相場はいったいどのくらい?

長期間にわたって支払う必要のある修繕積立金は、できる限り抑えたい方が多いでしょう。
しかし、修繕積立金に関する知識がなかったり、分譲事業者が提示した金額が低く設定されていたため、購入後トラブルになったりするケースもあります。
ここでは、実際の修繕積立金が適正な金額かどうか知るために修繕積立金の相場や相場の算出方法について紹介します。

修繕積立金の相場はどれくらい??

国土交通省「平成30年度マンション総合調査」の調査によると、1戸当たりの修繕積立金の総額の平均は月額 12,268 円(駐車場使用料等から修繕積立金への充当額を含む)となっています。
建物形態(建物の棟数)別では、単棟型が 11,875 円、団地型 14,094 円が平均値です。
平成11年度から平成25年度の修繕積立金の推移をみると、1戸当たりの修繕積立金の額は増加傾向となっていることが読み取れます。
国土交通省の調査によると、全国にあるマンションのうち、3棟に1棟、修繕積立金が不足しているデータが出ています。
今後も修繕積立金の平均値は上がると考慮して、マンション購入を検討すると良いでしょう。

修繕積立金平均値が高くなるケースと低くなるケース

修繕積立金の平均値は、マンションの規模や築年数によっても変わってきます。
高額な修繕積立金が設定されている場合は、以下のような理由が考えられます。

・プールやゲストルーム、ジムなどの共用設備が整ったマンション
・建物自体が古い物件
・地震や台風など自然災害が多い地域のマンション

それに対して、修繕積立金の平均値が低いケースでは以下のような理由が考えられます。

・設備が少ないマンション
・地方の小規模なマンション

マンションの戸数が多い物件は、共有部分が多く豪華な設備も多いので、一般的に積立金も高くなる傾向にあります。
また、20階以上の高層階へ住む場合も同様です。
高層階の修繕工事には、特殊な足場が必要になり、大規模な修繕がされます。
修繕積立金を抑えたいのであれば低層階の小規模なマンションから探していくと良いでしょう。

修繕積立金の適正額の目安は国土交通省のガイドラインを参照に

修繕積立金にまつわる情報不足やトラブルは多いです。
そのため、国土交通省から「修繕積立金に関するガイドライン」が公表されています。
ガイドラインには、修繕積立金に関する基本的な情報や修繕積立金額の目安が示されているので参考にすると良いでしょう。
修繕積立金に関するガイドラインでは、修繕積立金の目安を次の計算式で求めています。

【マンションの修繕積立金の額の目安(Y)=AX+B】

Yマンションの修繕積立金の額の目安A専有床面積あたりの修繕積立金額(表)X専有床面積(㎡)B機械式駐車場がある場合の加算額

・Aの積立金額については、マンションのフロア数などで分類した上で目安がつきます。

【専有床面積あたりの修繕積立金額/月額】

 階数/建築延床面積平均値事例の3分の2が包含される幅※15階未満5,000㎡未満218円/㎡165円~250円/㎡5,000~10,000㎡202円/㎡140円~265円/㎡10,000㎡以上178円/㎡135円~220円/㎡20階以上 206円/㎡170円~245円/㎡※事例の大部分が収まるような範囲という意味

事例の3分の2が包含される幅とは、事例の大部分が収まるような範囲という意味です。
・Bの加算額は、機械式駐車場の1台あたりの修繕工事費×台数×各住戸の負担割合です。
利用する駐車場が機械式駐車場の場合、修繕工事の費用は大きくなります。
そのため、下記表の数値を加算します。
一般的に、負担割合は専有部分の床面積割合としている場合が多いです。

【機械式駐車場の機種別修繕工事費(月額/1台)】

機械式駐車場の機種修繕工事費2段(ビット1段)昇降式7,085円3段(ビット2段)昇降式6,040円3段(ビット1段)昇降横行式8,540円4段(ビット2段)昇降横行式14,165円

上記の表をもとに、具体例を挙げて計算してみましょう。

・14階建/建築延床面積8,000㎡/専有面積100㎡の物件の場合

【マンションの修繕積立金の額の目安(Y)=AX】

A=202円、X=100㎡なので、修繕積立金の目安平均値は、202×100=20,200円です。
目安の幅は、140~240円なので、14,000~26,500円程度となります。
上記のマンションに、機械式駐車場を利用する場合も確認してみましょう。

・14階建/建築延床面積8,000㎡/専有面積100㎡の物件
・3段(ビット1段)昇降式の駐車場(30台)がある場合

B=6,040円×30(駐車場の台数)×100/8,000(床面積割合)=2,265円
上記マンションでの修繕積立金額の目安が14,000~26,500円だったので、Bを加算した修繕積立金額は、16,265~28,765円となります。

参照:国土交通省/「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要
(https://www.mlit.go.jp/common/000141884.pdf)

【築年数別】修繕積立金の相場について

修繕積立金の相場は、マンションの築年数によっても設定金額が変わってきます。
築年数によって、修繕積立金の相場がどれくらい変わってくるのかも確認しておきましょう。

完成年次平均修繕積立金(月額)〜平成元年(1989年)12,154円〜平成6年(1994年)12,760円〜平成11年(1999年)13,447円〜平成16年(2004年)12,649円〜平成21年(2009年)12,386円〜平成26年(2014年)9,846円平成27年(2015年)以降6,928円全体平均12,268円

