ジュニア時代は世界で活躍できても、プロになると大成するのが難しくなるという日本テニス界の課題について、2回にわたり「テクニックの習得」や「目標設定」、「フィジカル面の強化」について紹介してきました。今回は、テニスだけではなく、世界を目指すスポーツをするジュニアが行なうべきことを紹介します。
身体の成長には食事と睡眠がとても大切です。私は子どもの頃からジャンクフードは食べていません。今は制限を持たずいろんなものを口にするようになりましたが、子どもの頃はあれもこれもダメで自由がありませんでした。親とコーチの小浦さんから食事については細かく言われていたので、結果的に成長期のことを考えるとそれが良かったのだと今では思います。
大会期間中も小浦さんがレストランに連れて行ってくれて、しっかり食べていました。成長期にあるジュニアが簡単に食べて夕食を終わらせるのは、身体が資本となるプロになるためには栄養素として不十分になりかねません。
食は急に太くはならないものです。テニス選手の場合、連戦になりますから、たくさん食べられないと体力的に厳しくなります。特に夏は食べられない人が多いですから、常にしっかりと食事が摂れる習慣を小さい頃から付けておくべきです。
また睡眠も非常に重要です。寝ている間に成長して疲労も回復させます。男子テニスの名手フェデラーは1日に9~10時間寝ていたそうです。私も現役時代は9時間寝ていました。2日連続で9時間寝ると、身体が回復しているのがわかりました。
睡眠のゴールデンタイムは諸説ありますが、概ね午後10時から午前2時と言われています。理想は夜の9時に寝て朝6時に起きて活動することですね。ただ、今のジュニアたちは練習終わりが夜になったり、移動に時間がかかったり、車の中で食事を済ませるなど、理想とは離れた生活スタイルになりがちです。本当にプロを目指すのであれば、特に身体的な成長がまだあるうちは、夜にしっかりと睡眠がとれる生活スタイルにすることも考えるべきでしょう。
そして最後にメンタルについても触れておきます。
ジュニア育成に携わっていると色々な質問を受けます。その中で多いのがメンタルの問題で、ネガティブな要素の質問です。私がプロになる前の17歳ぐらいの時は、今までできなかったことができるようになり、楽しくてワクワクしていました。何かに挑戦している時も、ネガティブな感じにはならないものです。それが、今は躍動感のある子があまりいません。見えないプレッシャーと戦っていることが多いのでしょう。
ある程度までは自分が楽しくてプレーしているはずです。しかし、成長と共に自分の意志と親の思いに差が出てくることもあります。そうしたストレスを感じた時には、専門家や経験者に相談するのも一つの解決方法でしょう。ネガティブなメンタルのままでいるよりも、ワクワクメンタルでいた方が成長します。
今まで紹介してきた世界の流れに乗る方法ですが、これは本人の気持ちがなければやっても意味のないことで、心の準備ができていることが重要です。
あと、現代は情報が溢れた世界ですが、自分から必要な情報を取りに行かなくてはいけません。情報を取りに行く意識をジュニア時代から身に付けておいてください。加えて自己アピールを子どもの内からできるようにしておくと、必ずプラスになります。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
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