河村勇輝と好連携を披露!グリズリーズのドラフト2巡目ルーキー、ジェイレン・ウェルズの叩き上げキャリア<DUNKSHOOT>

 メンフィス・グリズリーズの河村勇輝が2WAY契約を締結し話題を集めているが、現地で彼とともに注目されているのが、同期入団のルーキー、ジェイレン・ウェルズだ。

 今年のドラフトでグリズリーズから全体39位指名を受け入団したスモールフォワードは、2003年生まれの21歳。カレッジを3年で終えてのドラフトエントリーだった。

 プレシーズンマッチ5戦を終えて、ウェルズは平均23.1分のプレータイムでチーム3位の14.4点、3.8リバウンドをマーク。単純に得点数だけを見れば、全体9位指名で入団した注目ルーキー、ザック・イディーの12.2点を上回っている。

 学生時代からウェルズが武器とするのはシューティングで、このプレシーズンでも3ポイントシュートは25本中12本成功の48.0%という高い成功率を叩き出している。

 そんなウェルズは、いわゆる遅咲きの選手だ。高校を出て入学したカレッジは、NCAAディビジョン2のソノマ州大学だった。ここで頭角を現わして、2年をプレーしたあとにディビジョン1のワシントン州大への転校を実現させた。

「大学1年生の時に(将来について)聞かれたら、今ごろはソノマで4年目に入る準備をしているところだと答えていたと思う」。そう入団後の会見の席で答えているくらいだから、自身にとってもこの飛躍は予想を上回るものであった。ちなみに、ソノマ州大からドラフト指名を受けたのは、ウェルズが初めてだ。
  2年時の練習試合で、ディビジョン1の強豪校相手にゲームハイの30得点をあげた瞬間、ウェルズの運命はひらけたと当時のコーチは語っている。2年前までディビジョン2の大学でプレーしていた選手がNBAのロスター入りするというのは、稀に見るサクセスストーリーだろう。

 カレッジ1年目は3ポイント成功率26.3%とそれほどではなかったが、夏に徹底的にシューティング練習に励んだことと、チームのロスターがより充実したことがプラス要素となって、2年目は平均22.4点に加え、3ポイント成功率は43.8%に大きく向上。ディビジョン1のスカウトのレーダーにかかる選手となったのだった。

 ワシントン州大のカイル・スミスHC(ヘッドコーチ)は、ワークアウトでウェルズを見た1週間後には、彼がプロになれると確信したとドラフト後のインタビューで語っている。なかでも強く惹かれたのは、試合終盤の局面でビッグショットを決められる才能だという。

「プレッシャーの中での彼のパフォーマンスは非常に有意義だった。プレッシャーがかかる状況下で、真価を発揮できる選手なんだ」

 12日のシカゴ・ブルズ戦でも、ウェルズは119-119と同点の山場で決勝の3ポイントシュートを沈め、勝利に貢献した。 高校時代に身長が20cm近く伸びたことで、ポイントガードからフォワードへとポジションを変えていったことも、彼が幅広いプレーをこなす基盤となっている。ちなみにサクラメント出身のウェルズは、高校時代はキングスのフロントを務めていたセルビア出身の名シューター、ペジャ・ストヤコビッチの息子のアンドレイとよく練習をともにしていたそうだ。

 同じルーキーの河村とは、公開練習日のスキルチャレンジで対戦したり、河村のパスからウェルズがシュートを決めるなど、息の合ったプレーを見せている。クラッチタイムに外から射抜けるウェルズは、河村にとっても使いがいのあるシューターだろうから、シーズン開幕後もぜひ2人のコンビプレーを見たいところだ。
  コート外では、在籍6年目のガード、ジョン・コンチャーにイタズラを仕掛けられた動画がバズっている。まだ2人が対面する前、レストランでウェルズを見かけたコンチャーは、グリズリーズファンを装ってツーショット写真をおねだり。ウェルズはてっきり“ジョン”と名乗るファンと写真に収まったと思っていたが、会計の時に店のスタッフから「今の誰だかわかってた?グリズリーズの選手だよ!」と教えられて、ドッキリだと知ったという。

 そんな愛されキャラの一面も披露しているウェルズ。プレーオフ返り咲きを目論むグリズリーズの、貴重な戦力になりそうだ。

文●小川由紀子