ハロウィンが終わってクリスマスへと向かう前に、北米では感謝祭という一大イベントが待っている。映画興行にとっては年間を通して最大の書き入れ時であり、そこへ向けて次週、次々週と強力なビッグタイトルが控えているとなれば、先週末(11月8日から10日)の北米興収ランキングがとてもおとなしい状態になるのは致し方あるまい。
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』はシリーズ初の3週連続No. 1を達成! / [c]Everett Collection/AFLO
首位を飾ったのは公開3週目を迎えた『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(日本公開中)で、週末3日間の興収は前週比61.4%の1590万ドル。シリーズ初の3週連続No. 1獲得となったわけだが、公開3週目末の3日間の数字だけで比較すると1作目の1800万ドル、2作目の1650万ドルに届いておらず、その点では手放しに喜べるものではなないだろう。それでも累計興収は無事に1億ドルの大台を突破している。
さて今回取り上げたいのは、そんな『ヴェノム〜』を初日の金曜日のデイリー興収では上回ったものの、土日の成績で最終的に2位・3位に敗れるかたちとなった初登場の2作品。2位にランクインしたのはA24製作によるヒュー・グラント主演のサイコスリラー『Heretic』。そして3位にランクインしたのは半世紀以上愛され続ける同名児童小説を映画化した『The Best Christmas Pageant Ever』だ。
「The Chosen」のダラス・ジェンキンス監督が名作児童文学を映画化した『The Best Christmas Pageant Ever』 / [c]Everett Collection/AFLO
週の初めに発表される速報値の段階では、両作品の順位は逆だったが、確定値では上記のようになっている。3221館で公開された『Heretic』は週末3日間で1101万ドル、3020館で公開された『The Best Christmas〜』は同1077万ドルと、その差はわずか24万ドル。1館あたりのアベレージでは後者の方が上回っており、まさに大接戦といえよう。
かたやホラージャンルでもう一方はクリスマス向けのファミリーコメディと、どちらも若干公開タイミングがズレているように思えるのだが、それについては問題なさそう。批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、両作共に批評家からの好意的評価の割合が90%を超える高スコアを記録しており、なによりどちらも製作費1000万ドル程度のローバジェット。週末興収だけですでに回収済みのよう。
【写真を見る】近年悪役が板についてきたヒュー・グラント。本格的なホラー作品はキャリア初!? / [c]Everett Collection/AFLO
ちなみに『Heretic』は、A24のホラー作品としては『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(23)のオープニング興収をわずかではあるが上回っており、『ヘレディタリー/継承』(18)のそれにも迫る見事な数字を記録。娯楽性の強い作品を除いてホラー映画がヒットしがたい11月に、どこまで数字を伸ばせるのか。A24の底力が大いに試されることだろう。
文/久保田 和馬