森永卓郎(C)週刊実話Web
10月27日に行われた解散総選挙は、与党が64も議席を減らし、石破茂首相が掲げた「与党で過半数」を達成する233議席を18も下回るという与党惨敗に終わった。
今回の総選挙は「政治とカネ」の問題が焦点だといわれ、実際、いわゆる裏金議員が続々と落選するという形で大きな影響が出たことは事実だ。
ただ、注目すべきは政策面での有権者の判断だ。
国民民主は選挙前の7議席から28議席と4倍増、れいわ新選組は3議席から9議席へと3倍増という躍進を果たした。
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国民民主はデフレが続く限り消費税を5%に引き下げる公約を掲げ、れいわは消費税そのものの廃止を訴えた。
物価高で国民生活が厳しくなる中で、減税への強いニーズが鮮明になったのだ。
当面の焦点は11月11日に召集予定の特別国会で、誰が総理に指名されるかだ。
論理的には三つの可能性がある。第一は野党連合だ。非自公だけで連立政権を作る。すでに立憲(民主党)、国民、維新は可能性を探る調整に入っているが、不調に終わるだろう。
例えば立憲と維新、国民民主は安全保障や原発政策で大きな隔たりがある。また、3党合計の議席数は214で、過半数まで19足りない。共産党やれいわを政権に加えることには抵抗が強いから、連立は事実上困難なのだ。
第二の可能性は、自民と立憲の大連立だ。今回の総選挙で両党は緊縮政策で足並みを揃えており、政策的には一番安定する。
しかし、立憲は政権交代を掲げて選挙を戦ったのだから、大連立は有権者への裏切りになるし、立憲の野田佳彦代表も自公との連立を否定している。
次の自民党総裁は反財務省か、親財務省か
そして第三の可能性は、自公政権に新たな政党を加えることだ。
可能性としては、38議席の維新か28議席の国民民主との連立だが、維新は公明と安全保障政策が大きく異なるため、連立に取り込むことが難しい。
一方、国民民主は玉木雄一郎代表が会見で連立参加を完全否定しており、こちらも連立参加は難しい。
ただ、補正予算を早急に成立させないといけないので、最終的に国民民主が政策ごとに協調する「パーシャル連合」になる可能性が高いだろう。
その際の取引条件は、国民民主が掲げてきた基礎控除などの控除額を103万円から178万円に引き上げる減税策になるのではないか。
本来、国民民主は、公約に掲げた消費税減税を取引材料にすべきだが、その壁が厚いことを元大蔵官僚の玉木代表は分かっているから、無理はしないだろう。
今後起きるもう一つの変化は、石破降ろしだ。
これだけの惨敗をもたらした総理の責任追及は避けられない。かなり近い時期に両院議員総会で新たな自民党総裁が選ばれることになるだろう。
その際、一つの軸は高市早苗元経済安保大臣で、対抗馬は不明だが、例えば加藤勝信元官房長官ではないか。
反緊縮対緊縮、反財務省対親財務省の戦いが行われるのだ。その闘争で、自民党は分裂しかねない。
それはよい変化だ。それぞれの政策に沿った政界再編が進めば、今後の総選挙で国民は緊縮か反緊縮を選ぶだけの政権選択が可能になるからだ。
「週刊実話」11月21日号より