バレーボール男子日本代表の主将・石川祐希が10シーズン目に突入したイタリアリーグで自らを磨き上げる戦陣に選んだペルージャ。新天地でのレギュラーシーズン開幕戦を終えた背番号14がインタビューで繰り返し語ったのは、目下の課題だった。
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ペルージャで初の公式戦となったスーペルコッパで、石川は合流からわずか1カ月ながらチームの3連覇達成に大いに貢献。イタリアで念願の自身初タイトル獲得に留まらず、決勝で敗戦の危機から攻守でチームを再起させたパフォーマンスによりMVPを受賞する快挙を果たした。
それからわずか1週間、迎えた難敵ラーナ・ヴェローナとのリーグ開幕戦はホーム開催。周囲の期待を一身に受けての初戦は3-0のストレート勝利を飾ったものの、思い描いたようにいかない場面もあった。とりわけ、攻撃では被ブロックと誤打で4失点を招いた。そこで自らが挙げたのは、司令塔のイタリア代表シモーネ・ジャンネッリとのコンビネーションだった。
「勝たなければいけない相手だったのはそうですが、プレッシャーはスーペルコッパほどは感じていなかったです。スパイクの部分でミスが多かったり、自分の最大限の力で打てていないので、ジャンネッリ選手と上手く合わせないといけないなと…」
同国公営放送の解説者で元イタリア代表のアンドレア・ルッケッタ氏も、ミスが出たシーンでジャンネッリのセットが石川に上手くフィットしていない点を指摘。石川自身も、「1セット目は良かったですけど、後半はトスが低くて打点が低くなって自分の体勢が悪く、ブロックにあたることが多かった」と明かした。
その原因については、「僕はずっと小さいセッターとやってきたので、小柄なセッターに対してのアプローチは分かっている。けれど、長身セッターに対してのアプローチの仕方がまだ全然で、自分のタイミングで入れていないので探り探りというか…(ジャンネッリが)ボールの下に入れていないなと思ってちょっと遅らせても、高いところで取れた球が早く来たりして助走を慌ててしまったりとか。あとは逆に自分が早く入りすぎてジャンプが落ちながら打ったりとか、それでミスしてしまっているところがあるので、そこは合わせないといけないなと思います」とコート上での詳細に言及した。
直近でチームメートのセッターは日本代表でともに数多くの試合をこなしてきた関田誠大(ジェイテクトSTINGS愛知)が175cm、ミラノで3シーズンを一緒に戦ったパオロ・ポッロ(イタリア)は185cm。一方、ジャンネッリは、200cmとその身長差は歴然だ。スピードと高さを生かしたまま納得のいくベストなインパクト。それが常となった時、石川がどんな打球を放つのだろう?と想像するだけで鳥肌が立つ。ペルージャはその経過さえも楽しめる場所なのだろう。
セッターとのコネクションを課題に挙げた石川だが、スーペルコッパでも高い能力を発揮した守備で確実にチームの要となりつつある。
ディフェンス面について問うと、「今日はレセプションを受けた本数が少なかったのですが、前方向でエースを1本取られてしまったのでそういったミスだったり、もうちょっとAパスにできる球もあった。そこは反省点。ディフェンスはそこまで悪くなかったです」といつもながらの厳しい評価のなかで一定の及第点。
チームとしての守備連携の向上を感じたと伝えると、「練習でディフェンスはよく言われているので、その辺は少し形になったのかなと思います」と回答。石川の守備に対する姿勢がチームにポジティブな影響を与えているのは確かなはずだ。
サーブは、「途中にミスはありましたけど、それなりのサーブが入っていたと思うので」と述べた後、「本当に攻撃面で特にハイボールは今日、1本か2本打って決めることができたので、あとはジャンネッリ選手からのトスとの合わせというか、自分のアプローチをもうちょっとうまくできればいいなと…」と目下のテーマが頭から離れることはないようだ。
次戦は、ソネパル・パドヴァのアウェー戦だ。現地前日の開幕戦でルーベ・チヴィタノーヴァに敗れるも、1セットを取るなど接戦を繰り広げた相手との対戦へ、「昨日、チヴィタノーヴァに対して良いプレーをしていたので、しっかり準備したい」との抱負を聞き、インタビューは終了。気がつくと、石川にサインや写真撮影を求めるのを待ち切れず、フロアへなだれ込んだ大勢のファンに取り囲まれていた。その多さに驚いてしまい、いつもお願いする記事用の写真を撮影し忘れる失態。クラブ関係者に頼み込みトレーニングルームで撮影してもらって事なきを得た。
人垣を抜けて声をかけたのは、ペルージャのホーム戦を声で盛り上げるMCを今季から担当するジュゼッペ・バラッタ氏。以前、ある取材先でお会いした際、チステルナ(旧ラティーナ)のMC時代に所属選手であった石川と旧知の仲だと伺っていた。中央大学を卒業して間もない頃のイタリアでの“ユウキ”を知る同氏から、「(チステルナで)別れた後、ミラノ時代にも会うことがあり、そして、ここペルージャでまた一緒に過ごすことになった。彼のことは、もう何年も前から知っているんだ。とても調子が良さそうだよ。数年の間に多大な成長を遂げ、今や国際的トッププレーヤーになった。イタリアリーグに彼がいてくれることは栄誉だと思っている」と嬉しい言葉を受け取り、帰路に着いた。
石川が今回のインタビューで幾度も口にした課題。今後の取材で、その感触の変化や手応えを尋ねていきたい。
取材・文●佳子S・バディアーリ
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