起業や個人事業の拡大に合わせて、仕事場となるオフィスが必要になります。
一般的にはオフィス用の賃貸物件を借りて、事業を行うケースが多いです。
オフィスを借りるとなると賃貸物件を探す必要がありますが、住居用の賃貸物件とは異なるため、どう選べばいいのか悩む方もいるでしょう。
そこで今回は、オフィス賃貸の種類から不動産契約の流れ、物件の探し方や借りる際の注意点まで詳しく解説します。

オフィス賃貸は5種類ある!

オフィス賃貸には様々な形態があるため、業態や働き方などに合わせて選ぶ必要があります。
主に5種類に大別できるので、それぞれの特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。

貸事務所

貸事務所とは、事務所として貸出されている物件のことです。
スペースそのものを借りるため、仕事に必要な機器や通信設備、オフィス家具などは自分で揃えなければなりません。

メリット

・自由に内装をレイアウトできる
スペースを借りることになる貸事務所では、内装工事が認められています。
そのため、内装のデザインや備品の配置が自由なので、自社に合わせた内装空間にできることが大きなメリットです。
ただし、退去する際に入居前の状態に戻す義務があるため、内装をガラリと変えるとなると原状回復にかかる時間や費用が大きくなる点に注意しましょう。

・来客や従業員の増減に対応しやすい
自社だけの事務所なので、来客があった際に対応しやすいこともメリットです。
対面で顧客や取引先とやりとりすることが多いケースでは、貸事務所が便利と言えます。
また、オフィスを自由にレイアウトできるので、デスクの追加や配置換えが可能であり、従業員の増減に対応しやすいです。

・社会的信用度を向上できる
社会的信用度が高まりやすいメリットもあります。
貸事務所を利用する場合、そこが会社の所在地となります。
事務所があったほうが会社の所在を明らかにできるので、顧客や取引先に安心感を与えられます。

デメリット

・初期費用やランニングコストが高くなりやすい
貸事務所と契約する際に敷金や礼金が発生します。
また、内装工事費や備品・オフィス家具などの購入も必要となるので、初期費用が大きくなりやすいことがデメリットです。
その他に月々の家賃や更新費に加えて、通信費・光熱費といったランニングコスト、退去時の原状回復費用などもかかることを念頭に置いておきましょう。

・準備に時間がかかる
貸事務所と契約するにあたって書類の準備が必要です。
他にも内装工事や設備・家具の購入に配置も必要になり、想像以上に準備に時間がかかってしまうケースがあります。

レンタルオフィス

レンタルオフィスは、月額料金を支払うことで仕事に必要な備品・家具が揃った個室のオフィスを借りられる形態です。
サービス内容や料金体系は様々あるため、ワークスタイルに合わせてオフィスを選ぶことができます。

メリット

・コストを抑えてオフィスが利用できる
レンタルオフィスには、デスク・チェアなどの家具、インターネット・電話回線・複合機など仕事に必要な備品が揃っています。
そのため、それらの購入費を省いて、オフィスを借りることができます。

・必要な時だけ事務所として使うことが可能
年単位だけではなく、週単位や月単位で借りることが可能です。
そのため、必要な時に借りてオフィスとして使うことができます。
短期間の契約が可能なことからオフィス移転や引越しに対応しやすいこともメリットです。

・状況に合わせて適したサイズの部屋を借りられる
レンタルオフィスでは、様々なサイズの個室を用意していることが多いです。
一人用から数十人利用できる個室まであるため、従業員の人数に合わせて部屋のサイズを選択できます。
また、同じレンタルオフィス内で部屋を変更できれば、事業拡大や縮小に伴う従業員の増減にも迅速に対応することが可能です。

・立地条件が良いところが多い
レンタルオフィスは、立地条件の良い場所にあることが多いです。
一等地の貸事務所を借りるとなると膨大な初期費用や家賃がかかります。
しかし、レンタルオフィスなら貸事務所より少ないコストで借りられるため、一等地を拠点にビジネスを展開できます。
法人登記できるレンタルオフィスもあるため、一等地であればしっかりした企業という印象を与えることが可能です。

