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飲食店で1人で食事をする、いわゆる「お一人様」客がアメリカで注目されている。これまでは日本特有の現象として紹介されてきたが、社会規範の変化や人口動態などにより、1人で食事を楽しむ人やそれに対応する飲食店も増加。「1人=孤独」という見方が変わりつつある。
◆半数以上が1人を経験、もはや孤独ではない
レストラン予約サイト『オープンテーブル』が6月にアメリカ人を対象に実施した調査によれば、2024年に1人で予約をした客は前年に比べ8%増加したという。60%の回答者が過去12ヶ月の間に着席型レストランで1人の食事をしたことがあると答え、特にZ世代では68%がそう回答していた。また、今年は1人で食事をする予定だと答えた人は52%いた。
飲食業界サイト『レストラン・ホスピタリティ』は、レストランは本来、人が集う場所だったと述べる。何年もの間、1人での食事は恥ずかしいもの、孤独なものという汚名を着せられてきたが、今ではさまざまな理由から1人の食事を楽しむ人が増えているとしている。
◆むしろ1人のほうがいい? 外食はご褒美
「お一人様」の増加の理由の一つとして、CNNは1人暮らしの人が増えたことをあげている。アメリカ人の30%は1人暮らしで、これは過去最高の数字だ。1人の食事には調理や片付けがいらないため、便利だと考える人も多いという。
1人の食事を、自分へのご褒美と捉える人もいるという。複数のレストラン予約サイトの調査では、1人で外食する理由のトップは、「自分の時間が必要」だった。ソーシャルメディアのフードブロガーなどの台頭で、魅力的な店を見つけやすくなったことも後押しになっているという。(CNN)
ペンシルバニア州立大学で1人の食事について研究しているアンナ・マッティラ氏は、パンデミックによって外食の社交的交流の可能性が低くなり、結果的に重要性も低くなったとしている。また、スマートフォンの普及で、1人でいるときも他者とつながれることも役立っているのではないかとした。(AP)
オープンテーブルのデビー・スー最高経営責任者(CEO)は、「お一人様」の増加は、自己愛と自己ケア、そして自分という友と楽しむという、より広範なムーブメントが背景にあるのではないかと話している(同)。
◆変化に対応 店側も1人客取り込みへ
「お一人様」の増加を受け、レストラン側でも試行錯誤が始まっている。フロリダ州南部のアイリッシュ・パブでは、バーエリアを広めに取って1人席の選択肢を増やし、1人客同士が一緒に座れるコミュニティテーブルも用意した。ニューヨークのシーフード・レストランでは、牡蠣やアサリのような生物も1個単位で注文できるようにし、1人サイズの盛り合わせもメニューに加えたという。(レストラン・ホスピタリティ)
1人客への従業員の対応を変えた店もある。テキサス州ダラスのある店では、以前は1人で食事をしている客には特別な注意を払うようスタッフに教育していたというが、今では「1人にしておいてほしい」という傾向を尊重するように伝えているという(同)。
一方、スタッフに質問して交流することを好む1人客のために、より手厚く対応して新メニューの説明や提案をするよう従業員に指導する店もあるという(CNN)。
オープンテーブルの調査では、1人客はほかの客に比べて48%多く出費するという結果も出ている。レストランのなかには、今でも「お一人様」の予約を受け付けない店もあるというが、客側の変化に合わせて、店側の対応も徐々に柔軟になることが期待される。