文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、“読書の秋”“勉強の秋”に向けて使いたい文房具を取り上げました。

第3回目は、クツワの「モジサシ」です。

(写真左からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2024年8月17日撮影
*鼎談は2024年8月20日にリモートで行われました。

文字がスラスラと読める定規


「モジサシ」(クツワ) 文字がスラスラと読め、勉強に集中できる定規。マーカー部分を当てると、読みたい箇所だけ見えるので、内容が頭に入りやすい。16㎝(税込220 円)と18㎝(同275 円)の2種をラインアップ。
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――じゃあ、最後は「モジサシ」ですね。

【きだて】今回、正しく読書ツールと呼べるのって、これだけじゃないの。

――まあでも、これも一応勉強に使えるみたいな感じなんですかね。「勉強に集中できる定規」って書いてあるから。

【高畑】何にでも使えるっちゃ使えるんだけど。1行だけ黄色になっていたりとか。

【きだて】俺ね、疲れてる状態で本を読んでも、文字が全く追えなくなるのね。でも〆切的にこの本はいま読んでおかないと…!って場合は、これに頼ってるんですよ。

【高畑】はいはい。

【きだて】年齢を追うに従って、どんどん使う比率が増えているのが情けないんですけど(苦笑)。

【他故】いやいやいや。

【高畑】疲れると目が滑るっていうかね。読んでいてどの行を読んでいたのかみたいな。同じ行を何度も読んでいる。

【きだて】文字が意味を持ったものとして、脳に入ってこないんだよ。ずっと普通に読んでいるだけだと。

【高畑】そうなるときはあるね。疲れたりすると特に。

【きだて】普段本を読むときって、文字列をズーッとサーチするように進むんじゃなくて、だいぶ前の方の行までまとめて視界に入れて、そこをひとかたまりで読んでるのね。

【他故】そういう読み方なんだ。

【きだて】なんだけど、疲れてる時は脳が文字のかたまりを処理しきれなくなる。だから目からの入力量を1行だけにまで減らすことで処理しやすくする、っていうことらしい。

【高畑】なるほどね。

【きだて】実際、確かにそれですごい効果は感じられるから、ものすごく助かってる。これは何だろうね? 俺のADHD気質なところなのかなのか、ちょっとよく分かんないんだけど。

【高畑】でも、きだてさんはちゃんと読める方の人だからさ。多分、元々の「モジサシ」っていうのは、むしろそこに至ってない人っていうか、本を読むこと自体に慣れてない人なんじゃないかな。文字がいっぱい並んでるのが、しんどい人はしんどいっぽいから。

【きだて】それも結局のところ、入力量を減らして処理できるようにするっていうところなので、一緒だと思うんだけどね。

【高畑】横に文字があっても、この行だけがちゃんと読めるのは、子どもの頃からの訓練でできるようになっているんだろうと思うんだよね。それが上手にできない人にとっては、「今読んでいるところだけがあります」っていう状態の方が、ちゃんと読めるのかなという気がするよね。

【他故】そういうので思い出すのがさ、小学校の頃、今でもやってんのかな? 音読っていうのを授業中にさせられることがあったんだよ。先生に指されて「そこを読め」って言われるんだけど、それが苦手で。立って読まされるから、追えないんだよね。その行を追えないという経験を何度もしてて。

【きだて】それがちょっとよく分からないな。どういうこと?

【他故】その行を読もうとするんだけど、いろんなとこがフラフラ見えちゃっている状態になっちゃうんだよね。

――目で文字を追えなくなるという感じですか?

【他故】その 1 行だけに目が固定されない状態になって、音読ができなくなる経験をしたことがあるんですよ。

【高畑】机の上ならできるの?

【他故】机の上ならできる。だけど、持ったときに何らかのかたちで揺れてるんだろうね。それでもう読めなくなっちゃうんですよ。だから、気持ちは分かるんだよね。ここだけ隠してその行だけ読みたいっていうのはすごくよく分かる。

【きだて】そういうケースもあるのか。

【高畑】音読自体はまた別の要因もあると思うんだけど、そのともかく今読んでいるところっていうのも理解っていうのを、慣れてくると2行、3行をパッと目に入れて読むんだけど。

