[北中米W杯アジア最終予選]日本 1−1 オーストラリア/10月15日/埼玉スタジアム2002
埼玉スタジアム2002で取材した試合の中でもっとも強烈に覚えているのが、2016年の日本対イラク戦(ロシア・ワールドカップのアジア最終予選)だ。
1勝1敗で迎えた最終予選3試合目、日本は苦しみながらも山口蛍の劇的な決勝弾で勝利を収めた。そのゴールが決まった直後の“地響き”を肌で感じたのは記者人生で初めての経験で今でもスタジアムが揺れたあの感覚は覚えている。ただ、それ以上に記憶にこびりついているのはミックスゾーンでの本田圭佑の言葉だ。
本田は少し昂った声でこう言った。
「本当はこっちが向こうをバカにしたいんです。ただ、あまり戦術的に求められていない。そういうところは僕やヤットさん(遠藤保仁)の真骨頂なんですけどね。僕もその辺のスピーディーさが欠けるとか、いろんな意見があるんでしょうけど、アジアレベルで言えば徹底的に相手をバカにするプレーを得意としている。
でも、それは(ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の日本代表では)今求められていない。怖い攻撃をもっと増やしていこうというところが今の代表のテーマなので、それはそれで前向きにチャレンジしたいという気持ちで臨んでいる。自分になかったところなのでね。別に否定的ではないですよ。でも、本来はイラクみたいな国が僕たちを必要以上にリスペクトしていないのは腹立たしい。本当は向こうがうざいと思うくらい回さないといけない」
確かに当時は日本へのリスペクトが薄まっているようだった。しかし、本田の衝撃発言から8年の時を経てのオーストラリア戦では、相手がうざいと思うくらい日本はボールを回していた。
ボール支配率は62パーセントで、シュートは13本(オーストラリアは1本)とこうしたデータ上は日本が圧倒。結果は1-1と褒められたものではないが、内容を見ればポジティブに映る部分もある。日本の強さを認めているからこそオーストラリアは守備的な戦いをしたと、そんな見方もできるはずだ。
取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)
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