デメリット

・内装工事の自由度が低い
仕事に必要な備品が揃ったレンタルオフィスでは、内装を自由に変更できない場合があります。
自由に内装を変えたい場合は、改装可能なレンタルオフィスを選ばなければなりません。
また、改装可能なレンタルオフィスでも大型機材や金庫などを設置できないこともあるので、どこまで対応可能なのか確認が必要です。

・利用できる時間帯や曜日が決まっているケースもある
レンタルオフィスによっては、入退出できる時間帯や曜日が定められているケースがあります。
一般的には早朝や深夜は入退出禁止としている場合が多いです。
夜間に仕事をしたい、海外とのやりとりの関係で作業する時間帯が早朝や深夜に集中しやすいという場合は、24時間利用可能なレンタルオフィスを探しましょう。

・サービスの利用頻度によってはコストが上がる
レンタルオフィスは執務室以外に、会議室の利用や秘書・受付サービスなど便利なサービスを用意していることがあります。
利用料金に含まれているものもありますが、別途でサービス利用料がかかるケースも多いです。
有料サービスを使う頻度によっては、月額料金が割高になってしまうことがあります。

シェアオフィス

シェアオフィスは、一つの空間を複数の個人や企業が共同で使いながら働く賃貸オフィスです。
レンタルオフィスと違って基本的に個室はなく、フリーアドレス制のシートを個人や企業で利用することになります。
共用スペースとして会議室や談話室などがあるので、会議や来客の対応も可能です。
少数での利用に適しており、フリーランスやノマドワーカーで利用されるケースが多いです。

メリット

・コストを抑えられる
共用のものとなりますが、オフィス家具やプリンター、通信設備など必要な備品が揃っています。
自社で必要な備品を揃える必要がないため、初期費用を抑えてオフィスを借りることが可能です。
また、料金は月額制、または利用時間に応じて支払うドロップインとなっています。
そのため、レンタルオフィス同様に使いたい時だけ借りることも可能です。

・法人登記や住所利用ができる
シェアオフィスには、法人登記や住所利用ができるところがあります。
こちらも立地条件の良いところにあるケースが多く、一等地に法人登記が可能です。
ビジネスの拠点としての利用はもちろん、仕事用の郵便物・宅配便を受け取りたい時にも便利です。

デメリット

・個室がない
シェアオフィスではパーテーションなどで仕切られた空間はありますが、個室の執務室がありません。
そのため、様々な企業や個人事業主に囲まれた環境で仕事をすることになるので、他者と交流ができるメリットがある一方で、人によっては集中しにくいと感じる場合もあるでしょう。

・セキュリティ面に不安がある
無線LANは共有にものとなるので、ネットワークセキュリティを気にする人には向いていません。
他者にPC画面を見られてしまう可能性もあるので、機密情報の取扱いには特に注意が必要です。
また、一時利用ができるシェアオフィスでは、運営者も実態を把握しきれていない人が出入りするので、特に情報の管理に徹底しなければなりません。

コワーキングスペース

コワーキングスペースは、シェアオフィスのように一つの空間を複数人で共有するオフィス形態です。
カフェや図書館のようにオープンスペースで仕事をすることになります。
レンタルオフィスやシェアオフィスとほぼ違いはありませんが、個室がなくより開放的なワークスペースをコワーキングスペースと呼ぶことが多いです。

メリット

・低コストで利用できる
コワーキングスペースも通信設備や備品などが揃っており、利用料金に含まれています。
敷金や礼金、備品の購入費といった初期費用はかからず、水道光熱費や通信費といった固定費もかかりません。
一般的にコワーキングスペースは会員制となっており、登録して月額料金を支払うことで利用できます。
月額料金は1~3万円程度なので、低コストでオフィスの利用が可能です。

・様々な業種・業界と交流ができる
コワーキングスペースでは、様々な業種・業界の人が利用しています。
そのため、他者と交流がしやすく、そこから新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があるでしょう。
コワーキングスペース主催の交流イベントが開催されることもあり、参加すれば情報交換や人脈の構築などにつながる可能性があります。

