テレビで魚の旅、つまり回遊魚について解説していました。
回遊魚とは、決まった季節や時期に、広い範囲のほぼ一定の経路を移動する魚のこと。
サンマ、イワシ、マグロ、サケなどが当てはまります。
ドミニカ共和国に滞在中、クジラツアーへ連れて行ってもらった時のこと。
天気はよかったのですが、海が荒れ、乗船時から船は揺れていました。
それでも、ラテン系のドミニカ人は陽気で、
あるグループは乗り込むと、テーブル席を確保し、ワインのグラスを並べ、酒盛りを始めたのです。
船は海に出ると、さらに揺れました。
私は気分が悪くなり、知人がポットから注いでくれたコーヒーを飲むことができません。
酔い止め薬を飲んでいたにも関わらず。
クジラの姿が見えた時、あちらこちらから歓声があがります。
スペイン語での説明が始まり、知人が通訳してくれ、クジラも回遊魚だと初めて知ります。
彼らの海の旅の距離は、一年で数千キロから数万キロにまで及ぶのだとか。
日本の端から端まで3000キロで、自分が徒歩で歩くことを想像し、あまりの衝撃に酔いが吹っ飛びました。
船の揺れは止まらなかったけれど。
しばらくして、足元を赤ワインのボトルが乾パンの上をごろごろと転がっていきます。
酒盛りをしていたグループの方を見ると腰がくだけたように眠っていました。
気分が悪くなったのか、酒で酔いつぶれただけのかはわかりません。
回遊魚の話に触れると、クジラの旅とドミニカ共和国での船旅の光景を思い出すのです。<text:イシコ>