兵庫県たつの市の路上で2006年9月、小学4年の女児(当時9歳)が胸や腹などを刺されて重傷を負った事件を捜査していた県警捜査1課は11月7日、別の女児殺害事件で無期懲役判決が確定し服役中の勝田州彦(かつた・くにひこ)受刑囚(45)を殺人未遂容疑で逮捕した。勝田容疑者は加古川市で2007年10月に起きた小学2年の鵜瀬柚希(うのせ・ゆづき)ちゃん(当時7歳)刺殺事件についても犯行をほのめかしており、同課で調べを進めている。
第一審で「私は殺害してない」と主張するが…
たつの市の事件は2006年9月28日午後6時20分ごろ、塾から自転車で帰宅途中の小4女児が刃物を持って近づいてきた男に路上で胸などを刺され、重傷を負った。女児は塾に逃げ込み、一命を取りとめた。
「勝田容疑者は岡山県津山市で04年9月に起きた小3女児殺害事件で2018年に逮捕され、昨年9月に最高裁が上告を棄却して無期懲役刑が確定しました。
たつの市や加古川市の事件を捜査していた兵庫県警は手口が酷似していることなどから刑務所に捜査員を派遣、任意の聴取を続けていたところ、勝田容疑者が今年に入って両事件に関与したとの供述を始めたのです。
たつの市の事件に関しては現場近くの防犯カメラに黒いバックパックを背負った男が走り去る姿が映っており、これが勝田容疑者の特徴と一致。また、刃物で女児を刺した回数や場所、角度などについて具体的に供述し、これが解剖所見と矛盾がなかったため容疑が強まったとみて県警に身柄を移し、逮捕しました。県警は当然、加古川の事件について殺人容疑で再逮捕することを視野に入れています」(兵庫県警担当記者)
加古川市の事件は2007年10月16日午後6時ごろ、帰宅した柚希ちゃんが自転車を自宅裏に置いて玄関先に向かう途中に発生した。
悲鳴を聞いた姉や妹、母、祖母が瞬時に飛び出すと玄関先で柚希ちゃんは「痛い、痛い」と立ち尽くしており、家族からの通報で駆けつけた救急車で県立こども病院(神戸市須磨区)に搬送されたが、午後7時46分に絶命した。鋭利な刃物で左胸と腹を刺されたことによる失血死だった。
抵抗する間もないほどの一瞬の犯行で、柚希ちゃんは刺されたことに気づかなかったのか搬送中、救急隊員らにこう声を振り絞った。
「おとなの男のひとに、たたかれた」
岡山県津山市の事件でも、被害者は胸や腹を刺され、大量出血のうえ亡くなっている。
この事件で勝田容疑者は「女児の命日が来るたびにネットで調べて自分の犯行とバレていないことを確認していた」などと供述。
しかし殺人や強制わいせつ致死などの罪に問われた岡山地裁の第一審では、捜査段階での自白を「死刑が怖かった。嘘をついて認めれば罪が軽くなると思った。私は殺害していない」などと言を翻し、弁護側も「遺留品など犯行に結びつく客観的証拠が一切ない」と主張。
しかし、裁判員裁判で行われた一審は自白の信用性を認めて求刑通りの無期懲役の判決を言い渡し、二審の広島高裁岡山支部もこれを支持して控訴を棄却、即日上告を受けた最高裁が昨年9月7日付けでこれを棄却し、刑が確定していた。
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2009年に姫路で6歳、2015年には中学生にも…
♯1でも報じたが、勝田容疑者の同種の“前歴”は凄まじい。
2000年に11歳女児の腹部を殴った疑いで逮捕され、当時の報道によると余罪約70件を自供。2009年には姫路市で6歳の女児の腹を殴ったとして逮捕、そして2015年に同市で14歳の女子中学生の腹を刺し、殺人未遂容疑で逮捕され、懲役10年で受刑している。
逮捕したのはいずれも兵庫県警だ。その兵庫県警の協力を得て、岡山県警が津山の殺人事件で勝田容疑者を逮捕したのが2018年。そして無期懲役で収監中に今回、シャバに出ていた「空白期間」の事件がようやく掘り起こされた。
勝田容疑者の犯行の根底にあるのは、「血」に対して異常な性的興奮を覚える性癖だろう。2015年の女子中学生殺人未遂事件の一審判決はこう認定している。
「被告人はかねてから、自己の腹部をシャツの上からクラフトナイフ等で刺し、これが血に染まるのを見ながら、少女が腹部から血を流しているのを想像して性的興奮を覚え、強い行為を行うという特異な性癖を有していた。
しかし、本件前に、腹部を刺しすぎて入院し、医師からもう刺すことはできない旨告げられたことから、これ以上自傷が不可能なら、現実の少女の腹部を刺したいと考えるようになり、好みの女子を探してその腹部を刺そうと決意して、犯行に及んだ」
たつの市の殺人未遂事件について勝田容疑者は「殺すつもりはありませんでした。女の子を刃物で刺したのは間違いありません」と供述しているという。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班