3.築50年の住宅の問題点と優先すべきリフォーム
築50年の住宅には、以下の問題点が潜んでいます。
出典:http://www.8044.co.jp/gallery/381(上段左)//https://www.ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=71(上段右)/http://www.8044.co.jp/gallery/447(中段左)
耐震性が低い|耐震リフォーム
建築基準法が改定され、新耐震基準が設けられたのは1981年のことであるため、築50年を超える家は新耐震基準を満たしていません。そのため震度5程度の中程度の地震には耐えられても、それ以上の大地震では倒壊のリスクが高いことがなによりの懸念点です。
2024年8月、政府は南海トラフ地震についての臨時情報を出し、注意を呼びかけました。注意の呼びかけは解除されましたが、今後、巨大地震にいつ見舞われるかわからないことを考えると、家の耐震性を高めることは最重要事項です。そのまま住み続けることは命を脅かすことになるので、必ず耐震性を向上させましょう。
耐震補強にかかる工事費の目安は、戸建ての大きさやもともとの耐震性能にもよりますが、100万〜200万円程度です。
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断熱性が低い|断熱リフォーム
さらに50年前の家づくりでは、断熱という考えは広まっておらず、無断熱の家が多く見られます。
断熱性が低いと外気温の影響を受けやすいため、夏は暑く冬は寒い家でガマンしながら暮らしている方も多いのではないでしょうか。断熱性能の低さは、過ごしにくいだけでなく、熱中症やヒートショックなど健康被害にもつながります。快適に暮らせる家にするためにも、リフォームの際には断熱性も高めましょう。
断熱リフォームの費用の目安は、内窓の設置が1箇所につき6万〜15万円程度、壁に断熱材を入れる工事が45坪(150㎡)で80万〜250万円程度など、工事の規模や内容、選ぶ建材などにより大きく異なります。
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水漏れ・漏電リスク|配管や配線の交換
また50年も経過すれば配管が腐食し、水漏れのリスクが高くなっています。当時は配管に金属管を使用するのが一般的であったことが理由です。
また、配線も古くなっている可能性が高く、漏電の不安もあるでしょう。古い分電盤を交換したうえで、間取り変更とあわせて配線計画を見直し、使いやすさを向上させましょう。
費用の目安は、給排水管の交換が15万円程度から、分電盤の交換に5万〜8万円程度かかります。給排水管や配線引き直しは壁や床の取り壊しも必要になるため、リフォームとあわせて計画的におこなうことが重要です。
雨漏り・構造体の劣化|外壁や屋根の補修・張り替え
定期的に点検していない家では、外壁の亀裂から雨水が染み込み、構造体が劣化していることも。雨漏りを頻繁にする家であれば、屋根や外壁のリフォームは必須です。雨漏りはなくとも、外装のメンテナンスをこまめにしていなければ、塗料の防水性能が落ちていたり、ひび割れが起きたりしている可能性があります。
家の寿命を延ばすために、雨漏りをさせない家にすることは重要です。屋根や外壁の劣化は、必ず修復しましょう。
外壁リフォームの費用目安は、塗り替え60万〜180万円、カバー工法(重ね張り)130万〜230万円、張り替えで150万〜400万円程度。屋根リフォームは、カバー工法(重ね張り)100万〜150万円、葺き替え150万〜300万円程度です。
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使いにくい間取り|間取り変更リフォーム
安全性とは別の観点になりますが、50年前と現代ではライフスタイルが異なるため、間取りが使いにくいといった部分も築50年の家の問題点としてあげられます。
築50年の家は、部屋が襖(ふすま)で細かく仕切られている、台所が居間から離れているなど、今のライフスタイルとはあわない場合が多いでしょう。例えばLDKをひと続きの空間にしたり、押し入れをクローゼットにしたり、間取りを使いやすくするリフォームも一緒に考えると、暮らしやすさが向上します。
間取り変更リフォームの費用目安は、2部屋を1部屋にする場合で10万円程度から、壁付きキッチンから対面キッチンに変える場合で140万〜210万円程度です。
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段差が多い|バリアフリーリフォーム
築50年の家では、高齢の親だけが住んでいる場合や、二世帯同居しているケースも少なくありません。しかし古い家は、畳の間が敷居で一段高くなっていたり、浴室やトイレが一段下がっていたり、段差が多いことも特徴です。間取り変更とあわせて段差も一緒に解決すると、高齢者も子どもも暮らしやすい家になります。
バリアフリーリフォームの費用目安は、廊下の床のかさ上げによる段差解消で6万円程度から、浴室をバリアフリーのユニットバスにする場合で80万〜150万円となっています。
