サッカーでは得てして過去の出来事は記憶の隅に追いやられ、選手の評価は直近の試合でのパフォーマンスで左右されがちだ。過密スケジュールが休息を与えず、3、4日ごとに試合をこなすことが当たり前になっている昨今は特にその傾向が強い。
レアル・ソシエダではミケル・オジャルサバルはその最たる例だろう。いうまでもなく正真正銘のレジェンドだが、日曜日のオサスナ戦でも、2点ビハインドで迎えたハーフタイムでオジャルサバルではなく、オーリ・オスカールソンが交代させられたことが分かると、レアレ・アレーナでは頭を抱えるファンが続出した。
程度の差こそあれ、タケ・クボ(久保建英)にも同じことが言える。彼は間違いなく過去2シーズンにおけるソシエダの中心選手だった。1年目は、チャンピオンズリーグ出場の立役者の1人となり、2年目の昨シーズンは、アジアカップ参戦のためチームを離れるまでの前半戦、大車輪の働きを見せた。
そのタケが、今シーズン序盤、スタメンから外れる機会が増えている。オサスナ戦でも、イマノル・アルグアシル監督は、3日前のマッカビ・テルアルビ戦から先発メンバー6人を入れ替えたが、その中で最大のサプライズはタケのスタメン落ちだった。
マッカビ戦でのパフォーマンスが良くなかったのは事実だ。しかしもっと重要なのは、個の打開力においてソシエダにはタケの右に出る者がいないという事実だ。
もちろん定位置争いは激しさを増している。オジャルサバルは、アルグアシル監督にとって必要不可欠な存在だ。今シーズンを含めた過去10年間のキャプテンの功績を考えれば、重用するのは当然のことだ。
オスカールソンは2000万ユーロの大金を投じて獲得した今シーズンの補強の目玉だ。アンデル・バレネチェアは試合を重ねるごとに調子を上げている。しかし、だからといってタケがラ・リーガで前節のジローナ戦に続いてスタメン落ちにすることの理由にはならない。
そのことを証明したのは他でもないタケだった。前述した通り、オスカールソンの代わりに、後半開始と同時に投入されると、わずか15分の間に、4回チャンスを作った。彼のパフォーマンスを疑問視するのはもうやめよう。
【動画】久保が出場から1分で流れを変えたプレー
前線のポジションが3つしかないのであれば、システムを見直したりして対応すればいいではないか。深刻な得点力不足に悩むチームで、これほど攻撃力のある選手を、巻き返しを図らければならない状況で、2試合連続のベンチスタートにするのは、到底理解できない。
もちろんタケは時にスタンドプレーと指摘されることもあるし、判断ミスを犯すこともある。しかしそうした面もひっくるめて、彼はソシエダで別次元の選手だ。
しかも前述の4回のチャンスは、後半開始早々のドリブルからの左足のシュート、その2分後のマルティン・スビメンディのヘディングシュートを演出したクロス、58分のカットインからの左足のシュート、61分の相手DFの隙間を縫って通したブライス・メンデスのシュートをお膳立てしたパスといずれも得点の匂いを感じさせるプレーだった。
しかしタケの健闘もむなしく試合は0-2のまま終了。ソシエダはまたしてもホームで敗れた。
今回の敗戦から学ばなければならないこと、それはタケを軽んじることも疑うこともご法度であること、そして個の打開力という点において、彼を凌駕する選手はソシエダにはいないということだ。
取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸
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