ハナニラ
Ipheion uniflorum:ネギ亜科ハナニラ属


Photo/田中敏夫

ハナニラ(Ipheion uniflorum/イフェイオン・ウニフロルム)は、野菜のニラの近縁種。ニラに似た独特のニオイがします。南アメリカ原産で25種ほどの原種が知られています。

出回っている主な品種は、星形で藤色に近いライトブルーの花を咲かせるウニフロルム属を元にした園芸種です。花色がピンク花に変化したものもあります。その他、少し早めに開花することが多い近縁種の黄花ハナニラ(Nothoscordum sellowianum)や、晩秋から初冬に白い花を咲かせるパルビフローラ(I.parviflora /Tristagma recurvifolium)も、近年、入手可能となりました。

一度植え込むと分球、またこぼれ種でも増えるので、植えっぱなしのまま楽しむことができます。

ハナニラの栽培の際に注意したいのが、ハナニラは有毒なので食用にはならないこと。

野菜として広く流通しているニラ(Allium tuberosum)の中には、つぼみを含めて食用にする“花ニラ”(‘テンダ―ポール’、’ニラむすめ‘など)があり、収穫を控えていると秋に花冠状の白花を咲かせます。毒性の“ハナニラ”と“食用花ニラ”は違います。お間違えないようくれぐれもご注意ください。

グラウンドカバーとしてのハナニラと一緒に咲くコンパニオンたち

ハナニラは晩春になると地上部が枯れて休眠します。しかし、晩秋から初冬にかけて新芽を伸ばして地上に現れロゼッタ状になります。植え込んで数年を経過しよく分球すると、枯れこみが目立つ庭に緑の絨毯のように広がり、よいグラウンドカバーとなります。


Photo/田中敏夫

ハナニラは、千葉北西部の場合3月中旬から4月初旬に開花しますが、早咲き球根のスノードロップ(Galanthus nivalis/ガランスス・ニヴァリス:ヒガンバナ科ガランサス属)、クロッカス(Crocus:アヤメ科クロッカス属)、ミニアイリス(Iris reticulata/イリス・レティクラータ:アヤメ科アヤメ属)などは、ハナニラよりも少し早く開花します。これらの早咲き球根をハナニラと同じ場所に混栽しておくと、ハナニラの緑葉を分けて、クロッカスなどの花だけが顔を出すという庭演出をすることができます。


左からスノードロップ、クロッカス、ミニアイリス。Photo/Florencia Grattarola、Michael Goodyear、Zeynel Cebeci [CC BY 4.0 via Wikimedia Commons]

宿根草であるプリムラ・ヴルガリス(Primula vulgaris:サクラソウ科サクラソウ属)、プリムラ・ヴェリス(Primula veris:サクラソウ科サクラソウ属)、ベロニカ ‘オックスフォードブルー/ジョージアブルー’(Veronica peduncularis ‘Oxford Blue’/’Georgia Blue’:オオバコ科クワガタソウ属)、ビオラ ‘ラブラドリカ’(Viola labradorica:スミレ科スミレ属)なども、球根類と競い合うように花咲きます。ハナニラのベッドにスノードロップ、クロッカス、ミニアイリスを合わせ、それを囲むようにプリムラ、‘オックスフォードブルー’、‘ラブラドリカ’を植栽すると、早春を彩る“花の小島”を作ることができるでしょう。


左上から時計回りにプリムラ・ヴルガリス、プリムラ・ヴェリス、ベロニカ‘オックスフォードブルー’、ビオラ・ラブラドリカ。Photo/Michel Langeveld、Ghislain118、Dinkum、Agnieszka Kwiecień [CC BY 4.0 via Wikimedia Commons]

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ムスカリ
Muscari:キジカクシ科ムスカリ属


Photo/田中敏夫

ムスカリは、ハナニラと同様、初冬から葉を伸ばし、3月中旬から4月初旬に開花します。丈夫で特に手入れをしなくても毎年開花し、環境によく適応すると群生することもあります。

ブドウの房のような花序となることからブドウムスカリと呼ばれることもあるアルメニアカム種(M. armeniacum)と、その交配種が主に流通しています。冬越しする葉姿はハナニラのように地表を覆う形ではなく、立ち上がり気味となります。そのため、スノードロップ、クロッカス、ミニアイリスなどとの混植にはあまり向いていないと感じています。

なお、あまり流通量は多くありませんが、ムスカリ・ラティフォリウム (M. latifolium)は幅広の包葉の間から花茎を伸ばす愛らしい花姿をしています。ブドウムスカリに比べて繁殖力が劣るようですが、もっと利用されてもいい種類です。


ムスカリ・ラティフォリウム。Photo/Meneerke bloem [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]