトを巻いてこそ林下詩美。タイトルマッチは本来いるべき場所に戻るための闘いだ。だがそれだけではない。スターダムに続いての“赤戴冠”となれば、マリーゴールドの景色はさらに更新されることになる。
取材・文●橋本宗洋
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