【他故】そうそう。

【高畑】それこそこの定規が対象にしてるのは小中学生ぐらいだと思うので、本を読むのが苦手とか言う人にとっては、ここからでもいいのかなという感じはする。

【きだて】紙面にアンカーを打つ感じで、要は自分が今どこにいるのかっていう紙面上の所在地を明らかにするっていうのは、読みやすくするものではあるよね。

【高畑】僕が子どもの頃は、最初は指でなぞりながら読むっていうのを結構してた。小学校の最初の頃とか。

【他故】ああ、指でなぞりながらね。

【高畑】「今ここを読んでいる」っていうのを指で押さえながら読むみたいなのも、多分その定規と一緒の感じなのかもしれない。

【きだて】多分、一緒だと思う。

【高畑】「今読んでるところはここですよ」っていう場所をちゃんとするっていうのができるようになってからのこの定規の幅だと思うので。

【きだて】俺みたいに文字が上滑りする人にとっては、前後が隠れている方が重要だったりするんだよ、現在位置よりもむしろ。

【他故】ああ、そういうことね。

【きだて】それはさっき言った入力の制限。脳への入力を制限するという意味の方がでかい。だから、それぞれによって使い方が違ってくると思うんだよ。現在地が知りたい人と、入力を制限したい人と。そのどっちにも使えるということなんだろうね。

【他故】まあ、そうだね。

【高畑】やってみると不思議なのだが、黄色のフィルターをかけると、白に黒で文字が書いてある以上に読みやすくなる。

【きだて】そうだね。

【高畑】色にもよるんだよね。僕は割とオレンジ色が好きで、オレンジ色ベースに黒が出てくるのって、組み合わせで割と読みやすい色なんですよ。僕は蛍光ペンもオレンジ色の方が好きなので、いつも本読むときに後で読み返すところは、大体オレンジ色で線を引いている。そういう意味でも、リードラインのところがこの定規の場合だとあまり明るくない黄色でいいなっていう感じなんだよね。

【きだて】定規の色は、黄色と透明の2種類じゃなかったかな。

【他故】黄色と透明だね。

――この黄色がいい感じなんですね。

【高畑】蛍光ペンみたいな明るい色にすると、逆にちょっと。僕は、コントラストが強くなり過ぎるのもちょっとあまり良くなくて、むしろフィルターかけた状態の色の方が読みやすくて。

【きだて】俺もね、透明よりは色付いている方がいい。

【高畑】透明より色付きの方がいいよね。

【他故】そうだね、それはそうだと思う。

【高畑】本来ならば、色付きの方が光の量は減ってるはずじゃないですか。この黄色っぽいやつ。このちょっと色が入ってるやつがまた読みやすかったりするので、僕は透明じゃなくて色付きがいいですね。

――これがマーカーの黄色とはちょっと色味が違うということなんですね。

【きだて】ちょっと濃いめかな。

【高畑】どっちかっていうと、上からで隠してる感じじゃない。光り過ぎてない。あと黄色の方は、「ここですよ」っていう感じはすごいあるね。透明に抜けているよりは全然「ここですよ」という感じはある。

【きだて】行を動かすときに、黄色の方が行から行へ渡るときの視認性が強いんだよ。

【高畑】ああ、「ちゃんと動いたよ」って。

【きだて】いつの間にか、スルッと動いちゃうことがあって。そういう意味でも、俺は色付きの方をおすすめしたい。

【高畑】いいよね。本当に色付きの方が良い。

【他故】色が付いている方が、俺も好き。

【高畑】あとね、すごい地味な話なんだけど、表が裏になると確か目盛が書いてないんだよ。

【きだて】ああ、そうそう。

【高畑】表が裏になると、目盛なしのただの帯線になるんだよ。それで、あれは裏で使うべきって俺は思っているので。表で使うとね、数字がいっぱい書いてあるから、逆に見づらい気がしちゃう。

【他故】気が散っちゃうところもあるしね

【高畑】だから、裏返して使うといいよ。多分、そういうつもりで作ってるんだと思うけど。

【きだて】要は、それでちゃんとそっちが使えればいいんだよっていう話だよね。

【高畑】だと思う。そんなのも含めて、余計な情報のない状態で見るみたいなのはあってもいいかな。NHKのドキュメンタリーとかでさ、昔の戦争の時の資料とか出てきたりするじゃん。古い資料とかがテレビに画像として出てきたときに、読ませたいところに光の帯を入れるのって分かる?

