条例の条文をそのままコピペ
なお、後日、筆者の取材に対して南海電鉄の担当者は「実際にどこを消してくれとかいう話は一切していない。
一例として、単価などは非開示にしてほしいとはいったが」とコメントし、文書開示にあたって、具体的な非開示箇所をほとんど指摘しなかったことを認めている。
改めて和歌山市情報公開条例をみてみると、開示しなくていい例外として、第7条1号〜6号までに列挙されているのは、①個人情報、②企業秘密、③意思形成過程の情報、④事業の公正な遂行を妨げるもの、⑤公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報、⑥他の法令又は条例の規定により、公にすることができない情報であり、前出の不開示理由一覧に記載されている内容と、ほぼ一致している。
というか、不開示理由は、条例の条文をそのままコピペしているだけだった。
つまり、和歌山市は、条例で開示しなくていいとされている例外規定を総動員して、文書を黒塗りしてきていることがわかった。
ちなみに、この開示しなくていい例外の「不開示情報」は、和歌山市に限らず、全国どこの自治体の情報公開条例でも、細かい表現は微妙に異なるものの、ほぼ同様の規定が設けられている。
また、国の行政機関を対象とした、行政機関情報公開法にも、表現は微妙に異なるが、こちらも、ほぼ同じ趣旨の規定が見つけられる(図表3)。
こうしてみていくと、国や自治体の情報公開制度は、現場の裁量によって、いくらでも開示拒否できる〝抜け道〞が用意されており、この制度が適正に運用されるかどうかは、開示請求の対象となった事業の担当課職員の情報公開制度についての理解の深さと良識いかんにかかっているといえる。
文/日向咲嗣
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『「黒塗り公文書」の闇を暴く』 (朝日新書)
日向 咲嗣 (著)
2024/10/11990円(税込)264ページISBN: 978-4022952868
情報開示された約1400枚もの公文書。
じつに、その92%が真っ黒に塗りつぶされていた……。
モリカケ、桜を見る会、ウィシュマさん死亡事件など、
国政で大きく騒がれた「黒塗り公文書」が、
いまや地方自治の現場でも日常的に作成され、あたり前のように提示されている。
「民間でできることは民間に」の掛け声のもと、
全国の公共施設の運営が次々と民間委託される一方、
公文書が黒塗りで情報開示される事態が多発しているのだ。
市民が開示を求めた情報をどうして行政は黒塗りにするのか、
なぜ許されるのか?
黒塗りで隠された官民連携の実態に迫る!