「自分は何も悪いことをしていない」世界反ドーピング機関に提訴されたシナーが苦しい胸中を吐露<SMASH>

 世界反ドーピング機関(WADA)に提訴された男子テニス世界ランク1位のヤニック・シナー(イタリア)が、今週出場しているツアー大会「中国オープン」(9月26日~10月2日/中国・北京/ハードコート/ATP500)の記者会見で現在の心境を明かした。

 テニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」によると、シナーは今年3月に出場したマスターズ1000大会「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ/ハード)のドーピング検査で禁止薬物が2度検出。暫定的な出場停止処分が科されたが、異議申立てが認められすぐさま処分は解除された。その後の調査でも、違反が故意ではなく過失もなかったと判定され、シナーの資格は停止されずに決着したとされていた。

 ところがWADAはシナーを無実と裁定したITIAに対し、「過失がないという判断は適用規則と照合した上で正しいものではない」として、9月28日に不服申し立てを決行。「1年から2年の資格停止を求める」としつつ、「この問題は現在CASで審議中であるため、現時点ではこれ以上のコメントを出すことはできない」との声明を発表していた。

 現地9月30日に実施された中国オープン準々決勝でイリ・レヘチュカ(チェコ/37位)を6-2、7-6(6)で下してベスト4入りを決めたシナーは、試合後の会見で自身のドーピング問題が再燃したことについて、次のように苦しい胸の内を明かした。
 「まず第一に、これは自分が望んでいる状況ではない。非常に繊細で難しい問題である上に、通常とは異なる状況に立たされている。唯一わかっているのは、『自分は何も悪いことをしていない』と、自分で繰り返し言い聞かせようとしていることだ。それだけでも心理的に優位に立てる状況を作れると思う。

 ここ最近は眠れない夜を過ごしてきたし、今回の件もまた簡単なものではない。再びこういう状況に立たされていることに失望しているが、ただただ自分の仕事に何とか集中し、プレーする試合ごとにできる限りの準備をしようとしている。確かに今は自分だけでなく、チームにとっても厳しい時期だ。自分だけではなくてチームもこの問題に立ち向かっている。今は自分がうまく付き合っていける人々や、自分のことをよく知っている人々をそばに置いている」

 一連の騒動が収束したと思われていたこともあってか、普段は冷静沈着なシナーもかなり動揺している様子がうかがえる。最低でも1年はプレーが見られなくなる可能性も出てきた中、果たして最終的にはどのような決定が下されるのだろうか。

文●中村光佑

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