【きだて】ああ。

【高畑】どうやってマスクしているのか分かんないけど、あの細い光の帯が入って、その文字の行だけをナレーターが読むんだよ。それで、読みながらその線が動くわけ。

【他故】うん、あるある。

【高畑】それを昔見た時に、「こんな本があったらいいのに」って思ったことがある。

【他故】あー。

【高畑】慣れたら普通に本を読めるんだけど、もちろん障害的な部分とか性格の部分で読みづらい人もいるし、あと最初に「本を読むのが苦手」という人の、苦手の分類の中のいくつかは、この定規を使うと和らぐかもしれない。

【きだて】100%いけるとは言わないけど、本を読むのに試してみる価値はあると思うんだよ。あと、自分にとっては難しい本ってあるじゃん。

――より専門的とか学術的なやつとか。

【きだて】そういう自分には難しい本を、これで制限してゆっくり読むと、割と頭に入ってくるね。

【高畑】今めっちゃ思い出したのは、英語とかの教科書。英語の教科書はどこを読んでいるか分からなくなる。多分、英語の文章とか読むときはこの定規がめっちゃ効く。日本語の場合って、漢字の位置とかで今いる所在地を目がちゃんと追っているんだよね。漢字とか単語とかの位置で見ているんだけど。俺ね、英語とか外国語がダメで、高校の時からそうだった。今思い出したのは、中高生の時に英語の教科書で読むときは定規を置いてたんだよ。

【きだて】外国語って、読みながら自分の脳内で出力も行ってるじゃん、日本語の出力を。

【高畑】翻訳っていうか何かをやってるよね。

【きだて】それも要は、入力過多で出力が詰まるんだよ。

【高畑】そうかもしれないけど、俺は入力過多というところまで行けてないよ。そこまでは行ってなくて、同じような記号が並んでいるんだよ。アルファベットのかたちが似ているので、どの行を読んでいるのか分からなくなる問題が俺にはあって。

【きだて】読み慣れているから、目がまとめて情報を取ろうしているんだよ。

【高畑】そうなのかな。

【きだて】それが入力過多なんだよ。脳内で翻訳が間に合ってないので詰まるという。

【高畑】俺は、翻訳のところまで行けていない気がする。

【他故】俺は、日本語でも横書きでズラッと並んでいるのは苦手だけどね。

【きだて】ああ。

【他故】縦書きは完全に読めるんだけど、A4の横書きで印字されているようなのがあったら、絶対に定規引きながら読むよ。分からなくなっちゃうから。

【きだて】それは目の動きに関係ありそうだね。

【高畑】多分俺は、やっぱり文字のかたちが似てるっていうか、自分から見て遠いんだよ。だから、英語の文章をパーンって見たときに、ただのグレーに見えてしまうというか、地紋に見えてしまう。

【他故】なるほどね。

【高畑】日本語だったら、意味のある塊がババババッてあって、こう流れているっていうのがすごいちゃんと分かっているはずなのに、英語とか、もっと言うと例えばドイツ語みたいなもになると、全くそれが分からない。どの行がどの文字なのかっていうのが。要は、単語が認識できないから。単語が認識できると、その単語の位置っていうのが、地図の中でのランドマークみたいになるんだけど、読み取れない言語だと、今どこにいるのか分からないみたいになる。

【きだて】分かんないんだ。

【高畑】あとね、日本の古い文章。古語で書かれていて、漢字も旧字体で書かれていたりとか、印刷自体も古かったりする場合。自分が親しみのある文字とか言葉が見つけられないときの泳ぎっぷりが半端ないので。そういうときは定規で押さえていないと読めない。

【他故】なるほどね。

【高畑】だから、なじみのない文章だとこの定規は威力があるな。それで、真ん中だけ抜けててリーダーが付いているのって、入力用の定規としては昔からあるんだよ。

【他故】あるね。

【高畑】一覧表とかの数字入力をするとか、伝票の入力をするとかで置く用の定規は、真ん中だけ抜けていたりだとか、カラーのバーが付いていたりとかあるんで、新しい発想ではないんだけど、ただそういうのが参照するときに非常に見やすくはなるよね。もちろん、慣れてきたらかえってスピードが遅くなっちゃうから、多分なくてもよくなるんだろうけど、慣れてないとか、きだてさんが言うみたいに、疲れて読みづらくなるときとか。

――はい。

【高畑】そうだね、「どうやって読んでいるんだろう」っていうのを久しぶりに考えた気がする。

【きだて】ははは(笑)。

【他故】これ、16㎝と18㎝があるのが好きでさ。

――そうですね。

【他故】このほんのちょっとの長さの違いは何だろうと思ったら、B5ノートを横幅でラインが引けるのが18cm定規なんだよね。

【高畑】18㎝が鉛筆と同じ長さだから、ギリギリペンケースに入るんだけど、大人用のペンケースとかボールペンとかと比べると長過ぎて入らないんだよね。ノートの横幅でいくと18㎝欲しいんだけど、みたいな感じであったりなかったりするんだよね。

【他故】そうそう。18があるのが面白くて。

【高畑】18と15だっけ?

