森保ジャパンで選外が続くAZ毎熊晟矢は今、何を思う?「ただ、こなしているだけでは行けない場所」に戻るため、120%の出力でやり続けるしかない【現地発】

 11月7日のヨーロッパリーグ(EL)、ホームにトルコの名門フェネルバフチェを招いたAZのスタメン平均年齢は22歳を超す程度。交代出場の選手5人も全員18歳から22歳までだった。

 ゴールを決めたのは途中からピッチに入ったフレッシュな面々。ロ・ザンゲロ・ダール(20歳)、ケース・スミット(18歳)、デンソ・カシウス(22歳)が次々に得点。PKのピンチにはGKオブス・オドゥロ(20歳)がビッグセーブでチームを救った。こうしてAZは3-1でフェネルバフチェに快勝した。

 毎熊晟矢は鼠径部辺りを痛めて88分でベンチに下がった。相手に蹴られた額にはスパイクの跡と大きなタンコブがあった。「大丈夫です」。先月、27歳になったばかりの右SBはそう言って記者を一安心させた。

「試合前に監督と、自分が最年長という話もして、チームを落ち着かせる役割や、盛り上げて士気を上げることもしないといけない、と思ってました。アップの時から『行こう、行こう!』と声がけにも挑戦しながらやりました」

 この試合の5日前、フェイエノールトとの大一番(2-3)ではポジションをカシウスに譲り、出番のなかった毎熊にとって、フェネルバフチェ戦には期するものがあったはずだ。

「もちろん、試合に出られなかったことは悔しかったですけれど、それよりもチームが(9月5日、対ヘルシンボリ以来)しばらく勝ってないことが頭にあったので、そういう時は試合に出てない選手が盛り上げていくことが大事だと思ってました。

 フェイエノールト戦翌日の練習は、スタメン組はリカバリーでしたが、『試合に出てない組』の練習は自分自身、気合を入れてやりました。それが今日の試合に繋がったと思います」
 
 フェネルバフチェ戦の3ゴールは全て鳥肌が立つようなゴラッソばかりだった。59分の先制弾は中盤でパスミスをしたペール・コープマイナースが自身でボールを回収し、そこからチーム全体でハーモニーを奏でてパスを回しながら、要所で個人技を織り交ぜて相手を崩しきり、トップチーム初出場のダールがゴールを決めた。

 熊自身も中盤に上がって味方をフォローし、CFトロイ・パロットに縦パスをつけることで、チームとして奪った“ゴール”という名の作品に絡んだ。

「練習の時から、失った後の切り替えの速さをすごく言われてます。そこはうまく彼(コープマイナース)が取り返してくれた。僕にボールが来た時に後ろに戻す選択肢もあったんですけれど、やっぱり前につけるのが大切。トロイもうまく僕のパスを引き出してくれました。そこからはみんなのクオリティの高さで点が入ったと思います」

 チームとして再び上昇気流に乗りそうな圧巻の勝利だった。

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 毎熊が日本代表の初キャップを刻んだのは昨年9月、アシストも記録したトルコ戦(4-2)。それからおよそ半年間、森保ジャパンに定着し8試合に出場したが、昨冬のアジアカップを最後に代表から遠ざかっている。北中米ワールドカップ・アジア最終予選でインドネシア、中国とアウェーで戦う11月シリーズにも毎熊の名はメンバーに入ってない。

「代表に選ばれている人たち全員がクラブで80%、90%のパフォーマンスをしているわけではなく、本当に120%くらいの(力を発揮して)活躍をしている選手ばかりです。僕もオランダに来て、ヨーロッパリーグで強いチームとやる機会があります。そういうレベルの中でも個の力を発揮している選手ばかりなので、僕にもそういうところが必要になってくると思います。代表は『ただ、こなしているだけでは行けない場所』だと思ってます」

 現在の日本代表の強さを毎熊はどう見ているだろうか。

「僕が言う必要がないくらい、見て分かると思います。まずはクオリティが高い選手が多いというのと、その中で全員が自己犠牲でき、チームのためにハードワークできるというのはすごく大きな部分です。今はフォーメーションを変えてみんながいろんなことにトライしていると思います。一体感や、チームとしてやるべきことが統一されていることを感じます。

 監督・スタッフのみなさんがしっかり提示し、選手の意見も取り入れながら、勝っても満足せず、よりクオリティを上げるためにやっているんだなと、僕は行けてませんが感じてます。悔しいことは悔しいですけれど、選ばれてないことに対して、不満というのが全くない。自分はもっとやらないといけない。だから自分にフォーカスしてやるしかない」
 
 毎熊の言う通り、全員が自己犠牲でき、チームのためにハードワークできる集団が今の日本代表だ。代表に選ばれてもピッチに立てるのは限られた選手たち。10月シリーズの田中碧のように突然、出番が巡ってきてもパフォーマンスを発揮するなど、準備を怠らない。選出から漏れた選手たちのクオリティも高い。11月シリーズで負傷した上田綺世の代わりに入るのは、1年ぶり復帰の古橋亨梧だ。

「僕も去年から半年くらい代表に行かせてもらいました。試合に出られない時も、もちろん自分は準備してました。そもそも、準備をしてない選手がいない。常にチャンスが来た時のために出てない選手たちが行動していたので、パッと出ても問題のない選手ばかりなのかなと思います」

 欧州各地に、日本の至るところに、来る日のために準備を怠らない選手たちがいる。そこが今の日本代表の強みの一つなのだろう。

取材・文●中田 徹

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