『イット・フォローズ』が6年ぶりに都内で上映!製作から10年、先進的ホラーの魅力を再確認

映画宣伝の謳い文句として“新感覚”というワードが頻用されるようになって久しいが、『イット・フォローズ』(14)ほどそれが似合う作品はないだろう。第67回カンヌ国際映画祭でお披露目されるや、その斬新な設定で世界中の批評家から絶賛を獲得。クエンティン・タランティーノやジョン・カーペンターら名だたるクリエイターたちからも絶大な支持を集めた本作が、11月9日(土)夜にグランドシネマサンシャイン 池袋で上映される。


【写真を見る】性交渉で感染する恐怖…様々な姿でゆっくり近付く“それ”から逃れる方法はあるのか / [c] 2014 It Will Follow. Inc.
19歳のジェイ(マイカ・モンロー)は、好意を寄せるヒュー(ジェイク・ウィアリー)と映画館でデートをし、一夜を共にする。ところが気が付くと彼女は、廃墟で下着姿のまま椅子に縛られていた。近付いてきたヒューはジェイに「“それ”を君にうつした」「“それ”に殺される前に誰かにうつせ」と告げる。その日を境に、ジェイは姿かたちを変えてゆっくりと迫ってくる“それ”の恐怖に苛まれることとなる。

『アメリカン・スリープオーバー』(10)で現代アメリカの地方都市の若者たちのリアルな青春群像を描写したデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督が、自身の子どもの頃に見た悪夢をきっかけに着想したという本作。ショッキングなシーンは確かにあるものの、いわゆるジャンプスケアを用いることなく、画面づくりの雰囲気と、そのなかに異物のように混入する“それ”の違和感のみで恐怖を作りだしていく。


様々な時代のホラー映画にオマージュを捧げながら、斬新な設定で現代的な青春ホラーに! / [c] 2014 It Will Follow. Inc.
1980年代のホラー映画を彷彿とさせる緊張感のある音楽に、“それ”へ立ち向かう若者たちの姿を通して描かれる1990年代のティーンスリラー映画のような瑞々しさ。ミッチェル監督も様々な時代の数多くのホラー映画から影響を受けたことを明言しており、なかでもじわじわと迫る恐怖と“誰かにうつす”ことで解放されるという呪いのルールは、Jホラーの金字塔である「リング」シリーズを彷彿とさせる。あらゆる時代、あらゆる国で生まれたホラーのエッセンスがこの一本に集約され、先進的な現代のホラー映画として生まれ変わったのだ。

現在ミッチェル監督は本作の続編となる『They Follow』の制作を準備中。現地メディアの報道によるとジェイ役のマイカ・モンローが続投し、年内にも撮影が開始されるとのことだ。まだ完成時期や日本公開の時期、ストーリーなどは明らかになっておらず、続報が待たれるところ。


「レジェンドホラー映画祭」は11月8日(金)からグランドシネマサンシャイン 池袋で開催!
アメリカのホラー映画界に新たなルールを持ち込み、後進の作品に多大な影響を与えた本作を、再びスクリーンで観られる機会がまもなくやってくる。それは11月16日(土)に「第3回日本ホラー映画大賞」の授賞式が行われることを記念して11月8日(金)から11月14日(水)にかけてグランドシネマサンシャイン 池袋にて行われる「レジェンドホラー映画祭」だ。

「日本ホラー映画大賞」の選考委員に実施した「未来のクリエイターに観せたい名作ホラー」というお題のアンケートで、映画ジャーナリストの宇野維正が推薦した『イット・フォローズ』は11月9日(土)18時半より上映。上映後には宇野によるトークショーも実施される。チケットは現在グランドシネマサンシャイン 池袋の公式サイトにて発売中。この貴重な機会に、スクリーンで“それ”の恐怖を目撃してみてはいかがだろうか。

文/久保田 和馬