メルセデスのルイス・ハミルトンはチームメイトであるジョージ・ラッセルがF1アメリカGPで最高のチャンスを得られるよう、スペアが残っていないアップデートパーツを譲ることを申し出たという。
ラッセルは予選Q3終盤、ターン19でスピンを喫し、グラベルに飛び出してバリアに突っ込んでしまった。高速でのクラッシュだったがラッセルは無事。だがこの衝撃でマシンの右側面にダメージを受けてしまった。
今回、メルセデスはアメリカGPにアップデートを持ち込んでいるが、各ドライバーに1セットずつ、計2セットしか新パーツは用意できておらず、スペアパーツは残っていない状態だった。
そのため、ラッセルは決勝レースに向けて旧スペックのパーツへの交換を強いられる。通常、パルクフェルメ下でマシンの使用を変更する場合、ピットレーンからのスタートになってしまうが、今回はスプリントフォーマットでの開催。通常の週末とはルールが異なっており、ペナルティを避けられるのは不幸中の幸いだ。
競技規則第40.4条には、スプリント週末における例外において次のように定められている。
『仕様の異なるパーツ交換の要求は、競技者はパーツが不足していることを証明することができ、交換するパーツが以前に予選やレースで使用された仕様であることが条件として承認される』
しかし当然ながら、パーツのダウングレードはパフォーマンスに影響し、ラッセルが6番グリッドからさらに前を目指すチャンスを制限することになる。
セッション後にラッセルは、Q1敗退を喫したチームメイトのハミルトンが、ラッセルを助けるために自分のパーツを譲りたいと申し出たことを明かした。
「今のところ、心配なのはパーツのことなんだ」と、ラッセルは話した。
「アップグレードについてはまた考えなければならない。ルイスは親切にも彼のパーツを提供してくれると申し出たけど、僕たちは交換するつもりはない」
「だから、これからどうなるかはわからないが、それが最大の懸念だ」
メルセデスは今晩、レースに向けての最善策を検討する予定だが、ハミルトンの申し出を受け入れ、ラッセルが新パーツでレースに臨む可能性は低いと見られている。
ラッセルは、クラッシュは単にペース不足を埋めようとハードにプッシュしすぎた結果だと語った。
「シーズンを通して、マシンがスイートスポットにあるときは、ポールポジションと優勝を争っている」
「昨日はふたりともポールポジション争いをしていたし、今日はふたりともQ1敗退寸前だった」
「最後のラップは、本当にプッシュしていたんだ。最終的には、そこにないパフォーマンスを見つけようとして、その代償を払うことになった。みんながアップグレードのために懸命に頑張ってくれたのに、今それはゴミ箱の中だ」
ラッセルはスプリントレース以降、劇的なセットアップ変更を行なっていないにもかかわらず、2番手となった金曜日のスプリント予選から一転してなぜ難しい状況になったのか不可解だと語った。
「僕たちは答えを持ち合わせていない。僕たちはこういう状況に置かれ続けているからね」
「クルマとタイヤの相互作用が原因だ。気温や風など小さな変化で変わってしまう。でもそれが今シーズンのストーリーだ。パーツが古くても新しくても関係ない。そこ(スイートスポット)に入れるか、コンマ5~6秒遅れるかなんだ」