【他故】16だね。

【高畑】これもさ、やっぱり学童メーカーならではのとこはあるよね。学童用のペンケースに入れるとかいろんなことを考えて、この長さがあるじゃん。そこら辺が非常によく分かる感じがするね。

【きだて】とりあえず18㎝あれば、新書読むのにも全然問題ないんで、読書用としては十分なんだけどね。

【高畑】だから、18を一本持っとけばみたいなところではあると思う。

【他故】でも、これだとA4の横には足りないんですよ。僕が本当にやりたかったA4の横には足りなくて。

――ああ~。

【他故】そうすると出てくるのが、「モジサシ下敷」になるんだよね。

――ああ、下敷きがあるんですよね。

【他故】そう、下敷きがあるんですよ。

【きだて】下敷きはね、隠す面積が大きくなり過ぎて、俺はちょっと動かしづらかったんだ。

【高畑】あと移動するときに、右端を読んでるときはいいけど、だんだん横にずれていくとはみ出す部分がでかくなっちゃうのはちょっと不便。

【きだて】下敷きだと、本の曲線に合わせづらいっていう。

【他故】それはそうだね。

【きだて】プリントアウトの書類を見るんだったら、その他故さんの使い方でいいかなとは思う。

【他故】そうそう。

【高畑】机の面積に余裕があって。本とかだったら、カーブしてたりもするから定規が便利だね。

【他故】うん、定規が便利だね。

――文字校正で使えますかね?

【きだて】うん、使える。校正も入力を絞った方がやりやすい。

――じゃあ、我々のような職種の人間が使うのはいいんだろうな。

【高畑】でも、文字校してるときは、ちゃんと 1 行ずつ見ろよみたいな感じで、文章を読んじゃダメなんだよね。

――そうですね。

【高畑】文章を読んで分かった気分になっちゃうと読み飛ばしちゃうから、1行ずつちゃんと見ろっていうのがあるから、そういう意味では、そういうときはもちろんこの定規の方がいいんじゃないかなという気がするね。

――文字だけじゃなくて、数字をチェックしなきゃいけない書類とかあるじゃないですか。そういうときにもいいのかも。

【高畑】それも含めて、大人になってちゃんと見るのにももちろん使えるぜっていう感じはすごいするね。

【他故】うん。

【高畑】そもそもの発端は、読むのが苦手な子だと思うんだけど。きちんと読むというのは、何においても基本だからさ。こういうのは、やっぱあって然るべきだよねっていう気はする。

【きだて】スマホのTwitterアプリとかでも、1行ずつ制限して読む機能があれば、もうちょっと不毛なレスバも減るのではないかね。みんなちゃんと読めよっていう。

【高畑】反射で応える前に1回読めよっていう話はあるね。ちゃんと読んでっていう。でも本当に、読む技術は要るよね。

【他故】要ると思う。これはもう、体験と訓練と数ですよ。本当に。

【きだて】だけど、自分がその能力に自信があったのに、年齢とともに衰えていくのは辛いぞ(苦笑)。

【他故】いやいや(苦笑)。

【高畑】まあ、単純に疲れるようになったっていうのは分かる。

【他故】分かるよ。

【きだて】長時間本が読んでられない。だから、そういう風に感じてる人は、大人でもこれを使った方がいいっすよ。

【高畑】いいと思います。何かしらまとまった分量の文章を読んでいくっていうのは、頭の体操とは言わないけど、必要だなと思うので。

【きだて】あと、これで一行ずつ読んでいくのって、まどろっこくて時間がかかるように思うんだけど、目が滑ってるような状況だと、むしろこっちの方が圧倒的に速いよ。

【高畑】結果的にはそれが速いよ。

【他故】ちゃんと読めるしね。

【高畑】俺は元々そんなに読むのが速い方ではないから、それも含めてやっぱりいいんだよね。だから、学童用の文房具をあながちバカにはできないよね。

【他故】全くその通り。

【高畑】よくできてるよね。子ども用だから、逆に難しい機能がない。ストレートに分かりやすい。機能的には非常に使いやすいものが多いので、それも学童文具のいいところだったりするので、せっかくだから使ってみるといいよ。ということで、この原稿をチェックするときには、俺もちょっとこの定規を当ててみようかな。

(一同爆笑)

【高畑】文字の見逃しがないようにね。

――ぜひ使ってみてください(笑)。

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