「新しいチャプターが始まっていく大会」
9月29日の『RIZIN.48』(さいたまスーパーアリーナ)について、CEOの榊原信行はそう表現していた。
【関連記事】格闘技界を揺るがした平本蓮のドーピング疑惑…検査結果は“シロ”、それでも疑いの目が消えなかったのはなぜか? 前回の『超RIZIN.3』はイベント史上最大規模の成功。メインは平本蓮が朝倉未来をKOする劇的な結末となった。
だがその後、検査自体は陰性だったものの平本に“ドーピング疑惑”が持ち上がり、大騒動に。また平本に敗れた未来は宣言通り引退を表明している。兄とともにRIZINを牽引してきた朝倉海はUFCと契約しており、現在のRIZINは看板選手の朝倉兄弟を失った形。
つまりここで、RIZINを勢いづける新たな流れ、新たなスター候補の登場が求められていたのだ。
そんな期待に応えるように『RIZIN.48』は盛り上がりをみせた。メインはホベルト・サトシ・ソウザがルイス・グスタボに勝ちライト級王座防衛。海の返上によって空位となったバンタム級の王座決定戦は、井上直樹がタフなキム・スーチョルをレフェリーストップ。
トップ選手たちの闘いが充実する一方で、今大会は新鋭の躍進も目立った。とりわけRIZIN初参戦となる秋元強真のインパクトは凄まじいものだった。
中学生時代にRIZINでの朝倉兄弟を見てMMAを志した18歳。プロデビューから5連勝を飾り、現在は朝倉兄弟率いるJAPAN TOP TEAMに所属する。
朝倉海がセコンドについての大舞台。対戦相手はRIZIN常連の金太郎だった。キャリアからすると格上の相手だが、秋元は1ラウンドでKO勝利を収める。グラウンドに持ち込まれても落ち着いて立ち上がり、左ストレートをクリーンヒットするとパウンド、そしてヒザの連打。圧巻の勝ちっぷりだ。
「いったん、未来さん海さんがいなくなったRIZINを盛り上げるんで」
RIZINの新たな主役として名乗りをあげると、認めてもらえるならタイトルマッチがしたいと自信を語った。さらに2階級制覇も狙っているという。現在のバンタム級は海と同じ。タイトルを獲得すれば、海が巻いたベルトを受け継ぐことになる。
その一つ上、フェザー級は未来が開拓してきた。兄弟を模したリングコール時のポーズも含め、秋元は“後継者”として高かった期待感をさらに高めたと言っていい。強豪ひしめくRIZINだが、秋元もまた年齢からすれば伸び代だらけだ。
もうひとつ、今のRIZINで見逃せないのは外国勢だ。それもアメリカ、ブラジルといった格闘大国以外からの参戦組である。
『RIZIN.48』ではカザフスタンのカルシャガ・ダウトベックが木下カラテをワンパンチKO。南アフリカから初参戦のエンカジムーロ・ズールーは新井丈を連打で仕留めた。フィニッシュに至るラッシュの中で放った、ハイキックからそのまま回転してのバックキックは鮮やかとしか言いようがない。
そしてプロ11戦全勝、オールフィニッシュ勝利のラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)はベラトールでベルトを巻いたフアン・アーチュレッタをタップさせた。
アーチュレッタは前日計量で2.9kgオーバーだったがシェイドゥラエフは試合を受諾。グラウンドで圧倒するとアームバー。連勝と爆発力が語られることの多かったシェイドゥラエフだが、今回は確かな技術を見せつけた。まだまだ強さの“底”が見えない選手だ。
RIZIN新章突入となる9.28さいたまスーパーアリーナ大会は、今後につながる熱に満ちていた。もちろん、秋元やシェイドゥラエフが今すぐ朝倉兄弟がいない“穴”を埋めてくれるというわけではないだろう。
スター性、話題性、ライバルの存在と時期を逃さないマッチメイクなど、興行を引っ張るだけの選手が生まれるにはさまざまな要素が絡んでくる。ただこの日、選手たちから大きな可能性を感じたのは間違いない。新陳代謝の激しいリングは選手にとって残酷で、だから我々は手が離せないのだ。
取材・文●橋本宗洋
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