デメリット

・作業スペースが確約されない
コワーキングスペースは座席の指定がないフリーアドレス制となっています。
席が空いていれば作業ができますが、混雑していて席が空いていないこともあるでしょう。
作業スペースを確保できるかどうかはその日の利用状況によるため、自分の都合に合わせて働けないことがある点に注意が必要です。

・作業に集中できない場合がある
シェアオフィスと同じく、様々な人が利用するので音や人の目が気になって作業に集中できない可能性があります。
特にコワーキングスペースでは個別のブースがないことが多いので、音に敏感な人は注意が必要です。
また、他の人に機密情報が洩れてしまわないように、PC画面や資料、電話の会話内容などにも気を配らなければなりません。

バーチャルオフィス

バーチャルオフィスは、その名のとおり仮想のオフィスを指します。
上記の各賃貸オフィスのような物理的なスペースではなく、事業用の住所を貸し出すサービスのことです。
そのため、仕事をする場所は別に確保する必要があります。

メリット

・事業用の住所を確保できる
バーチャルオフィスを利用すれば、事業用の住所を格安で確保できます。
賃料が高い一等地を選べることも多いので、名刺や公式サイトなどに所在地として表記することが可能です。
また、自宅を職場にしている場合、その住所を公開する必要がないので、安心して事業に取り組めます。

・利用料金は経費として計上可能
バーチャルオフィスでは、電話番号・FAXの番号提供、郵便物の受け取り、会議室・打ち合わせスペースの利用などのサービスがあり、それに利用料が発生します。
タダで住所を借りられるわけではありませんが、支払う利用料は必要経費として計上できるので、確定申告の際には節税につながります。

デメリット

・仕事をするスペースの確保が必要
住所の貸し出しとなるため、仕事場は別に用意しなければなりません。
また、来客がある際は接遇するためのスペースも必要になるでしょう。
完全にネットでビジネスを完結でき、自宅など作業スペースを確保できている状態であればバーチャルオフィスは向いていると言えます。

・信用度の向上にはつながりにくい
インターネットで住所を検索すれば、バーチャルオフィスであることが簡単にわかってしまいます。
犯罪に利用されているイメージがあるため、貸事務所と比べると信用度の向上にはつながりません。
信用度を高めるためにオフィスを設けたいのであれば、貸事務所がおすすめです。

(広告の後にも続きます)

普通借家契約と定期借家契約との違いを把握しておこう

オフィスを賃貸するにあたって、不動産契約には普通借家と定期借家の2種類があることを理解する必要があります。
ここで、各契約の特徴をご紹介します。

普通借家契約とは

普通借家契約は、1~2年程の契約期間が定められており、退去の申し出がない限り自動更新されるという特徴があります。
住居用の賃貸物件でよく見られる不動産契約です。
自動更新されるため、賃貸オフィスを中長期にわたって借りられるメリットがあります。
また、途中解約も比較的自由に行うことができ、正当な理由がない限り借主から退去を求められることもありません。
ただし、後述する定期借家契約よりも賃料が高く、更新月には更新料がかかるといったコスト面ではデメリットが大きいです。
また、元々借主に有利な契約であることから、契約や更新にあたって条件交渉が通りにくい点にも注意しましょう。

定期借家契約とは

定期借家契約は、定められた契約期間のみ物件を借りられるという契約です。
普通借家契約とは違って、自動更新は基本的にできません。
貸主が認めた際は契約をし直すことで、同じオフィスを引き続き使うことができます。
ただし、オーナー側の事情で定期借家契約にしていることが多いため、更新できるケースは少ない傾向にあります。
契約期間は1年未満から設定でき、当事者同士の話し合いで決めることが可能です。
そのため、短期間オフィスを利用したい人も借りやすい契約方式と言えるでしょう。
貸主有利の不動産契約となるため、賃料などの条件交渉もしやすいメリットがあります。
定期借家契約の場合、途中解約をするためには事前に特約を結んでおく必要があり、やむを得ない事情を除いて借主の都合で解約しづらい点に注意しましょう。