参照:国土交通省/平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状/ 管理組合向け調査の結果
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html)

新築や築浅物件の方が、修繕積立金が低くなると考える方が多いかもしれません。
確かに、築年数が経つほど、建物が老朽化し、修繕費が多くかかるので高くなる傾向にあります。
しかし、実際は、築浅だからといって安いとは限りません。
不動産会社が新築物件を売りやすいように、販売当初は管理費や修繕積立費を安く設定し、数年後に値上げするケースもあるようです。
また、修繕積立金は、決まった金額が固定されていません。
一般的に新築当初は修繕積立金が低く設定され、5年くらいを目途に段階的に積立金額が上がっていくケースが多いでしょう。
マンションによっては、大規模な修繕工事が行われるまでの年数で修繕費用を割り、積み立てているケースもあります。
修繕工事の際にそれぞれの物件の大家さんから一時負担金を徴収して対応するマンションもあるでしょう。
積立方法は物件によっても異なりますが、基本的には修繕積立金の費用は上がっていくものだと考えておきましょう。

【戸数別】修繕積立金の相場について

マンションの総戸数の違いによって、共有部分の大きさも異なります。
そのため、修繕積立金の設定も違いが出てくるので確認しておきましょう。

総戸数規模平均額~20戸1万4,722円21~30戸1万1,416円31~50戸1万2,028円51~75戸9,850円76~100戸1万872円101~150戸1万58円151~200戸1万526円201~300戸1万467円301~500戸1万3,566円501戸~1万1,967円

総戸数から、多くのマンションの積立平均額は11,000円前後と読み取れます。
しかし、300戸を超える大規模なマンションでは平均額が13,000円を超え高い傾向にあるでしょう。
大規模なマンションでは、共用部分も多く、設備が充実しているので、その分月額に差が出ていると考えられます。

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修繕積立金を経費計上するための条件

修繕積立金を経費計上するためには、いくつかの条件があります。
どのような条件が必要なのでしょうか?

勘定科目は修繕費とすること

修繕積立金を経費計上する際には、勘定科目が修繕費になります。
物件管理のために使う費用なので管理費ではないかと考えるかもしれません。
管理費は、マンションなどの価値を保つために使う費用が該当するため、点検や清掃作業などが管理費になり、修繕費は該当しません。
修繕積立金は、マンションなどの大規模修繕工事などのために積み立てる資金であり、管理組合などが毎月一定の金額を所有者から集めます。
この資金は点検や清掃などで使うものではなく、設備の故障、破損、劣化などで使用するため、勘定科目は修繕費ということです。

所有者が修繕積立金を支払っていること

修繕積立金を経費計上するためには、区分の所有者が修繕積立金を支払っていることが条件です。
国土交通省のマンション標準管理規約第28条にあるように、区分の所有者となった場合は、管理組合に対して修繕積立金の支払い義務を負うことが記載されています。
これは、マンションを維持するために修繕積立金が必要だからです。
もし、修繕積立金を回収していない場合は、経費計上できないので注意しましょう。

修繕積立金は所有者へ返還する義務がないこと

マンションの修繕積立金は、管理組合から区分の所有者に対して返還義務がないことも重要な条件です。
これは、マンション標準管理規約の第60条にも「組合員が納めた修繕積立金や管理費などは返還請求できない」という内容があります。
このような規約に沿ったマンションの管理規約を作った場合は、区分の所有者から修繕積立金返還の請求を受けても応じる必要はありません。
これは、区分の所有者が退去や売却をした場合でも返金する必要はありません。
今まで積み立てた修繕積立金が戻るかどうか、管理規約などにこのような内容が記載されているかを再確認しておくと安心です。

積立金は限られた使い方しかしないこと

修繕積立金を経費計上するための条件には、積立金が限られた使い方しかできないことも確認しなければなりません。
これは、マンション標準管理規約の第28条にもあるように、修繕積立金は今後マンションの設備の故障、破損、劣化など修繕のために使用されること、他に流用されないことが条件です。
積立金の用途は、共用部分の定期的修繕、大規模修繕、災害や不測の事故など特別な理由で必要な修繕、建て替えやそれに関して必要な調査、敷地内や共用部分の増設、敷地売却、駐車場増設、バリアフリー化など区分の所有者の利益のためだけに限定されています。
もし、修繕積立金を通常の管理費としている場合、条件を満たせなくなるので注意してください。

積立金は合理的な計算方法で出されること

積立金に関しては、合理的な計算方法で出されることも条件です。
合理的な計算方法というのは、国税庁でそれぞれの区分所有者の共有持ち分に応じて算出される方法です。
共有持ち分は、マンション共有部分を区分の所有者が持っている所有権の割合を意味しています。
この計算式は、以下の式に当てはめて行います。

【式】

(A+B+C)÷X÷Y=Z

A:計画期間当初における修繕積立金の残高
B:計画期間全体で集める修繕積立金総額
C:計画期間全体における専用使用料などからの繰越金総額
X:マンションの総専有床面積(㎡)…戸当りの専有床面積(㎡)×戸数
Y:長期修繕計画の期間(ヶ月)…計画年数×12ヶ月
Z:全体の計画期間における修繕積立金平均額(円/㎡・月)

このように、合理的な計算方法で算出が必要になってきます。