共に20代前半にして、男子テニスで世界のトップを走り続けるヤニック・シナー(イタリア/世界ランク1位/23歳)とカルロス・アルカラス(スペイン/同3位/21歳)。宿命のライバルとして普段から互いを意識している様子がうかがえるが、2人の関係性はいたって良好であり、オフコートでも非常に親交が深いのが特長的だ。
ちなみに両者は今季、3月のマスターズ1000大会「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ/ハードコート)準決勝と、6月の全仏オープン(フランス・パリ/クレー/四大大会)準決勝の2度顔を合わせており、いずれもフルセットでアルカラスが勝利。通算対戦成績はアルカラスが5勝4敗とわずかに勝ち越している。
シナーはBNPパリバ・オープンの記者会見でアルカラスとの関係性について、オンコートとオフコートでは異なると強調しつつ、次のように話していた。
「カルロスとプレーするのはいつも楽しいよ。コート外では仲が良い。コートの上では、互いに100%の力を出せるように努めるだけだ。僕らは2人ともコート上で良い振る舞いができていると思う」
しかし過去に元世界王者のアンディ・マリー(イギリス/引退)を指導したマーク・ペッチェイ氏(イギリス/元54位/54歳)は、シナーとアルカラスの“友好的すぎる”関係性に物足りなさを感じているようだ。
先日米テニスメディア『Tennis Channel』のポッドキャストに出演した同氏は1980年代のジョン・マッケンロー(アメリカ/元1位)、ジミー・コナーズ(アメリカ/元1位)、イワン・レンドル(チェコ/元1位)らの緊迫したライバル関係に触れ、次のように簡潔に自身の考えを示した。
「アルカラスとシナーがあまり親密になりすぎてほしくない。コート上での友情表現みたいなものは望んでいない。彼らのライバル関係が意味のあるものであってほしい。彼らがコートに歩み出したら、その瞬間から全てが懸かっていると感じてほしい。レンドル対マッケンロー、レンドル対コナーズなどを振り返ると、あの時代が大好きだったと思い出すよ」
ペッチェイ氏と同じような考えを持つ人はテニス界だけでなく、ファンの中にも一定数いるかもしれない。とはいえ時代が変わればライバル関係の形も変わりうる。何はともあれ、今後もアルカラスとシナーの2人が切磋琢磨しながら男子ツアーを引っ張っていってくれることを期待したい。
文●中村光佑
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