日本代表DFの板倉滉が奮闘するボルシアMGは佐野海舟がプレーするマインツのホームに乗り込んだ試合を1-1で引き分け、勝点1を手にした。
相手に先制点を許したものの、直後にドイツ代表FWティム・クラインディーンストのゴールで同点に追いついた。失点後にリズムを崩すことが少なくなかったボルシアMGにとってこの得点がもたらしたものは非常に大きい。CBとしてフル出場した板倉は次のように振り返っている。
「めっちゃデカかったですよ。あれも個人のクオリティで取ってくれましたけど、去年だったらね、どんどん失点して崩れていくというのがメングラでしたし」
この試合でも、同点後にホームのマインツに押し込まれる時間帯が続く。だが危険なシュートまでは打たせないところに変化が見てとれた。相手のシュートに対して代わる代わるに身体を張ったブロックを見せる。板倉も何度も鋭い出足でシュートやクロスを跳ね返していた。
よくない頃のボルシアMGはそうしたアクションもないまま、「あっさり失点しているというのをやりながら感じていた」(板倉)ことも少なくなかっただけに、これは好材料といえる。
「そうですね。(去年は)そういうのはなかったですね。去年はそのペナ(ルティエリア)周りの頑張りとか、最後のところで身体を張るところとか、そこが手薄だなと感じていた。(いまは)そういうところにCBも行くし、中盤の選手の戻りとかもある。そういう意識は変わってるなというのは感じますね」
【動画】FW顔負け!板倉の豪快な左足ボレー弾
ドイツ紙のビルトが「板倉は前半11回のデュエルで3度しか勝利してない」という統計を持ちだして「だからよくなかった」と結論付けているし、その評価そのまま翻訳しただけの記事も目にする。
だが、それぞれの競り合いがどのような場面で行われ、その競り合いのあとにどんな展開になったのかも考慮されずに、数字だけで選手の評価をするのはよろしくない。
前半、板倉が関わった競り合いのあとにピンチになりそうだったシーンは1度だけ。8分にマインツのドイツ代表FWヨナサン・ブルカルトとの空中戦で相手にフリックを許し、左サイドから相手選手が抜け出しかけた。
空中戦に勝ち切れなかったというのは、もちろんそこでの対処に改善の余地を残すということではあるが、だがCBが空中戦に出た場合は同サイドのSBともう一人のCBが瞬時に下がってこうした流れてくるボールに対する予測と準備をしておくのが守備戦術の鉄則だ。
この場面では、右SBシュテファン・ライナーが少し前がかりのポジションをとっていたこと、ロビングボールに対しての戻りが遅れていたこと、さらにはロビングボールを許してしまった前線の守備が甘かったことなどがもピンチを招いた要因だとなった。
選手は次の次まで予測しながら準備することが必要だし、次の状況でしっかりと対処できていればチームの守備としては機能しているということがいえる。これ以外のシーンではうまく守備で連携できていたプレーも多いし、ほかの選手が競り合いに出た後のボールを板倉が的確に抑えたり、タイミングよく前に出てインターセプトしたシーンもたくさんあったのだ。
「もっとラインを揃えたりとか、もうちょっとコンパクトにできれば、後ろの選手もタイトに行けるかなというふうに思っていましたけど、そこはやっぱり課題かなと。そこはもっとやっていかないといけないかなと。それでもみんながコミュニケーションをとりながらポジティブなエネルギーを感じながらやっているので、それは大きいんじゃないかなと思います」
勝てなかったことを考えると、半歩前進かもしれない。でもこうした積み重ねをチームで共有して、不満を飲み込み、高め合うことを続けていく。それがシーズンを通したときの大きな一歩になると信じて。
取材・文●中野吉之伴
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