47年ぶりに奇跡の上映!子どもが大人を殺しまくる、封印された“トラウマホラー”『ザ・チャイルド』とは?

なかなか観る機会がない作品ほど、映画ファンの心をくすぐるものはないだろう。そういう作品ほど、VHSからDVDへ、DVDからBlu-rayへなどメディアが移り変わるタイミングで突然“観る機会”が訪れるもの。近年では4Kリマスターというかたちでデジタル化され、公開当時に限りなく近い状態に修復されて再発信されるケースが多々見受けられ、“ようやく観られる”という喜び以上に、時代を遡ったかのような不思議な映画体験をもたらしてくれる。


【写真を見る】子どもたちが無邪気に大人を虐殺…言葉を失うほどショッキングな超問題作 / [c] 2008 Video Mercury Films S.A.U
ナルシソ・イバニエス・セラドール監督の『ザ・チャイルド』も、長らく鑑賞機会が乏しかった一本だ。1976年に製作され、翌年に日本公開。その後テレビ放送されただけでソフト化はされず、2001年にVHSとDVDがリリースされるもすぐに廃盤となり、2008年に30周年記念でスティングレイからリリースされたDVDも廃盤。レンタル化もなければ当然配信サービスにもない。「子どもたちが群れをなして大人を襲う」という衝撃的なストーリーだけが一人歩きし、いつしか“幻の名作”として語られるようになっていた。


スペインらしい煌々と照りつける太陽の下、残虐なシーンが次から次へと繰り広げられる / [c] 2008 Video Mercury Films S.A.U
バカンスでスペインを訪れたイギリス人夫婦が、祭をやっている町の喧騒から逃れるように静かな島アルマンソーラへ上陸する。ところがその島には子どもたちしかおらず、大人たちの姿が一切見えない。劇中では子どもたちが大人を襲う理由として「戦争によって子どもたちが犠牲になっている」という問題提起がされているのだが、それにつけてもあまりにもショッキングな描写が連続し、どんな戦争映画よりも凄惨な光景が待ち受けている。

なんといっても本作のおぞましさを増幅させているのは、薄暗いところで繰り広げられがちなホラー映画の常識をまんまと覆し、“情熱の国”スペインらしいカンカン照りの太陽のもとで展開すること。“サスペンスの神様”アルフレッド・ヒッチコック監督の名作『鳥』(63)を彷彿とさせる不条理な恐怖は、製作から半世紀近く経ったいま観ても色褪せることなく、夢見が悪くなること間違いなしだ。


イギリス人夫婦の妊娠中の妻イヴリンにも子どもたちの魔の手が… / [c] 2008 Video Mercury Films S.A.U
2018年にアメリカのレーベルが制作した4Kリマスターをさらにレストアしたバージョンで、2021年にスティングレイから国内盤Blu-rayがリリースされた本作。日本では初公開時からスペイン語吹替版でしか上陸していなかったが、この時初めて制作者が意図したオリジナルの英語音声が収録。映像面での美しさはもちろん、音声言語という基本的な部分も本来あるべき姿に戻り、ようやく“幻”が正しい状態で日の目を見ることとなった。

11月16日(土)に「第3回日本ホラー映画大賞」の授賞式が開催されることを記念し、11月8日(金)から11月14日(木)にかけてグランドシネマサンシャイン 池袋で行われる「レジェンドホラー映画祭」では、この『ザ・チャイルド』が英語音声の4Kリマスター版で劇場上映される。こちらはなんと、初公開以来47年ぶりの上映となるそうだ。


「レジェンドホラー映画祭」で11月11日(月)に上映!清水崇監督のトークショーも
「日本ホラー映画大賞」の選考委員に実施した「未来のクリエイターに観せたい名作ホラー」というお題のアンケートで、選考委員長の清水崇監督が本作を推薦。上映が行われるのは11月11日(月)の18時半~で、上映後にはトークショーのゲストとして清水監督が登壇予定。「呪怨」シリーズや『こどもつかい』(17)、『あのコはだぁれ?』」(12月4日Blu-ray・DVD発売&デジタル配信開始)などの“子どもが怖い”映画を手掛けてきた清水監督が、本作についてなにを語るのか注目せずにはいられない。

チケットは現在グランドシネマサンシャイン 池袋の公式サイトにて発売中。47年間も待ち臨まれた貴重な上映機会。是非とも足を運び、スクリーンで伝説を目撃してほしい!


「第3回日本ホラー映画大賞」は11月15日(金)に入選作上映会、11月16日(土)に授賞式が開催

文/久保田 和馬