日本代表は北中米ワールドカップ・アジア最終予選の第5節でインドネシアと敵地で対戦し、4-0で快勝した。
難題が目一杯詰まった典型的なアウェー戦だった。
熱狂的な大観衆を呑み込んだスタジアムのピッチをスコールが叩きつけ、両国ともに欧州組を中心にプレーをした。
もちろん、ピッチコンディションは平等だ。インドネシア代表のスタメン組も、自国クラブでのプレー経験を持つのはふたりだけなので、際立った利点はなかったかもしれない。しかし、アクシデントを誘発する条件は十分に揃っており、もしそれを歓迎するなら弱者のほうだ。
実際、インドネシアはボールの弾み具合の意外性などを味方に、最初のビッグチャンスを作った。終わってみれば、日本の強さばかりが印象づけられたゲームだが、ホームチームにもいくつかゴールへの予感がちりばめられた。
日本は主にピッチの左半面で優位に立った。守田英正が最後尾まで落ちて町田浩樹を上げて幅を取らせることもあり、鎌田大地が適宜サポートに出て流動性が生まれた。
とりわけ左半面のビルドアップに安定性をもたらしていたのはレフティの町田で、伊藤洋輝が復帰しても簡単には覆らない信頼度を築きつつある。インドネシアは、状況ごとにフリーな位置に顔を出す守田や鎌田を掴まえることができず、それが先制点や3点目に繋がった。
一方、左ウイングバックでスタートした三笘薫は、フィオレンティーナでの在籍期間が長く、現在はコペンハーゲンでプレーするケヴィン・ディクスと対峙することになり、当初、守備面での対応に苛立ちを見せていた。結局ディクスは故障で退くことになるのだが、三笘はボールに無関係な局面で珍しく不要なファウルをして警告を受けている。
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三笘が持ち味の切れ味鋭い突破を見せるのは、ウイングバックからシャドーにポジションを移した後半の1度だけだった。だが縦への仕掛けが封じられても、もともとアカデミー時代にはボランチも経験した構築能力や技術の精度は活かされ、より内側のレーンでボールを受けたこの試合では、南野拓実のチームの2点目をアシストした。
それに対し、前半は攻撃の停滞が目立ったのが右半面だった。3バックの左CB、左ボランチ、左ウイングバックと3つのポジションにレフティを起用したインドネシアと比べても、バランスでは劣った。
右ウイングバックの堂安律は、対峙する同ポジションの選手に寄せられると個では打開が難しい。それでもシャドーに同じレフティの久保建英がいればポジションチェンジなどで流動性が生まれるのだが、南野との効果的な連係はほとんど見られなかった。
その点で森保一監督は、後半に入り効果的な修正を施した。ゴールを決めていても南野を下げて、左ウイングバックとして前田大然を送り出す。さらに堂安に代えて右利きの菅原由勢を起用し、鎌田を左から右のシャドーに移動させた。
三笘が背負う守備の負担は前田が十二分にカバーし、さらには右からもポケットを取る攻撃が生まれ、菅原が豪快なゴール。加えて終盤ながら、これまで出番のなかった旗手怜央と大橋祐紀にもプレー機会を与え、オフサイドのミスジャッジはあったが決定機が生まれた。
招集してトレーニングを重ねるだけではなく、こうした戦力のモチベーションを維持し経験という栄養を補給するのも、当然監督の重要な役割である。
おそらく自国リーグ同士を比較しても、両国には大きな格差がある。3シーズン前には、中央大卒業時にJクラブから声がかからなかったという丸川太誠が、インドネシアリーグのMVPを獲得したそうだ。
つまりインドネシアは、同国の日常では拝めない異次元のドリームチームを作って予選に臨み、それが空前の熱狂の理由だ。このやり方が、どこまで継続的に同国の発展を後押しするかは未知数だ。しかし大半がエールディビジで経験を積んだ帰化選手たちは、まだ若く発展途上。今後、個々の経験次第では、侮れない相手に変貌していく可能性はある。
取材・文●加部究(スポーツライター)
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