[J1第35節]川崎 1-3 鹿島/11月1日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
完敗と言えるゲームであった。
J1の35節として等々力で鹿島と対戦した川崎は前半のうちに3点を失うと、試合終盤に山本悠樹のFKで一点を返すも力なく敗戦のホイッスルを聞いた。
鬼木達監督が嘆いたように、前半は厳しい内容だった。
中後雅喜監督の下で再出発して2試合目の鹿島に序盤から激しいプレスをかけられると、球際で競り負け、ミスも連発。するとボールを受けるのが怖くなった部分もあったのか、後方からのポゼッションでノッキングを起こし、攻撃の形を作れなかった。
逆に失点シーンではレフェリングに気を取られた面もあったのか、緩慢な対応を続けてしまったように映る。
ハーフタイム、指揮官から叱咤激励されたのだろう、後半は前に出て決定機も作ったがモノにできずにいると、終盤は5バックで試合を締めにかかった鹿島を追い詰めることができなかった。
キャプテンの脇坂泰斗の前半での負傷交代の影響も小さくなかったのだろう。足を痛めたあとも「まだやれる」とファイティングポーズを取りながら無念の交代となった主将の姿も忘れられない。それでもホームでの一戦としては、不甲斐ない出来だったと言わざるを得ない。
10月16日の鬼木監督の今季限りでの退任発表後、前節のG大阪戦は小林悠の劇的同点弾で1-1のドローに持ち込むも、続くACLのアウェー・上海申花戦は立ち上がりのマルシーニョの一発退場も響き0ー2の敗戦。そしてこの日の鹿島戦での黒星だ。
8年指揮を執った“オニさん”の退任、来季への不安、10位という順位的なモチベーションなど、チームは今、非常に難しいメンタルを抱えているのだろう。それは十分に理解できる。整理がつかない想いもあるはずだ。
【動画】川崎×鹿島のハイライト
ただ、外部が勝手なことを、と言われるのは百も承知だが、残りのリーグ4試合とACLエリートの1試合、これまでチームのことを考え抜き、先頭で引っ張り続けた“オニさんのために”と一致団結して魂のこもった戦いを見せられないものか。川崎の選手として意地を示せないものか。
やや根性論にもなってしまうが、スタジアムに集った人々は、この日の鹿島戦のような内容を見に来たわけでないことは間違いない。
改めて選手各々は様々な想いを抱えているだろう。周囲からの声、情報も聞こえてくるはずだ。戦術的な要素も複雑に絡んでいるだろう。でも、数々の歓喜に彩られた“鬼木フロンターレ”が、このまま寂しい内容で幕を閉じてしまうのは、悲しすぎる。
個人的にもそんな結末は見たくない。鬼木監督の下では観衆を魅了することに情熱を傾けながら、何より、戦う姿勢で観てくれる人たちの心を揺さぶり、感動を呼んできたはずだ。
決して綺麗でなくても良い。これがオニさんに教えられてきたことなんだと意地を示す。それこそ多くの人が待ち望んでいる姿なのではないだろうか。今の選手たちはそれを表現できる力を持っているはずである。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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