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掃除がしにくい・寒々しい水回り|水回りリフォーム
築50年の家は、流しとコンロなどが独立していて汚れがたまりやすいキッチンだったり、昔ながらのタイルで仕上げられた寒々しい浴室だったり、水回りも使いにくいケースが少なくありません。食洗機が備わったシステムキッチンや、断熱効果の高いユニットバスにリフォームし、快適性を向上させることも重要です。
水回りをすべてリフォームする費用は180万〜400万円程度と、導入する設備のグレードにより大きく異なります。浴室については、タイル張りの浴室からユニットバスにする場合で、80万〜200万円程度です。
水回りリフォームの費用相場・注意点・安く抑える方法も解説
骨組みだけを残してすべて作り変える「スケルトンリフォーム」と呼ばれるリフォームを行えば、上記のリフォームを一気にでき、築50年の問題点はほとんど解決することができます。
>>スケルトンリフォームの費用はこちら
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4.築50年の家をリフォームした事例
ここからは築50年の家を素敵にリフォームした事例を5つ紹介します。
代々受け継いだお家を耐震リノベーションした事例(約1,650万円)
after
50年 |
約1,650万円 |
- |
104.4㎡ |
3ヵ月 |
耐震性能・断熱性能の確保、水回り設備、内装の一新 |
曾祖母からの家を手放したくないと考え、リフォームして引き継いだ事例です。
耐震診断でよくない結果が出ており、また夏暑く冬寒い課題も抱えていたことから、耐震性能・断熱性能を確保するプランを提案。
あわせて水回り設備や内装も一新。内装は白と木目で全体をまとめたため、とても築50年とは思えない、モダンで明るい空間に仕上がっています。
出典:https://ishome.ltd/jirei/detail.php?pid=1297
今の暮らしの不満や不安を解消し、この先も住み続けられる家へ事例(1,000万円台)
after
55年 |
1,000万円台 |
2DK→2LDK+WIC |
57.30㎡ |
3ヵ月 |
全面改装 |
築50年以上が経過したことで、老朽化した水回り設備の更新やライフスタイルにあわせた間取り変更を目的にリフォームした事例です。
床を直張りフローリングから二重床構造にしたことで、給水管の更新や追い焚き用の配管、床暖房の新設が叶いました。
壁面収納やウォークインクローゼットなどを造り込むことで、物があふれない暮らしを実現できたそうです。
出典:https://www.artreform.com/example/9638/
趣を残しながら現代の生活に合った家にリフォーム(~2,000万円)
after
60年 |
1,000~2,000万円 |
8LDK→4LDK+書斎 |
- |
3ヵ月 |
外壁含むフルリフォーム |
古い家のいいところは残しつつ、現代の生活に適した間取りや設備になるようフルリフォームした事例です。建具や梁を生かし、和とヴィンテージと北欧がほどよくミックスされたオシャレな内装に仕上がっています。
キッチンは、壁付けの独立キッチンを対面式のオープンキッチンに変更。家族ともコミュニケーションが取りやすくなり、開放的な空間の中で料理ができます。
広縁は、壁・床・天井に断熱材を施工することで隙間風を防ぎ、引き戸を2重サッシにすることで断熱効果もアップさせました。
間取りは大幅に変更せず、利用できる間取りや建具はそのままにすることで、費用を節約しました。
出典:https://www.artreform.com/example/882/
基礎から補強し安心して暮らせる家に(2,344万円)
after
50年 |
2,344万円 |
10DK→4LDK |
165㎡→122㎡+車2台分のガレージ |
3ヵ月 |
スケルトンリフォーム(減築含む) |
木造とブロック造の混合構造の建物をリフォームした事例です。
賃貸物件と併用していた家を、家族が暮らす間取りにするため、スケルトンリフォームを行い間取りを一新。たくさんあった部屋をまとめ、一部を収納スペースとして活用しました。
スケルトンリフォームで外観も一新。ブロック造側はモルタルと塗装仕上げ、塗装木造側をサイディング仕上げにしました。
耐震補強は、柱や梁のつなぎ目に耐震金物を施工し、必要に応じて布基礎を追加しています。
キッチンは、独立タイプからオープンキッチンに変更。オープンタイプですが、壁付けにすることで独立タイプのように調理に集中できる環境になりました。
出典:https://www.8044.co.jp/gallery/381
基礎・断熱・耐震補強&回遊できる便利な間取り(2,370万円)
after
50年 |
2,370万円 |
3DK→2LDK |
120㎡ |
6ヵ月 |
フルリフォーム |
薄暗い部屋もあり、使いにくさを感じていた築50年を過ぎた家で、耐震性や断熱性にも不安がありました。
そこで家の中央に大きく回遊できるリビングを配置し、同じ空間にキッチンと書斎も追加。明るい光が差し込む、風通しのよいLDKになりました。
また基礎・耐震性・断熱性を見直し、家族の安全と健康を守れる家に生まれ変わっています。