Blackmagic Design導入事例:Disney+向けドキュメンタリー「Shark Attack 360」の場合

Blackmagic Designによると、VFXスタジオのLittle Shadowが、Ultimatte、DaVinci Resolve Studio、Unreal Engineを使用して、Disney+向けドキュメンタリー「Shark Attack 360」用のバーチャルスタジオを構築したという。

「Shark Attack 360」は、サメの行動に関する真実に迫り、サメが人間を噛みつく理由を調査する番組。Disney+向けの8部構成(各60分)で、National GeographicのSHARKFESTの一環としてリリースされた同ドキュメンタリーは、証拠や個人の遭遇、最先端の視覚効果(VFX)を駆使して、サメの襲撃につながる原因を探る。

ロンドンを拠点とする制作会社Arrow Mediaは、3D VFXおよびグラフィックの作成をVFXスタジオのLittle Shadowに依頼した。その依頼内容には、バーチャル・インタラクティブのサメに命を吹き込む作業に加えて、サメの動きや解剖学を実演するための360°のサメラボの作成も含まれていた。


そのために理想的な撮影場所を見つけることは、シーズン2の映像をより良いものにする上で極めて重要だったという。Little Shadowのサイモン・パーシー監督は、次のようにコメントしている。

パーシー監督:イズリントンにある未完成の地下劇場、コリンズ・ミュージックホールを見つけました。そこは、実写映像とCGIによる360°のバーチャル・サメラボを構築するのに完璧な場所でした。

はじめにLiDARスキャンを使用してミュージックホールの3Dモデルを作成し、プロジェクトの計画とスケーリングを行いました。

ミュージックホールのデジタル複製を作成したことで、綿密な計画と事前の視覚化が可能になり、各ショットを早い段階で作り上げることができたので、撮影と編集を能率化できました。

コリンズ・ミュージックホールは視覚的な要件は満たしていたものの、防音性に欠けており、間取りも問題となった。

パーシー監督:すべての音が反響し、キットの音が増幅されてしまうので、ワークフローの中核となる作業は撮影とは別の階で行うことにしました。その結果、4K信号をBNCケーブルを使用して、100m、4階にわたって送信することになりました。

Little Shadowのスタッフは、従来のLEDボリュームを使用する代わりに、カスタム構築したシステムと市販のツールを併用して、グリーンバックのライブキーイング、カメラトラッキング、ライブモニタリングを行った。パーシー監督は、シニアVFXアーティストのルーカス・ゾルトウスキ氏、撮影監督のマシュー・ベケット氏と連携して、ワークフローを作り上げた。

パーシー監督:ライブコンテンツを撮影してCGIアセットと統合し、バーチャルプロダクション・ボックスで再生してすぐに視覚的なフィードバックが得られる、柔軟なソリューションが必要でした。イマーシブな水中の環境を構築するためにはそれが必須でした。


フライトケースは、Unreal Engine用のカスタムPCと、ライブキーイング用の4Kリアルタイム合成プロセッサー、Ultimatte 12 4Kを中心に構築された。信号管理にはBlackmagic Videohub 20×20 12Gルーター、収録と再生には複数のHyperDeck Studio 4K Pro放送デッキが使用された。

パーシー監督:これは、撮影現場でリアルタイムで意思決定を行ったり、即座に映像をチェックして最適なテイクまたは必要な調整を判断する上で、極めて重要でした。

水中のシーンに命を吹き込むために、グリーンバックとUltimatteを使用することで、AR(拡張現実)のバーチャル3Dエレメントをシーンに統合することができました。これにより、サメがプレゼンターの周りをリアルタイムで動き回るような、より視聴者を引きつける映像を作成できました。

同ハイブリッド撮影において、複雑なカメラの動きを管理することは、彼らが撮影中に直面した最大の課題のひとつだった。特に、髪の毛や、バーチャルのサメが近距離で動く様子などの詳細なディテールにおいて、ライブ映像とバーチャル背景をシームレスにブレンドする細かなトラッキングおよびロトスコーピングが必要となった。

パーシー監督:Ultimatteは、グリーンバックのライブキーイングに不可欠でした。ショット内のバーチャルエレメントに基づいてカメラの動きをガイドでき、撮影現場の全員がそれをリアルタイムで見ることができました。それにより、各シーンでよりクリエイティブなオプションを試す余裕が生まれると同時に、ポストプロダクションに向けての意思を全員で統一できました。

しかし、すべての修正とショットにグリーンバックが含まれたわけではないという。

パーシー監督:ロトスコーピング用のMagic Maskなど、DaVinci Resolve StudioのAIツールは、このような状況において極めて効果的であることを証明してくれました。

私たちはDaVinci Resolve StudioとFusionでより多くのことを試すようになっており、実際により多くの処理をそれらのソフトウェアで行っています。EXRに関しても非常に高速で、すべてGPUアクセラレートなのが素晴らしいです。このプロジェクトの視覚的要素を決定づけ、CGIと実写の境界線を見えにくくさせてくれましたね。