日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸のデザイナー、志村紀子がご紹介いたします。
2024年10月7日から二十四節気は寒露に
寒露(かんろ)とは、霜が降り始めるころを表した、秋最後の節気です。
今回は流れるようなラインの美しさが魅力の「カラー」がテーマ。一年中出回り、どの季節にも似合う使いやすい花です。
一般的には白い花のイメージがありますが、実はサイズの大小や、さまざまなカラーバリエーションが存在。それぞれ印象が違う表情豊かな花、カラーを使った花あしらいをご紹介します。
花も茎も主役
カラーはしなやかに伸びるシルエットが魅力です。花だけではなく、フレッシュなグリーンの茎も全てを楽しめるように、ボウル型のガラス花器にあしらいました。
美しい色とラインを活かすために向きを揃えて束ねた、カラーならではのしなやかな強さを堪能できるシンプルな花あしらいです。
カラーを束ねる場合は「ビニールテープ」がおすすめです。セロハンテープとよく似ていますが、ビニールテープは水に強いので、カラーのようにツルツルした茎の花材を束ねるのに向いていますし、束ねた部分が目立ちません。
使い方は写真のように、束ねたい位置に巻き付けるだけです。このとき、斜めに巻き付けずに水平に巻くと、見た目も美しく、茎も傷みづらくなります。
さらに、カラーは茎も鑑賞ポイントなので、切り口は水平にカットするのがおすすめです。写真のようにまな板を使って野菜と同じように切るだけ。こうすると茎も潰れづらいので、水揚げも良くなります。
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草や穂を合わせる
カラーはいろいろな植物と相性がよい花材ですが、ここではシックな黒のカラー「カントール」を使って、深まっていく秋にぴったりな草ものや穂ものを合わせた花あしらいをご紹介します。
ちなみに、このカントールは生育時の気温によってワインレッドからほぼ黒に近い色までの色幅がありますが、品種としては黒のカテゴリーに分けられています。また、カラーは丈が長く、茎が太いタイプばかりではなく、カントールのようなコンパクトで茎が細いタイプの品種もあります。
さて、ここで合わせたのは「ベアグラス」です。カラーとベアグラスは、先にざっくり束ねてから花器に入れます。そのあとで全体の形を整えると生けやすくなります。
動きのある極細の葉が全体に散らばるようにラフにあしらいましょう。
カラーもベアグラスも茎が細いので、口が狭まった花器を使うと、簡単に格好がつきます。
こちらは上の写真と同じ黒いカラーとベアグラス、そこに「姫利休草」をプラスしました。
実はとても簡単で、水を入れたガラスのボウル型花器に沿わせるようにベアグラス、姫利休草、カラーの順で花材を入れるだけ。茎がしなやかな植物の特性を活かした、ホテルで見かけるような花あしらいです。
次は「クロヒエ チョコラータ」という、黒味を帯びた穂ものを合わせました。黒っぽい花材に合わせて、花器は真ちゅうのピッチャーを選びました。重厚感のある器なので、あえて小さ目でもバランスが取れます。
まるでフジツボのような、ユニークな花器にカラーをあしらいました。前の写真でご紹介した黒のカラーに、黄色のカラー「キャプテンソロ」と姫利休草を組み合わせています。
カラーは個性が強い花器でも難なくきまりますので、使い方が難しいと思っていた器があれば、ぜひ試していただきたい花です。